第11話 ファイター
「まぁそんな感じだ」
私が政府のハンターであった事、不確かな情報で避難所に向かっていた事、それらを話すと、フラムと男は目を輝かせて矢継ぎ早に質問を投げてくる。
「ハンターってあのハンターだよな? すごいなスノウ!」
「魔法が使えない下界の人間は命張ってるんだなぁ。どんな獣がいたんだ?」
「どうしてスノウの住んでる所に外界の獣が来た時、政府のドローンとか援軍とか来なかったんだろうな?」
「売春なんかせず、さっさとソイツを売っちまえば金には困らなかっただろうに。その試作品があったからこそ、今の俺がいると言っても過言では無いぐらい素晴らしい物だぞソレは」
店の男が自慢げに話を切り出した。私の話題を逸らすため、私は男にパンドラボックスの事を聞いた。
すると、男は自分の技術によほど自信があるのか、店に陳列してある多くの機械品や刃物を私達の目の前で使って見せた。
「これは1つあれば食器には困らない優れもので、こっちは装着すれば磁気の力で魔法の威力が…――」
私はさほど退屈しなかったが、フラムはそういうわけでも無かった。男の話は聞き流す程度にしながら辺りを見渡し、早く店を後にしたそうにしていた。
「それでコイツが武道家用で…――」
男が、肘辺りまである紅の細い手甲と、膝下程の長さの朱色のブーツを持ち出して話を始めた。すると、興味無さそうにしていたフラムが急に食いついた。目を輝かせ、男の説明を今か今かと待っていた。
「コイツは『レーヴァテイン』と言う。ぶん殴ったり蹴り飛ばしたりする度に温度が上がっていき、その熱が血の巡りを加速させて戦闘力が数段上がる」
「な、なぁ、それいくらだ?」
フラムが財布を出して男に言い寄る。男は鼻を高くして口を開いた。
その時――
大きな揺れと店の外からの悲鳴が聞こえた。他にも銃声や爆撃音など、平和な時に聞こえるような音ではない轟音が響いている。
「フラム、外出るぞ」
フラムの手を引こうと彼の方を見ると、もうレーヴァテインを装備していた。
「兄ちゃん、レーヴァテインは普通の手甲やブーツとは強さと硬さが違う。為にし使わせてやるから存分に暴れてきな」
フラムはレーヴァテインの可動域や使い心地を確かめる。
ある程度いじると満足したようで、店の男にニカッと笑うと店の外に飛び出して行った。私も彼の後を追って
駅前広場
連なっている飲食店は崩れ、出店や街路樹は燃えている。
「お前らか、神殺しの下界人とやらは」
声のした方向を見る。そこには男女5人の人影があった。
「あいつら殺しちゃっていいの?」
「鬼と鳥が死んでるんだ。少し警戒しろ」
「でもぉ、たったのふたりだよぉ?」
「油断大敵なり」
多様な見た目で威圧感もある彼らは、口ぶりからして神の一員なのだろう。
「びびってんのか?」
1人目はブロンド短髪の女。赤い水着に黒いジャケットという不思議な格好をしている。
「我々の戦力を測っているのかもしれん」
2人目は眼鏡をかけたおカッパの男。薄い板のようなものを持っていて、なぜか両腕金属のようになっている。
「そんな事よりぃ、早く帰りたぃ」
3人目は黒髪長髪の女。黒いゴスロリを着て赤いメイクを施し、片手には爪傷のような柄の入った缶ジュースを持っている。
「隊長次第だ」
4人目は片目に傷の入ったオールバックの男。分厚いコートを着ていて、武装や体格が分からない。
しかし、1人だけその4人とは違うオーラの神がいた。
「お前らがどんなもんか遊んでやる」
5人目は金髪に青いメッシュの入った目付きの鋭い男。片手にはアーミーナイフが握られていて、黒い皮に赤いラインの入った、ブロンド女とは違うジャケットを着ている。
私とフラムは即座に武器を構える。
「まずは『マイン』行ってこい」
青メッシュがゴスロリに指示を出す。マインと言う名の黒髪ロングは気だるそうに私達の前に歩いてきた。
「早く死んでよぉ」
マインは私達の足元を指さす。
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