第33話 クライシス
直剣で弾き、盾で受け、身体で流す。ブリッツはエスの攻撃を、文字通り死ぬ気で耐え忍んでいる。私はそんな様子を、右目を抑えながら見る事しか出来なかった。
「スノウちゃんの目抉った感触はどうだった?」
エスはいやらしくブリッツに問いかける。
その瞬間、ブリッツは一瞬だけ気を抜いてしまった。そのたった一瞬をエスが見逃す事は無かった。
「だから甘いって言ってるの!」
エスは全身の体重を乗せてブリッツに
「さて、2人きりになったねスノウちゃん」
エスは私の首を掴み持ち上げる。私は息が苦しくなり必死にもがくが、全然離す気配がない。
よく見ると、エスの目は瞳孔がガン開きしていてまぶたがピクピク痙攣している。しかし行動の全ては冷静かつ最適そのもので、キメたシャブ中もバカには出来ないと少し感心してしまった。
「このまま首をへし折っても良いんだけど……、それじゃトウティ様に献上する時ブサイクだものね」
ドサッ――
「ハァ……、ハァ」
急に手を離され私は地面に落ちる。首の痛みと酸欠が酷く、右眼の痛覚も段々と麻痺してきた。
私は満身創痍、ブリッツもダウン、一方でエスはピンピンしている。昨日の今日でピンチが続き、私はもう笑う事しか出来なかった。
「スパッと首切っちゃおうか!」
エスはそう言うと、倒れている私の首目掛けて貫手をしてきた。私はもうここで死ぬんだ、と、そう思った。
「いや、ダメだ」
私は呟いていた。
エスの貫手がピタリと止まる。
「ここで諦めたらダメだ」
私は妹を探す、そのためにこんな所まで来て、出会って間も無いフラムを危険に晒し、助けてくれたブリッツも守れていない。私は何一つ成し得ていなかった。
「何ごちゃごちゃ言ってるの!」
エスの手が首に触れようとしていたその時。
「私が! やらなきゃいけないんだ!」
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