第36話 ストレイン

 暴風雪が吹き荒れる中、怒り狂った紺碧の雷が降り注ぐ。その中の一際大きな雷光がブリッツを貫き土煙が舞う。


「あはは! 自滅しちゃった!」


 エスが手や指をうねうね動かすと、それに呼応して大きな昆虫やグリムリーパーが私とブリッツに群がってきた。


「『雷閃雷公エリアブラストレヴィン』」


 土煙を中心として、蒼い円状の雷電が4本広がっていく。その蒼い雷電に触れた敵は一瞬にして塵と化し、やがて晴れた土煙の中から蒼い稲妻を纏ったブリッツが現れた。


 彼女は黒い生地に青いラインが入ったハイカットスニーカーとニーソックスを履き、ダメージの入ったホットパンツに、半裸の状態で黒い特攻服を羽織っている。背中には蒼い字で『蒼雷公雷電』。


「天才で最強のあたしがもっと強くなっちゃったね」


 ブリッツは蒼い稲妻を走らせた直剣をクルクルと回しエスを挑発している。


「まだまだキメるよ~!」


 エスは注射器と錠剤を同時に使用した。するとすぐに効果は現れ、エスの顔には冷静さと狂気の2種類の表情が共存していた。


「ブリッツ、雑魚は任せた」


「ちょっとスノウ!」


 私はブリッツの返事を待たずにエスに向かって走った。初めの1歩に思い切り力を込め、身体と地面が平行になるほど身体を倒してエスへ向かう。


 『スノウホワイト』の状態では身体能力も底上げされていて、1秒にも満たない時間で私はエスの眼前へと迫る。勢いを殺さぬよう私は軽く飛び、両手で大きな柄を握るように構えた。


「『クリスタルブレイバーダウン』!」


 私は氷の特大剣を一瞬にして生成させ、空を切り裂く程力強く叩きつける。特大剣が当たった地面からは青白い結晶が飛び散り、エスは僅かに怯む。

 彼女は私の攻撃を危険とみなしたのか、特大剣が当たらないスレスレを避ける。


「逃がさない!」


 叩きつけた特大剣の勢いをそのまま利用し、身体を捻ってもう1回転叩き斬る。エスはそれを再びスレスレで避け、私はもう1回転叩き斬る。避け、斬る、避け、斬る。


 ガリガリガリガリ―――!


 私は独楽を縦にしたような形で地面を削りながら進み、エスをどんどん追い込んでいく。


 その最中エスは指を立てた。


 刹那、得も言われぬプレッシャーが私を襲った。


「仕方ない、後ろは気にせず戦って!」


 攻撃を一時中断し振り返ると、数十という単位でグリムリーパーが出現していた。その中の数匹を蒼い閃光をほとばしらせたブリッツが塵にしていた。


 私は返事をせず、氷の特大剣を握った。


「「気張れよ!」」

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