第18話 トウテイ

 フラムはヨロヨロしながら立ち上がり手を上げる。私は何も言わずフラムの手を叩いた。

 

「はぁ……、ハハァッ! 僕だって結構考えた作戦だったんだけどな」

 

「鼠公がまだ喋るのか」

 

 私は神の腹に思い切りかかと落としをする。すると神は血反吐を吐いてぎゃーぎゃー泣き喚く。

 

「俺もお返しだ!」

 フラムは神の股目掛けて正拳突きの構えをとった。

 

「はぁ……はぁ! なぜ僕たちが君たちの命を狙うと思う!?」

 

 神は死に際に問いかけてきた。

 

「そりゃ、俺らが神を殺したからだろ?」

 

 神は血を垂れ流し、折れた歯を見せながらいやらしい笑みを浮かべる。

 

「違う! 追われるべき理由があるのさ!」

 フラムはお構い無しに神の股を殴ろうとする。

 

「待てフラム!」

 

「あの『トウティ』様の――ッ!」

 

 グチャ―――

 

 フラムは神の股間を砕き、神は白目を向いて絶命した。

 

「トウティ……」



 

 コッカイギジドーへはあと数駅ある。私とフラムは暴れた車両から移動し、座席に座ってゆっくりしていた。

 

「さっき、神が『トウティ』様がどうのこうの言ってたよな。様って付いてるってことは、神のボスみたいな扱いなんかな」

 

 私はそのトウティという名前がとても気になった。

 

「実はさ、私、『スノウ・トウティ』って名前なんだよ……。だから、神のボスはもしかしたら私の家族の誰かなのかもしれない」

 

 私自身すごく驚いたが、それを聞いたフラムもとても驚いていた。目を見開き、私の肩をふるわせる。

 

「ほんとかよ!? でも、ここは上界だぜ?」


 そう、フラムの言う通りここは上界。下界なら、生きているかもしれない妹の可能性もあるが。

 

「分からない。でも、コッカイギジドーに着けば分かることだろう」

 

 フラムは背中の傷を気にしてずっと背を立てて座っている。

 

 キュルキュルキュル――

 

 上位人がワゴンを引いてサービスをしに来た。

「すみませぇん、飲み物などいかがですかぁ?」

 

 帽子を深く被り、ゴスロリを着た上位人が微笑みかけてくる。

 

 しかし、私とフラムはこの女を知っている。気だるそうな声で話し、フワフワしたゴスロリを着て、指をさした場所に地雷を置く、この女を。

 

「早く会えたねぇ!」

 

 私はパンドラボックスでマインをぶん殴る。マインはそれを避けて距離をとり、帽子を外してニコニコ笑う。

 

「でもぉ、今はやり合う気無いよぉ。ちょっと耳寄りな情報をあげる!」

 

 マインは両手を後ろで組んで私の方へ歩いてくる。私の目の前に来たマインは、背伸びをして私に耳打ちしてきた。

 

「トウティ様はあなたに会いたくないってさぁ」

 マインはフフフと笑ってすぐ姿を消した。

 

「あんにゃろう、何しに来やがったんだ全く!」

 フラムは地団駄を踏んでマインに怒りを表す。


 

「次は〜、コッカイギジドー前〜、コッカイギジドー前〜、お出口は右側です〜」


 

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