#038 ワイルドだろー?

 仲間になったフーコはメガバードじゃなくて上位種のギガバードだった。たしかに町で見かけたメガバードより一回り大きく、銀色に輝く体毛はとても綺麗だ。スキルも凄く、固有スキル【飛翔】が成長すると大空も飛べちゃうかもしれない。みんなで抱き着いてモフモフの体毛の感触を楽しむ。


 フーコはしゃがんで。


 『乗る、ギャ、三人・・・余裕ギャ』


 先頭でフーコの首にしがみつくのがマリー。マリーの後ろにミドリ、その後ろにコレットと腕力が強い順に続く。力強く立ち上がったフーコの背中は地面から2メートル程あり、かなり怖い。フーコの目線が3メートルくらいあるから高さではオーガに負けてない。


 『いく、ギャ』


 フーコーはゆっくりと走り出す。


 『【しっ、そう】ギャ』


 スキル【疾走】で徐々にスピードを上げていく。いい感じにスピードに乗ると。


 『【ひ、しょう】ギャ』 


 さらに飛ぶように加速して、というか飛んでいる。新しく手に入れた固有スキル【飛翔】で少し宙に浮き、小さな羽をパタパタさせながら坂道をグングン登っていく。フーコはご機嫌だ。滑空することしか出来なかった飛べない鳥が飛んでいるのだ、無理もない。


 『たの、しいギャ』


 この高さから落ちると不味いが、すごく楽しそうなので文句を言えない。ミドリたちはしがみつくのに必死だった。そして1時間ほどで地上に出た。3時間以上かけて下った岩だらけの道を1時間で一気に登り切った。


 『MP、ないギャ』


 フーコのMPが空だった。【飛翔】はMPの消費が激しいようで、マリーが慌ててマナポーションを飲ませる。5分ほどでフーコのMPは全回復した。



◆◆◆



 フーコに乗って岩場を探索する。上空を旋回するラプタからの念話。


 「ワイルドボアぽ」


 全長2メートルくらいある馬鹿デカいイノシシだった。まだこちらに気が付いていない。こちらに尻を向けてキノコらしいものを食べている。全員フーコから降りてワイルドボアを観察する。


 「基本はオークと同じ作戦で行くわよ、スキル【猪突猛進】に気を付けてね」


 マリーが鉄の大盾を構え、ミドリがパチンコ、コレットがクロスボウを準備する。

 まずはコレットがクロスボウで先制攻撃の矢を発射、プスッとワイルドボアの尻に刺さった。


 「ブギィイーーー」


 ワイフドボアは向こうに走り去ったかと思うと旋回してこちらに突進してきた。マリーを目標にしたのか加速して突っ込んできた。これが【猪突猛進】、ホーンラビットの【突進】より迫力がある。ミドリがパチンコで銅の玉を発射、ガツンとワイルドボアの額に命中するもダメージはあまりなさそうだった。マリーが構えている大盾に【補助魔法】の強化を施す。そしてワイルドボアがマリーの大盾に激突。


 ドンッ!


 車同士が正面衝突したような凄い音が響くも、マリーは一歩も下がらずに受け止めた。ワイルドボアは衝撃で目を回して崩れ落ちた。


 「いまよ」


 ミドリは鉄の槍を取り出すと全力で目に突き刺し、槍先は眼球を貫通して脳に達した。ミドリは槍をグイっと動かして脳を掻き混ぜ、ワイルドボアは痙攣して動かなくなった。


 「盾に強化を使わないと危なかったわね。それと途中で動きが鈍くなったような気がするわ」

 「矢に痺れ薬を塗ってたのが効いたのかもー」

 「きっとそれね。ワイルドボアは問題なさそうだから、次からはミドリの【クラフト】で仕留めましょう」


 馬鹿みたいに突進してくる敵にはミドリの【クラフト】が有効で、猪突猛進してきたところに鉄の槍を出せば串刺しになる。今回は対オーガ戦の練習に【猪突猛進】を受けたいとマリーが言いだしたのだ。マリーが男前すぎる。


 水場に移動してワイルドボアの血抜きをする。魔石、討伐部位の蹄、そして牙と皮をはぎ取り、最後に肉を切り分けた。今夜は鍋にしよう。



◆◆◆



 鍾乳洞の地底湖にもどったミドリたちは、メガバードの巣穴の付近で拠点として使えそうな横穴を見つける。10畳部屋くらいの広さがあるのでフーコもくつろげる。全員が中に入り内側から入り口を大きな岩石で塞ぐ。なんか秘密基地みたいで落ち着く。


 鍋隊長はコレット、孤児院で定番の料理だそうだ。大きな鍋にワイルドボアの肉と野菜をぶち込む、とてもワイルドだ。そして味付けに茶色い物体をぶち込む。どこで見つけてきたのそれ?ちょびっと舐めてみる、本物の味噌だった。みんなで囲む鍋は美味しかった。


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