#015 冒険者になろう
狭い村なので冒険者ギルドはすぐに見つかった。西部劇に出てくるような両開きのドアを開いて中に入る。左側に掲示板が並んで冒険者が真剣に内容を吟味している。あそこに依頼が貼ってあるのだろう。そして右側には食堂と売店。昼間から酒を飲んでる冒険者は見かけない。売店には簡単な雑貨を売っているようだ。そしてど真ん中の奥には3つの窓口、受付に違いない。朝一で来たのでギルド内は冒険者らしき人たちで混雑していた。人口400人くらいの村だけど仕事が沢山あるのだろう。
ミドリとコレットはさっそく受付の列に並ぶ。列はスイスイと減りミドリたちの番になった。可愛い受付のお姉さんが笑顔で。
「こんにちは。冒険者ギルドにようこそ」
「二人の冒険者登録をお願いします」
「お姉さんはギリ大丈夫かな?弟君は幾つ?」
「10歳です」
「弟君はもう少し大きくなってから来てね」
受付のお姉さんは子供のいたずらと思ってるのか、笑顔のまま対応する。姉弟じゃないけど否定するのも面倒だ。コレットが何かを言いかけたが止める、交渉モードだ。
「お姉さん、俺は本気なんだけど」
お姉さんはちょっと困ったような顔をして。
「ごめんね。いま忙しい時間帯なの。話は聞くから後で来てもらえるかな?」
笑顔だが遠回しにガキは帰れと言われ、後ろに並んでいる冒険者からの無言の圧力を感じる。しかたない、奥の手をつかおう。
「いいスキルをもってる」
手をカウンターの上に乗せ【クラフト】で鉄の短剣を取り出す。お姉さんはビックリしたみたいだ。目を丸くして掌の上の短剣をツンツンと突っつく。
「すごい!【倉庫】のスキルね。しかもちゃんと使いこなせている」
そしてお姉さんはうーむと唸る、いい感じで【倉庫】と勘違いしてくれた。そしてしばらくブツブツと独り言をつぶやきながら考える。
「ギルドの登録に年齢制限はない。ちゃんとスキルは使えている。そして猫の手も借りたい。むむむ。わかったわ。登録するわね。ただし危ない依頼は受けないこと。いいわね!」
「ありがとう。きれーなお姉さん」
「あらあら。将来有望ね」
ミドリが大きな猫を被って調子がいい返事するのを聞いて隣でコレットが笑いを堪えていた。普通の街のギルドだったら冒険者登録は無理だっただろう。開拓村ならではの合理的なところは助かった。それからはスムーズだった。
「お姉さんはナンシーよ。これからよろしくね、かわいい冒険者さんたち」
ナンシーさんはウィンクして冒険者カードを渡してくれた。ミドリもコレットも最低のGランクからのスタートだ。
「これで僕も冒険者だね。どんな依頼があるか見に行こうー!」
テンション高めのコレットが依頼が貼ってある掲示板に突撃する。Gランクで受けることが出来るのはと。
・ガテン系。
ミドリの体力だと厳しい。
・荷物持ち。
おそらく冒険者の歩く速さについていけない。
・薬草の採取。
植生地の情報は誰も教えてくれないだろう。
・ゴブリンの討伐(討伐部位は耳)
今のミドリたちでは確実に勝てない。
コレットなら【時空庫】を活かして冒険者の荷物持ちくらいならできるかも。ただ今のミドリにやれることがない。開拓村は厳しいところだと頭では理解してるつもりだった。改めて現実の厳しさと自分の無力さを実感した。
「ミドリ!あれあれ!いけるかもー!」
コレットが一枚の依頼書を指さす。
■依頼書(ホーンラビットの討伐)
形式:常設
内容:ホーンラビットの食肉の確保
討伐部位の角は討伐者の自由にしてよい
依頼料:ギルドの買取基準に従う
依頼主:スージー商会
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