廃プレイで逝ったおっさんは異世界を楽しみたい

フィクション虫

Chap1. 固有スキルと孤児院の少女

#001 俺の体もってくれ⇒もってくれませんでした

 日本時間の午前5時。とあるオンラインゲームのPVPサーバーにて、一人奮闘するおっさんがいた。チームの仲間は現実のベッドで夢の中だ。


 ドガーン!ズダダダダダ!ドンドン!パーン!


 拠点の壁はC4爆弾で破壊され。おっさんにショットガンの銃弾が雨あられと打ち込まれる。


 「畜生!日本がド深夜なのを知って狙ってきやがる」

 「haahaha.good morning.japanese kids.」

 「itadakimasu!」

 「gochisousamadesu!Hahahahahaha.」


 そして一週間かけて寝ずに素材を集めて作り上げたアイテムと苦労して育て上げたテイムモンスターを奪われた。奴らはついでとばかりに拠点を更地にしていった。


 「・・・よし、また一から頑張ろう」


 このゲームの鬼畜仕様に耐えきれなくて何人もの仲間がチームリーダーであるおっさんの元を去っていった。でもおっさんはこのゲームの鬼畜さが好きだった。

 ゲーム内でピッケルを取り出し岩を削るりだすおっさんに、突然の激痛が襲う。


 「胸が・・・・痛い。これはあかんやつ」


 おっさんはずるりと椅子から崩れ落ちた。



◆◆◆


 

 ピッピッピッピッ


 病院のベッドに眠るおっさん。心拍は正常。ただし脳波に反応がない。おっさんは医者から脳死判定を受けたばかりだ。そしてそのおっさんを見下ろす形で宙に浮くおっさん。


 「あーあ。あっさり死んだな」


 おっさんは自分の肉体を見下ろして呟く。


 オンラインゲームに没頭すること一週間。

 資源を集め。拠点を築き。武器をクラフト。魔物をテイム。ダンジョンに潜り。拠点を襲ってきた敵を迎撃。敵の拠点を襲撃し返す。そして限界を迎えた。

 常にログインしていたリーダーのキャラが動いていない。異常を察したチームのメンバーが通報して現在に至る。


 まだ肉体とのつながりを感じる。肉体が生きているのでお迎えが来ないのだろう。おっさんは免許証の裏に臓器提供の意思を示していた。家族や親戚はいないのですぐに臓器は提供されるだろう。そしたら完全に死ねる。


 「死ぬまで暇だなぁ」

 「クスクス。呑気な人ですね」


 おっさんは振り返る。そこには古代の貴族のようなヒラヒラの服を着たドえらい美人さんがいた。


 (スンゴイ好みです)


 ピコン!ピコン!!ピコン!!!


 ベッド横の心拍計の数値が急上昇。看護婦さんが慌てて先生を呼びに行く。


 「女神様ですか?」

 「はい。生と死をつかさどる神です。あなたにはいくつかの道があります。ひとつめは」

 「転生一択でおなしゃーす」


 探偵や死神になるのも捨てがたい。しかし、いまこそ流行ビッグウェーブに乗る時だ。あれ?転生物って時代遅れ?


 「クスクス。わかりました。善行臓器特典でスキルも付けてあげますね」

 「さすが女神様。大好きです」

 「クスクス。それでは次回も良い人生を」


 おっさんの意識は途切れた。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

2022年10月28日

文章の体裁を整えて内容を追加しました。

本編の流れに影響はありません。


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