#048 中層の魔物

 次の日、ミドリ達はモンスターボックスを売っていた商人のおじさんを探した。


 「おう、モンスターボックスを全部買っていった坊主じゃねーか。どうした?」

 「ちょっと話を聞きたくて。なんか中に魔物が入ってるみたいなんだけど」


 一瞬でおじさんの顔色が変わった。


 「マジでか?あっぶねーな」

 「うん、それでこういう場合はどうしたらいいのか聞きたいんだけど」


 おじさんは頭を搔きながらバツが悪そうに説明する。


 「たまに今回のようなことがあってな、欲をかいた冒険者が力量を超えた魔物を開放して大惨事になるんだ。だからこれはダンジョンギルド案件になる。確実に討伐できるメンバーを揃えてから魔物を開放するんだ」


 誤って魔物を開放していたら・・・。実はかなり危険な状況だったことにミドリはゾッとする。おじさんはミドリ達を拝むような仕草をして。


 「俺が中身を確認せずに売ったのがバレたらヤバい、下手したら王国で商売ができなくなっちまう。本当なら俺が冒険者を雇って討伐したいくらいなんだが、今回は坊主に譲ってやる。だから内緒にな?」


 おじさんはテヘペロした。ミドリは可愛くもないおっさんのテヘペロを見せられて少しイラっとしながらも質問を続ける。


 「買ったモンスターボックスってどこで仕入れたの?」

 「あれは最前線を攻略中のA級冒険者からいらない物をまとめて処分したいと言われて買ったんだ。てっきり中身を確認してると思ってたぜ。超一流の冒険者でも抜けてるとこあるんだな。ということで後の処分は任せたぜ。珍しい遺物があったら仕入れておくから、また来てくれよな」


 調子のいいおじさんにモンスターボックスを押し付けられた形になるが、中に入ってるのは中層の魔物ミノタウロス。上半身が牛で下半身が人間というゲームやラノベで超定番の魔物だ。めちゃくちゃ興味があるのでギルドに持っていくことにした。



◆◆◆



 ダンジョンギルドに行くと、朝ということもありギルドは混雑していた。何故か列に並んでる人が少ない受付がひとつあったので、そこに並ぶ。スグにミドリたちの番がきた。


 「あらあらあらー、可愛らしいパーティね。わたしはドリスお姉さんよ、よろしくね」


 受付は優しそうなお姉さん、ではなくマッチョなオネエだった。若干引き気味なミドリ達にバチコーンとウィンクをかましてくる。周りの冒険者たちの視線が生暖かい。ミドリは気を取り直して今日の用事を伝える。


 「中に魔物が入ってるモンスターボックスを拾ったので処分をお願いします」


 テーブルの上にモンスターボックスを置く。ドリスはさっきまでの雰囲気を一変させテーブルの引き出しからモノクルを取り出して箱を観察する。


 「拾ったという話は置いといて、よく届けてくれたわ。ふーん。確かにミノタウロスね」


 どうやらモノクルは鑑定が出来る遺物のようだ。ドリスは観察が終わると。


 「ギルドで処分するのと、君たちが処分するのを選べるけどどっちにする?」


 よくわからない選択肢にミドリたちは困惑する。ドリスは察して説明してくれる。


 「ギルドに全部任せてくれるなら私たちが責任をもって処分するから話はお終い。ただ、せっかく拾った箱だから経験値やドロップ品を手にしたい人は多いのよ。ごく稀に強い魔物が仲間になる場合もあるしね。その場合は、ギルドが見守る中で討伐してもらうことになるわ。もし討伐が失敗したら時はギルドにお任せね」


 なるほど。レベルの低い冒険者にとって中層の魔物ミノタウロスの経験値やドロップ品は絶対に欲しいし、限りなく低い確率だが運よく仲間に出来れば圧倒的戦力になってくれる。ただ、ミドリ達にミノタウロスを倒せるだろうか。絶対に無理だなと考え込んでいるミドリの背中をドリスが押す。


「モンスターボックスは頑丈な檻の中で開放するから安心していいわよ。私もいるしね、こう見えても元ランクAの冒険者なのよ」


 ドリスは再びバチコーンとウィンクをかます。軽く眩暈がするけど何かの特殊攻撃だろうか?とりあえず安全に経験値とドロップ品を稼げるならやるしかない。ミドリは答える。


 「ミノタウロスは俺たちで討伐します」


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