#036 逃走
ミドリたちが東の門から町を出るころ、帝国兵が国境を越え戦争が確定した。帝国兵が逃げる町民まで追いかけるかどうかはわからない。しかし今から街道沿いに逃げても追いかけられたら簡単に追い付かれ捕まってしまう。少しでもリスクは減らしておきたい。
「コレット、マリー、ラプタ。魔の森に逃げよう」
ミドリたちは進路を北の魔の森へ変え、出来るだけ早く遠くに逃げた。ラプタの【索敵】を使った誘導でゴブリンの領域を一気に突破しオークの領域の最奥まで逃げた。ここまでがミドリたちの実力で行ける限界。
『ぜぇぜぇ。ラプタ、たすかった』
『主、元気出すぽ』
『ああ、しばらくここで生活するんだ。しっかりしないと』
『みんな大丈夫?』
『私は余裕よ』
『僕はもうちょっといけそうかな』
『無理はやめよう。少し休憩にしよう』
マメに休憩を取りながら夜営が出来そうな場所を探すために歩く。歩く。歩く。どこまでも森だった。どれくらい歩いただろう、すでに辺りが暗くなり始めた。
『主、洞窟を見つけたぽ。付近に魔物はいないぽ』
『ラプタいいぞ。今夜はそこでやり過ごそう』
ミドリたちは森を抜け少し開けた場所に出た。目の前には高さ20メートルくらいの崖、その下に直径5メートル程の穴がポッカリ空いている。
ラプタの【索敵】は信用しているが警戒は大事。コレットが【時空庫】から松明を取り出し、洞窟の中を照らし魔物がいないか覗き見る。魔物の形跡はないので、松明の明かりを頼りに洞窟の奥に進む。変わった洞窟で天井からつららのような岩が垂れている。ミドリは前世の観光地でこういう洞窟を見たことがある。岩を【クラフト】ですこし取り込む。
石灰岩[G]
この洞窟は鍾乳洞だ。昔ここは海で周りの岩はサンゴや貝が堆積してできたものだ。長い年月をかけて雨水によって浸食され出来たのであろう洞窟の奥は見えない。下手したら数キロあるかもしれないので、詳しい探索は明日にしよう。
平らな場所を見つけ休憩にする。コレットが【時空庫】からパンとスープを取り出し、スープはアルコールストーブで温める。ひんやりと冷たい洞窟の中でストーブの暖かさはありがたい。作ってよかったアルコールストーブ。みんなでモグモグ食べる。
「色々ありすぎて疲れたわ」
「チェリーとキーウィ、他のみんなも心配だよぉ」
「やっと町になって喜んでたのに」
小さな横穴を見つけ家から持ってきた布団を敷き身を寄せ合う。念のため入り口を岩で塞いで出来た空間はまるでカプセルホテルだ。コレットとマリーがミドリをギュッと抱きしめ、ミドリはラプタをナデナデする。町のみんなのこと、これからのこと、気になってなかなか眠れなかった。
◆◆◆
ミドリは目が覚めた。今が何時なのか、洞窟内なので時間の経過が分かりづらい。かなり寝てたような気がする。ラプタとマリーとコレットはまだ寝ているので、これからのことを考える。
この洞窟を当面の拠点にしたいが、かなり大きな洞窟だ。魔物が住みついてる可能性もある。まずは詳しく調べたい。
洞窟の入り口は森を抜けたところにあった。おそらくあそこはオークの領域を通り過ぎたオーガの領域だろう。まだ見たことないオーガは身長3メートルの人型魔物で、いまのミドリたちの戦力で相手にするのは厳しい。他にもワイルドボアや岩トカゲがいるはずなので、そのあたりを討伐してレベルを上げるか。
そんなことを考えているとみんなが目を覚ます。
「おはよう」
「おはよー」
『主、おはようぽ』
朝食を食べながら考えていたことを話す。
「オーガと正面からは戦いたくないよー」
「罠を仕掛けて討伐するとかどうかしら?」
「知能はどれくらいあるんだろう?」
『オーガーは頭もいいぽ』
食事が終わると鍾乳洞の探索を開始する。
『主、【索敵】に魔物の反応はないぽ』
「みんな、頭巾をしっかりかぶって。落石に注意して」
前衛はマリー、両手で大盾を持って前方を警戒。中衛はコレット、松明で周囲を照らす。後衛はミドリ、槍を持って後方を警戒。そしてコレットの頭にラプタ、【索敵】に全集中。慎重に鍾乳洞の奥に進んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます