#010 仲間

 ミドリは孤児院の客室でコレットと商談を行っている。開拓村へ飛ばされる件を話しておこう。ミドリは姿勢を正す。


 「コレット。いきなりで悪いんだけど」

 「なにー?改まって気持ち悪いなー」

 「今度、開拓村で店を持つことになった。だからコレットとの取引は今回で最後になる。突然で本当にゴメン」


 ミドリは頭を下げる。コレットは目が点になっている。


 「ど、ど、ど、どうしてそうなるのー」


 いやどうしてって言われても。


 「商会の会頭である親父の決定だから断れないんだ」

 「そういうことじゃないよ!もちろん僕も付いていくに決まってるじゃない!」


 コレットは拳をぎゅっと握って主張する。コレットの気持ちは嬉しいけど。


 「コレットはまだ子供だろ?孤児院長が許してくれるかな?」

 「そ、それは大丈夫だよ!あれ以来、院長先生は何故かミドリのことをよく聞いてくるから。きっとミドリのことを気に入ってるんだよ」


 それは少し違うけど、本当のことは言えない。でもコレットが一緒に来てくれると嬉しい。


 「じゃあ。今度、一緒に院長先生に話にいこうか」

 「うん!コレってあれみたいだね。お父さん、お嬢さんを僕にくださいってやつ」

 「ちょ。それだと僕が院長に一発殴られる」

 「なにそれ?変なのー」


 あははと笑いあう。そしてその瞬間、


 ポーン♪


 効果音とともに画面が表示される。


 [コレットが仲間になりたそうにしている。クランに加えますか?]


 びっくりした。これってあれだよな。どうする?いいのか?動揺しつつも。


(Yes)


 [コレットをメンバーに登録しました。固有スキル【時空庫】を付与します]



 ■■クラン Lv1■■

 【メンバー】 2/5

  ミドリ Lv14

  コレット Lv15



 クランのメンバーにコレットが追加された。コレットの名前の部分を意識してみる。するとコレットのステータスが表示される。


 ■■ステータス■■

 名前:コレット(13歳女)

 種族:人間

 Lv 15

 HP 51/51

 MP 30/33

 固有スキル:時空庫 Lv1(小容量)

 スキル:鑑定 Lv2


 【クラン】にはプライバシーの保護などないようだ。


 「なにこれ?ミドリの仲間になった?・・・時空庫???」


 コレットが目を丸くしている。コレットにも同様のメッセージが表示されているのだろう。


 「確認だけど、ステータスにスキルが増えた?」

 「うん。【時空庫】が増えたよ」


 コレットはコクコクと頷く。


 もう少し詳しくミドリのことを話す必要がありそうだ。コレットに【クラン】と【クラフト】について話す。


 「ミドリ、絶対にこのことは他人に話したらだめだよ?」


 同感。 


 「あと僕が言うのもなんだけど、簡単に人を信用したらだめだよ?」


 とても同感。


 「おかしいと思ってたんだ。いくら商会の息子とは言え、子供のミドリにあんな商品を流すかなって」


 申し訳ない。


 「でも反則だよね。仲間にスキルを付与するなんて初めて聞いたよ。知ってる?【時空庫】って【倉庫】の上位スキルなんだよ。持ってたら国に囲われるくらい・・・。鳥肌立ってきちゃった」

 「それはやばいな。【鑑定】を防ぐ方法とかないかな?」

 「【鑑定】を阻害する魔道具とかあるけど、とっても高価だよ。庶民ならダンジョンの宝箱で見つけるとかしか手に入れる方法はないと思うよ」

 

 一度に気になる情報がたくさん入ってきて脳がバグる。ダンジョンあるんだ。ダンジョンに行ってみたい。


 「今はバレないように気を付けるしかないか。いずれ魔道具を手に入れることを考える。ちなみにコレットの【時空庫】の容量はどれくらい?」

 「んー?まだ感覚が上手く掴めない。たぶんだけど馬車二台分くらいかな?」

 「じゃあ俺の持ってる商品は全部コレットに預けておく。売れたらお金ちょうだい」

 「だから簡単に人を信用しちゃダメだよぉ。でも一蓮托生の関係になったからいいのかな?これからよろしくね、ミドリっ!」


 コレットはミドリに抱きついてくる。こうしてミドリに初めての仲間が出来た。


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