#046 進撃のクラン

 ゴブリンとの集団戦で死にそうになったミドリは咄嗟に閃いたアイデアのおかげで九死に一生を得た。


 以前から漫画やアニメをヒントに皮膚の表面に魔力を流して防御力を上げることを試していた。しかし皮膚の表面には魔力が流れにくく上手くいかなかった。いま思えば、ミドリの身体強化は血管を使って全身の細胞に魔力を送り込むものなので、血管が通ってない皮膚の表面には魔力を送り辛かったのだろう。


 ミドリは皮膚の表面は捨て、その下の血管や毛細血管が張り巡らされている層を強化するすことに賭けた。結果、ファイアジャベリンの直撃を受けて皮膚の表面は焼け焦げたが、下の層は耐え抜いた。


 マリーとコレットには細胞の概念を説明してないのでいまいちピンとこないようだった。今度ミドリの転生がバレない程度に説明しよう。


 ミドリたちは一息つくとゴブリン狩りを再開した。基本的な戦い方は前回と同じだがゴブリンメイジがいた場合は魔法が完成する前に叩くことを徹底した。戦闘を繰り返すたびに連携が良くなり戦闘の幅が出てきた。そして嬉しい誤算があった。


 「ミドリー、なんか動きが良くなってるよね?」


 ファイアジャベリンを耐え抜いた魔力操作を練習するうちに身体強化が進化していた。表皮の下の層に魔力を流して膜を作ることにより魔力の流出が抑えられ、更に多くの魔力を込められるようになっていた。


 大きな穴の開いた風船を水で満たすには多くの水を注ぎ続けなけらばならない。そして穴を小さくすれば少量の水で風船を膨らませることが出来る。ミドリは魔力の消費量を抑え、より多くの魔力で全身を満たすことが出来るようになった。これを身体強化バージョン3と呼ぶことにした。



◆◆◆



 ラプタが索敵、スラッペが防御、ミドリとマリーが反撃、コレットとフーコのペアが遊撃、最後にスラッペが捕食する。次々とゴブリンの群れを狩っていった結果。


 ポーン♪


 効果音とともに画面が表示される。


 [スラッペが進化してビッグスライムになりました。スキル【圧縮】を獲得しました]


 ■■ステータス■■

 名前:スラッペ(年齢性別不明)

 種族:ビッグスライム

 Lv 1

 HP 53/53

 MP 47/47

 固有スキル:耐性 Lv3(物理中・魔法小)

 スキル:捕食 Lv2

 スキル:幸運 Lv2

 スキル:擬態 Lv1

 スキル:圧縮 Lv1


  スラッペがビッグスライムに進化、ミドリの腰の高さくらいだったのが身長と同じくらいまで大きくなった。


 「うわー、大っきい」


 コレットは目を輝かせスラッペに抱き着く。ぽよよんと全身が埋もれて大喜びだ。


 「さすがにこれは目立つわね」

 「うん。目立ちすぎかも」


 ミドリとマリーが困惑していると。


 「ぷるぷるー」


 スラッペが震えながら徐々に縮んでいき普通のスライムと変わらなくなった。そして色が薄い水色だったのが濃い紺色へと変化した。新しく覚えたスキル【圧縮】の効果っぽい。よくよく考えると最初に出てくる魔物なのに謎が多いよな、スライム。


 ビッグスライムに進化したスラッペは盾役として大活躍。スキルレベルが上がり物理耐性に加えて魔法耐性を身に着けたおかげで、ゴブリンメイジの放つ初級攻撃魔法程度ならダメージは僅かだった。おかげでクランの安定感が増して進む速度がアップした。


 初心者らしい冒険者がゴブリンを狩る姿をよく見るようになり、遠くの丘の上に7階層の町が見えてきた。ダンジョンに潜って三週間が経っていた。あれがダンジョンで最初の目的地、通称「初心者の町」だ。


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