#009 家族が思ってた以上に屑だった件

 「「「「ミドリ、誕生日おめでとう!」」」」」

 「・・・親父。兄さんたちありがとう」


 今日はミドリの10歳の誕生会が開かれている。テーブルの上には豪華な料理が並び、ケーキまである。珍しく親父や三人の兄達の機嫌がよく、とても嫌な予感がする。そんなミドリに親父がニヤニヤしながら言った。


 「ミドリにサプライズプレゼントだ。今度、開拓村の支店長をしてもらうことにした。いきなり支店長は大出世だぞ。ああ、言いたいことは分かっている。経験不足は補佐をつけるから心配しなくていい。多少危ない場所だが商会のために頑張ってくれ」


 今ミドリが住んでいるのがフレミング王国にあるウエストウッド辺境伯領の領都だ。領都の名前は領主の家名になるのが普通なので領都ウエストウッドとなる。この領都は王国で王都に次いで2番目に大きい街だ。


 なぜ辺境のウエストウッド領がこれほど栄えているのか。領内には大きなダンジョンがあり、そこから持ち帰られる遺物や魔石などのドロップ品が莫大な富を生む。さらに領は魔の森と接しており重要な戦略物資である魔物の素材が大量に手に入る。


 最近、辺境伯は王の命令で領都から馬車で二週間の場所に開拓村を作った。そこは北に魔の森、西に長年敵対しているガウス帝国という多少危ないどころか常に危険と隣り合わせの場所だった。


 王国は魔の森からとれる魔物の素材を安定して確保したい。そのために魔物を狩るための前線となる村を立ち上げた。村は立ち上げて3年目になるが順調に大きくなっている。


 長年敵対関係を続けてきた隣国のガウス帝国だが、ここ数年は両国間での小競り合いしか起きていない。辺境伯には国境を長年維持してきた富を背景とした強力な武力があり、おいそれと手は出せないからだ。


 ミドリの親父は、魔の森からの利益に目を付けた。さらに貴族と取引をする手前、家族を開拓村に送ったという実績が欲しかった。しかし自分が死ぬリスクを犯したくはない。そこで末っ子の俺を送り込むことにした。


 長男グラン(16歳)が親父にそっくりな顔でニヤニヤしながら、

 

 「長男の俺を差し置いて支店長か。生意気だが許してやるぜ。可愛い弟の出世だからな」


 親父と長男の腰ぎんちゃくの次男ジャック(14歳)が、


 「商会の名に泥を塗るんじゃないぞ。死ぬ気で頑張れ」


 ミドリがいなかったら開拓村送りにされただろう三男ハウル(12歳)が、


 「うっわー。あっぶねー。ミドリがいなかったら俺が開拓村送りじゃねーか。ミドリがいてよかった」

 「ハウル。それを言ったらダメだろ(笑)」


 親父と三人の兄達が爆笑する。


 (早く家を出たいとは思ってたけど、俺まだ10歳なんだけど)


 思ってた以上に家族が屑だった。


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