Chap6.(仮題)ダンジョン攻略編

#051 ずっと忘れていた件

 ミドリたちは7階層にある初心者の町を拠点に活動をすることにした。次の大きな町は15階層のフィフス、通称「ベテランの町」。今のミドリたちでは辿り着くのすら難しいので、ここで強くなることに専念することにした。まずはギルドでどんな依頼があるのかをチェックする。コレットとミドリの収納系スキルがあれば輸送の依頼で実入りが良さそうだがレベルが上げ辛い。ここは討伐系の依頼でいくことにした。


 ミドリたちは8階層の大きな森が広がるエリアにいた。このあたりに出没する魔物はキノコをドロップする痺れキノコ、肉をドロップする眠り羊、そしてハチミツをドロップするポイズンビー。それぞれ人気の食材がなので高額依頼となっている。しかし痺れキノコは痺れ効果のある息を吐き、眠り羊は催眠効果のある泣き声を発し、ポイズンビーはお尻の針に毒と状態異常攻撃てんこ盛りである。苦労して食材を集めても回復アイテムの消費で赤字になることもあるので、冒険者の多くがこの森を避けて通る。ミドリたちがあえてこの物騒すぎる森での依頼を選んだ理由は。


 「いよいよ私が大活躍する日が来たわね」


 マリーがドヤ顔で胸を張る。マリーは固有スキル【状態異常回復】を持っているので状態異常にめっぽう強い。そしてポイズンビーの針は解毒薬の原料だ。マリーのためにあるような依頼だった。


 「ウフフ。この森は最高ね」


 ラプタが【索敵】で獲物を見つけると、マリーは正面からノーガードで突っ込んだ。次々と状態異常攻撃を受けるマリーに最初のうちはヒヤッとしたが眠りも痺れも毒も【状態異常回復】で瞬時に回復した。あとはゴブリン軍団を相手にするより楽だった。状態異常攻撃を放った直後の隙が出来た魔物にミドリ達が攻撃し、弱ったところをスラッペが【捕食】する。スラッペは次々と魔石と銀貨とドロップアイテムを吐き出していく。スキル【幸運】のおかげなのか、スラッペが獲物をしとめると少しドロップ率が高いような気がする。


 ミドリの【クラフト】の容量が馬車2台分、コレットの【時空庫】の容量が馬車4台分。容量の許す限り狩りまくって初心者の町に帰ってギルドに卸す。迷宮内の町において不足しがちな食材を大量に卸したことによりギルドマスターのドリスに褒められ、他の冒険者たちがミドリ達を見る目が変わってきた。最初は子供たちのお遊びチームと侮っていた冒険者たちも厄介な森から大量の獲物を持ち帰ってくるのを見て考えを改めはじめた。


 そういった生活を二週間繰り返しスキルを酷使した結果、マリーの【状態異常回復】とコレットの【時空庫】のスキルレベルが上がった。


 マリーは【状態異常回復】のレベルが上がったことにより、日中でもローブも日傘もなしで外を出歩けるようになった。先のミノタウロス討伐で【付与魔法】の使い手だと知られていた上にローブを脱いだらかなりの美少女だと知れ渡ったマリーは多くのチームに勧誘されるようになった。


 コレットは【時空庫】のレベルが上がったことにより容量が馬車4台分から8台分になった。このことをギルドにはバレないように気をつけてもらっていたのだが人の口に戸は立てられない。コレットがかなり大容量の【倉庫】スキルを持ってると噂になり、コレットも多くのチームに勧誘されるようになった。


 ミドリがまったく勧誘されない件はおいといて、マリーとコレットがあまりにも勧誘されるので断るのが面倒になってきた。ギルドマスター兼受付嬢のドリスに相談すると呆れられた。


 「あなたたちチーム登録してないじゃない、全員がソロなんだから勧誘もされるわよ。わたしもミドリちゃんたちがいずれ有名なチームに入るつもりで敢えてチーム登録してないのかと思ってたわよ」


 そういえば、後回しにしてたっけチーム登録。コレットとマリーの視線が冷たい気がするけど、君たちも気が付いてなかったからね。やっとチーム登録をするミドリたちだったが、命名センスがないのはミドリだけじゃなかった。命名で一晩揉めた結果、各自の名前から一文字ずつ取ってつけたチーム名は「ミコマ商会」。


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廃プレイで逝ったおっさんは異世界を楽しみたい フィクション虫 @fictionmushi

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