Chap4.遺物と迫る脅威
#030 騎士の実力
朝食を食べていると村長姉妹がやってきた。二人とも急いできたようでキーウィは少し息を切らしている。
「ミドリたち、突然で悪いけど今日時間を作れる?」
「魔の森に行こうと思ってたけど、どうしたの?」
チェリーが眼を輝かせる、よほどいいことがあるのだろう。
「学校の授業で村に駐屯している騎士に剣を教えてもらえることになったの。めったにない機会だからみんなもどう?」
「騎士って貴族かしら」
「そうよ。一番下が騎士爵、上には王族の方もいらっしゃるわ」
「えー、なんか怖そう。僕はいかない」
「そうね。わたしもパスするわ」
コレットとマリーは行かない。
「ミドリは行くわよね?」
「こんな機会は滅多にない」
チェリーとキーウィの圧が凄い。
「騎士って強いんでしょ?興味あるし行くよ」
この世界で俺ツエーするわけじゃないけど、参考までに知っておいて損はないだろう。
◆◆◆
学校前の広場に7歳から14歳まで23人の生徒が集まった。村に来たばっかりの時からずいぶん増えていた。暫くすると遠くから馬に乗った集団がやってくる。先導する村長も鎧を着ていて、なんだか騎士っぽい。というか、まさかだけど騎士と親し気な村長も騎士?隣のチェリーとキーウィを見ると悪戯が成功したような表情だった。
(マジで?なんか失礼なことしてないよね?)
ミドリが過去の記憶を総動員していると、騎士全員が馬から降り、ミドリたちの前に並んだ。村長が一歩前に出て。
「村の子供たちは毎日勉強に励んでいると思う。今日は村を守っている騎士達に集まってもらった。戦闘の専門家から戦いというものを学んでほしい」
それから生徒は二人から三人の班に分かれ、各班に騎士が一人ずつついての授業が始まった。ミドリはチェリーとキーウィと同じ班になり、先生は一番年配っぽい騎士だった。体格がオークとかわらないのが恐ろしい、無精ひげを生やしてダンディな中年だ。
「俺はデレックだ。ジャムの娘らしいな。楽しみだ」
まずは実力を見るため一人ずつ模擬選をする。しかしチェリーですらまるで相手にならなかった。チェリーが悔しがるのは分かっていたが、キーウィも悔しそうにしている。ミドリにいたってはまるで話にならなかった。
「落ち込む必要はないぞ。俺たちは殺し合いの専門家だからな。常に効率よく殺す方法を考え訓練している。お前たちは生き延びることを考えろ、今日はそのための授業だ」
なるほど、戦争になって攻められた時にどうするのか、それを考えさせるための授業なのか。地面に這いつくばってゼーゼー言ってるミドリは手を挙げて質問する。
「俺は魔法による戦闘というものを見たことがありません。見せてもらえることは可能ですか?」
デレックはミドリをじっと見つめ。
「わかった」
若い騎士をよんで模擬戦を始めた。デレック一人に若い騎士三人が相手だ。
「お前ら本気でこい!」
若い騎士たちが何か覚悟を決めたような顔をして構えるのを見て、模擬戦を提案したミドリは心の中で謝った。最初に各騎士が呪文のようなものを呟いて魔法の準備を始める。魔法の発動には一定の時間がかかるようだ。
「ファイアボール!」
「ウォーターボール!」
「ウィンドーバレット!」
デレックに向け一斉に魔法が放たれる。
「凄い本物の攻撃魔法だ!」
中身はおっさんでもミドリも男の子、こんなのを見せられたらテンション爆上げだ。他の子供たちも目を輝かせて声を上げる。一方、魔法を放たれたデレックは一歩も動かずに拳を握りしめると。
「ウォォォォー」
その場でバカでかい雄たけびを上げると同時に、素手で全ての魔法を叩き落した。そして三人の騎士を腹パンで沈めて模擬戦は終わった。なんというか騎士の中でも実力の差は大きいみたいだ。
その場にいた小クラスの生徒はみんな顔を引きつらせプルプル震えている。まるで鬼に出会ったような反応だ。
(これはあれだ)
戻ってきたデレックはミドリを見つめ。
「わかったか?」
「はい。化け物に出会ったら全力で逃げます」
デレックはニヤリと笑みを浮かべた。
「それが正解だ」
これが異世界の避難訓練か。
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