#016 ホーンラビット狩り
ミドリとコレットはホーンラビット討伐の依頼を受けることにする。といっても常設の依頼なので受付への申告の必要はなく、ホーンラビットを狩ったら討伐部位の角と魔石や毛皮や肉などの素材をギルドに提出すれば、いつでも買い取ってもらえる。
ギルドの売店で必要な物を揃える。保存食、水筒、傷薬、解体用のロープとナイフ、火打石。そして村から出る前に各自の装備を点検、ミドリは木の槍、コレットは銅の剣と丸盾だ。
村の南門からホーンラビットが生息する草原に出る。ちなみに村の北側は魔の森があるので超危険、西側は敵国の領地なのでそこそこ危険である。
「坊主。死ぬなよ」
村兵にギルドカードを見せると応援してくれた。
「よーし、ホーンラビットを探すよー。僕が前衛やるからミドリは後衛ね!槍でツンツンよろしくー」
後衛と言っても遠距離の武器は使えないので気分の問題。暫く草原を歩くと、
(いた!)
岩陰で頭に角を生やした全長50cmほどのホーンラビットがモグモグと草を食べている。思ってたより大きいことにビビりながら、背後からこっそり近づく。
「キッ!!」
10メートルくらいの距離に近づいたら気づかれた。さすが野生の魔物。
(ダメか)
逃げると思ったホーンラビットだが、逆に突進してきてヤル気満々だった。
「僕が受け止めるよ」
コレットが腕に装着した丸盾でホーンラビットの突進を受け止める。
「くー。小さいくせに力が強いよぉ」
コレットが受けた瞬間、ミドリは全力で槍を突き出す。しかしホーンラビットはバックステップで躱した。そしてダダダと後方に下がるとニヤリと笑う。そう顔を歪めて確かに笑った。
「馬鹿にすんな」
「ちょ。ミドリ落ち着いてー」
ミドリは助走して全力で槍を投擲、勢い余ってミドリが地面に転がった。槍をひょいと躱したホーンラビットはチャンスとばかりにミドリに向け【突進】スキルを発動した。コレットがミドリを守ろうと駆け出すが間に合わない、ホーンラビットは勝利を確信したのかニヤリと笑った。
「それ、フラグな」
ミドリは地面に転がったまま【クラフト】で槍をもう一本取り出した。突然現れた槍にホーンラビットは目を見開き、回避しようとするも勢いは止められない。そしてホーンラビットは自らの【突進】が仇となり串刺しになった。
ホーンラビットをコレットの【時空庫】に収納する。【時空庫】は時間の流れが遅いため生モノを保存するのに便利だ。ちなみにミドリの【クラフト】は収納するだけで時間の流れは変わらない。
「もうー。寿命が縮んだよー」
解体するための水辺を探しながらコレット頬を膨らませてぼやく。ちょっと可愛いと思ったのな内緒だ。
「悪かった。でも笑われたから頭にきた振りをすればいけるかなって」
「ミドリを完全に舐めてたよねー。魔物に知恵があったから逆に楽に狩れたってことかなぁ」
「普通のウサギだったら逃げられて終わりだったと思う」
「もしかしてミドリのスキルって初見殺し?」
「一対一で馬鹿みたいに突進してくる相手には確かにそうかも。コレットの【時空庫】はどう?」
「僕の【時空庫】は物を出すのに僅かな間がある感じかな?隙を見せなきゃいけないわけだし、その隙は命取りだよ」
見つけた水辺でホーンラビットを解体する。孤児院で何度もやったことがあるコレットがサクサクと済ませた。けっこうグロい。
その後、同じ方法でホーンラビットを次々と仕留めていった。ミドリは頭にきて槍を投げる演技に磨きがかかった。ミドリは解体のやり方を教わったのでやってみたけど、コレットみたいに上手に出来なかった。
「スグに上手になるよー」
コレットと解体したホーンラビットを見せ合って笑う。
ポーン♪
効果音とともに目の前に画面が表示される。
[ミドリの固有スキル【クラン】のレベルが上がりました。クラン内念話が可能となりました]
「ミドリ?どうしたの?」
「【クラン】のレベルが上がってクラン内念話が使えるようになった、らしい」
「クラン内念話?」
ミドリは頭の中でコレットに話しかける。
『ちょっと試す。あ、あ、あー。テステステス。本日は晴天なり』
『へ?ミドリの声が頭に響いてくるよ?』
『コレットの声も響いてくる』
『便利だねー。きっと狩りがはかどるよっ!』
『ああ、そうだな。この念話、どこまで届くんだろ』
詳しいスキルの検証は後日することになった。
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