第20話 スキル

 闘牛のような神を退けた私とフラムはやや小走りでコッカイギジドーへ向かっていた。神の雑兵のような小さい上位人を切り捨て、その度に街灯のスピーカーから放送が流れる。

 

「あなたさっきからその子達殺してるけど、神になるはずだった子供なのよ?」

 

「耳を貸すなスノウ」

 

 フラムは私に言葉をかける。しかし端から私はそんな事気にしていなかった。目的のため、致し方ない犠牲だと思っている。

 

「次の神はひと味違うわよ〜!」

 

 そうアナウンスされると、遠くの方に突然人影が現れた。人影は腰に携えた何かを握り腰を落とす。

 

「フラム伏せろ!」

 私はフラムの頭を掴んで、地面に叩きつける勢いで伏せさせる。

 

 直後、ブーメランのような形の空気の塊が飛んでくる。

 

「ありがとなスノウ」

 フラムは受け身をとって人影に突っ込んで行った。

 

「何しやがるてめぇ!」

 

 フラムは人影に殴りかかる。

 

 ぼんやりとしていた人影がようやく鮮明に見えた。腰には鞘を携え、顔には蛇の顔ような赤い筋が浮き出ている神が、フラムの拳を大太刀の峰で受けている。

 

「君達をここで斬らせてもらう」

 

 神はフラムの拳を振り払い、八相の構えをとった。

 

「俺も戦う前はしっかり構えを取る人間なんだよ」

 

 フラムはどっしりと重心を落とし力強く地面に踏み込む。自らを大きく見せるように腕を広げ、拳を握り、まるで刀を握っているかのようにフラムも八相の構えをする。

 

「うちじゃこれを、『黄蓮おうれんの構え』って呼んでる」

 

 武道を進む2人の気迫が、戦闘に参加していない私にも伝わってくる。場には一気に緊張の糸が張り、神とフラムはお互いを計りあっている。


 

 辺りは静まり、そよ風が漂う。


 

 

 葉が落ちて

 相対するは

 剣と拳

 張る糸途切れて

 立つ背に傷あり



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る