第10話 ハンター
神との戦いを後に、私とフラムはデンシャの駅に着いた。この駅はたいそう賑わっていて、往来する人の数が尋常ではなかった。そこかしこに飲食店や洋服屋があり、駅前の広場には出店やライブなど大賑わいだった。
「これが上界の駅前か。下界の駅と言えば、どの駅にも簡素なベンチがあるぐらいだよなぁ」
フラムはデンシャの駅前の賑わいに妙にはしゃいでいた。
私はフラムを諭している中、ある1つの店が気になった。その店の名前は、『
店内に入ると、鉄臭さと様々な機械が出迎えてくれた。下界では見た事の無い精巧な機械品や、複雑な仕組みの刃物など多種多様な物が置いてある。
「いらっしゃい」
丸メガネをかけ、トップハットを被った男が店内に座っていた。男は本を読みふけっていて、今のところ私を気にかける様子は無い。
「おいスノウ〜、なんでこんな所に来たんだよ。スノウはパンドラボックスあるからもう良いじゃんかよ」
フラムが私にパンドラボックスの話を始めると、店の男が本を置いて立ち上がり、とても驚いている様子で私とフラムに視線を向けてきた。男の視線は、本から私達へ、私達から私のパンドラボックスへと変わっていく。
「嬢ちゃん、何故それを持ってるんだい?」
店の男は本を置いて私に近づく。
「私は下界の人間だ。下界に居る時に仕事場で支給された」
「クククク…、下界の嬢ちゃんがソレを持ってるのか…ククク」
男は手で頭を押えて笑いだした。
「何か知ってるのか?」
フラムが笑っている男にズイズイ近寄る。男はそれでも笑い続け、やがて笑いで出た涙を拭いてパンドラボックスをゆびさす。
「それは俺がつくった試作品だ。捨てたはずだが、下界の嬢ちゃんにひろわれてたとはなぁ。奇妙な運命だ。しかし、俺の試作品が支給される仕事って、一体どんな仕事してたんだよ?」
男はグイグイ私に近寄って私の仕事を聞いてくる。
「俺も気になってた!」
フラムも同調して私の仕事を聞いてくる。
さすがに私は折れて仕事の話をすることにした。避難所に妹を探しに行く理由も含めて。
「分かった、言うから待ってくれ」
今から3年前
下界では、人間の住んでいる所以外や、大自然が広がる未知の土地を総じて外界と呼んでいた。外界から来る獣は、家畜なんかとは比べ物にならないほど巨大で凶暴。そんな外界の獣を、政府のドローンや機械と共に討伐又は撃退するのが私の仕事、政府公認の『狩人』だった。
狩人はランダムに武器を支給される。短銃や散弾銃、大剣に槍など、人によって持っている武器は違った。私が貰ったパンドラボックスは余り物で、最初はなんの役に立つか分からないただの堅いビジネスバッグだった。使っているうちに、変形して武器の形になることを知り、そこから私は一気に狩人として成長していった。
そんなある日、16だった私の住んでいる所に外界の獣が現れた。普段は獣が現れた場所に飛んでくるドローンも、その日は何故か援軍に来なかった。私の家族や友達は大急ぎで家を出て列車に向かった。私は獣を食い止めるために列車へは行かなかったが、その道中で両親が獣に喰い殺された。目の前で両親を無くしたが、まだ私には妹が残っていた。
他人より妹を優先し、妹を列車まで送り届けた。そこまでは良かった。
しかし、列車は途中で獣に大破させられた。
生き残りは少なく、今も消息が分からない者も居る。
狩人として、スノウとして、家族を守れなかった私は狩人をやめて、街から街へ自分を売りながら生き長らえていた。生きる気力も無く、ただ漠然と生にしがみついていたのかもしない。
ある程度売春をしていると、人それぞれのローカルな情報もあった。その中に、私に似た女の子が避難所にいたと言う人が現れた。信憑性に欠けたが、妹が生きていると信じ、私は政府への恨みも込めて避難所に殴り込みを決めた。
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