#028 ハーフです
「私は最古のバンパイアの末裔、マリーよ」
マリーは中二病患者のようなことを言い出した。両手を腰に当てて胸を張り満面の笑みだ。ローブ越しでもわかるポヨヨンと揺れる物体、すごくおっきいです。さっきまでのシリアスな雰囲気はなんだったのか文句の一つも言ってやりたいが、こんな笑顔を見せられたら何も言えない。泣きそうな顔より笑顔の方が万倍いい。
ポーン♪
効果音とともに画面が表示される。
[マリーが仲間になりたそうにしている。クランに加えますか?]
初めてじゃないから驚きはしないんだけど、頭の処理が追い付かない。この子、仲間にしても大丈夫だよな?
(Yes)
[マリーをメンバーに登録しました。固有スキル【状態異常回復】を付与します]
■■クラン Lv2■■
【メンバー】 4/10
ミドリ Lv15
コレット Lv16
ラプタ Lv7
マリー Lv19
■■ステータス■■
名前:マリー(12歳女)
種族:バンパイアハーフ
Lv 19
HP 82/82
MP 72/79
固有スキル:闇の眷属 Lv5
固有スキル:状態異常回復 Lv1(小回復)
スキル:付与魔法 Lv3
クランのメンバーにマリーが追加され、ステータスには・・・ハーフだけど本当にバンパイアなんだ。そして【闇の眷属】というスキルにモニョモニョするミドリ、ダメだ笑っては失礼だ。ミドリが自分の腹筋との戦いを繰り広げてると、マリーが首をかしげミドリを見つめる。
「ミドリのクランに加入しましたってメッセージが出たわよ。あとスキルが増えてるのはどういうことかしら?」
そういやマリーには全部話した気になってたけど【クラン】のことを話してなかった。ミドリが説明すると、マリーはフムフムと頷きながら。
「魔物と仲良くなることをテイム、仲良くなった魔物のことを従魔、普通はそう呼んでるわ。そしてたまに【テイム】というスキルを持ってる人がいて、従魔にした魔物のステータスを見れるらしいわ。ミドリの【クラン】は人間や魔物に対しても似たようなことが出来るみたいね。そしてこれが大問題なのだけど、固有スキルを与えるなんてスキルは聞いたことがないわ。【クラフト】以上に【クラン】も秘密にするべきよ、このことが知られたら確実に国が動くわよ」
当然そうなるよなとミドリは呑気に頷く。
「話が飛んじゃったけど、マリーはバンパイアハーフなんだね」
「ええ。せっかくカッコよく打ち明けたのに台無しだわ」
「どうみても中二・・・ゴホゴホ、うんゴメン」
マリーはニヤニヤしながら。
「ミドリの仲間にされちゃった。責任取ってくれるわよね?」
「なんか捕食される小動物になった気分だ」
「失礼なことをいうと眷属にするわよ?」
「血を吸って?」
「ええ。試してみる?」
「遠慮するよ」
「フフ、冗談よ」
マリーは張り詰めた感じがなくなって、ミドリをからかう余裕がでてきた。こっちが本当のマリーなんだなとミドリは嬉しく思った。
◆◆◆
次の日の朝、三人と一羽は朝食を食べていた。マリーはミドリの家に泊まり、寝具が一つしかないのでみんな同じ布団で眠った。薄着のマリーは12歳とは思えない発育の良さで、年上のコレットが落ち込んでいた。ミドリの中のおっさんが喜んでいるような気がするが、まだ精通もしてない10歳児なのだ。マリーも12歳なので、間違いなど起こりようもない。ミドリがマリーとコレットの抱き枕になっただけだ。
「料理上手ね、とても美味しいわ」
スクランブルエッグを頬張りながら、隣で同じようにクッキーを頬張るラプタを見つめ微笑むマリー。すんごくご機嫌だ、これから毎日ミドリの料理を食べれるのだから。マリーはミドリの家で暮らすことになった。
「これからよろしくね。ミドリ。コレット。ラプタ」
「ああ。よろしく」
「マリー、よろしくね」
『マリーは強そうだぽ。心強いぽ』
「今日はマリーの家具や雑貨を買いに行こう」
「ええ。案内よろしくね。ご主人様」
「ご主人様はやめて」
食事を食べ終わると、マリーの家具や日用品を買いに行くことになった。道を歩くマリーは相変わらずご機嫌だ、というのも。
「ローブを着ないで太陽の下を歩けるなんて嬉しいわ」
マリーの説明によると、バンパイアは強力な能力を得る代償に太陽の光を浴びるとデバフがかかる。それは能力低下にHPとMPが減り続けるという厳しいもので、日中は厚手のローブなしでは生活できなかったそうだ。今のマリーは固有スキル【状態異常回復】で常にデバフを回復し続けている。まだスキルレベルが低いので直射日光を浴びると回復が追い付かないらしく日傘をさしている。
マリーは黒い半袖のワンピースにサンダル、そして赤い日傘をさしている。美少女のマリーが日傘をクルクルと回しながら歩く姿は貴族の令嬢みたいだとミドリは思った。
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