第12話 マイン

 マインが指をさした場所は特に何も起きず、少し拍子抜けした。

 

「相手が女の子だろうと神なら潰す」

 

 フラムがマインへ1歩踏み出したその時、マインがニヤリと微笑んだ。

 

 ドゴオオォォォ―――

 

 直後、地面に大きな穴が空くほどの激しい爆発が起こった。マインはその名の通り地雷を扱える神だったようで、私とフラムは吹き飛ばされてしまった。私はパンドラボックスで爆風をある程度防げたが、地雷を踏み抜いてしまったフラムの様子が分からない。

 

「フラム!」

 

 爆煙で周りが見えず、地雷を仕掛けられている可能性も考えて迂闊に動けない。かと言って爆破をもろに食らったフラムも放っておけない。

 私はパンドラボックスを振り、次弾に備えて戦闘態勢をとる。

 

「マジか…」

 

 パンドラボックスは、今この状況で1番来て欲しくない武器に変わった。

 

 爆煙が晴れ、ある程度周りが見渡せる状況になった。私の視界にはフラムの姿はなく、その代わりに、私の武器を見てゲラゲラと笑う5人の神の姿だけがあった。

 

「あははぁ! なぁにそのちっちゃいナイフぅ!」

 

 パンドラボックスは、刃が射出できるスペツナズナイフへと変形した。周りに地雷のあるこの状況で、刃が1回しか射出できず、1度飛ばせば回収も不可能に等しいスペツナズナイフ。正直心が折れかけた。

 

「男の方わぁ、バラバラになっちゃったのかなぁ?」

 マインは缶ジュースを1口飲み、再び複数の地面を指さした。彼女の魔法は、地雷を設置する対象物を指さすことで発動するようだ。

 

 私はここでふと、自分も魔法が使える事を思い出した。周りに地雷原が多く、踏むと大爆発するなら、私の魔法と相性が良い。

 

「こんな所で止まってらんないんだよ」

 

 私はスペツナズナイフの刃をマインへと射出した。刃が飛んでくることを想定していなかったのか、刃はマインの肉の肩に突き刺さる。

 

「痛あぁぁぁいぃ!!」

 私はこの勢いを止めず、マインに向かって走る。

 

「バカなんじゃなぁい!? さっきも見たでしょぉ?」

 

 私は、歩いた周辺の地面が凍るようなイメージを持って走る。すると、1歩、2歩と氷結する力は強まっていき、私の通る周辺は分厚い氷で埋まっていった。

 

「で、でもぉ! そんな事したって、肝心の刃が私に刺さってたら意味無いんじゃなぁい!?」

 そんな事は百も承知だった。だから。

 

「な、なんで、なんで刃があるのよぉ!!」

 私は走りながら、射出したスペツナズナイフのグリップに氷の刃を作っていた。金属の刃のように鋭く斬ることに特化している訳では無いが、この氷の刃はギザ歯になっていて、抉ることに特化している。


 私はマインの腹にナイフを突き刺した。

 

「あぁああああぁぁぁぁ!!!!」

 

 マインの腹からはドクドクと血が流れる。ナイフに力を込めると、マインは泣き叫びながら激痛に悶える。


 

 マインへの勝利を確信したその時。


 

「そこまでだ」

 

 全身を分厚いコートで覆ったオールバックの男が私とマインの間に入ってきた。私はナイフを抉りながら引き抜き即座に距離をとる。しかし男は瞬時に距離を詰め私に拳を入れる。

 

「うぐっ…」

 ゲンコツをモロ腹に喰らい、思わず膝を着いてしまった。

 

「もう終わりだ」

 

 男は足を上げ、私を踏み潰そうと勢いよく足を振り下ろす。

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