第13話 サル


 ガキイィィィン―――

 

 私が男を見上げていると、男は突然、誰かに頭を撃ち抜かれた。当たった場所は金属のコメカミ部分で、男は体勢を崩して私から少し離れる。

 

「嬢ちゃん!」

 

 鋼技こうぎ屋の男が突撃銃を握りながら駆け寄ってきた。男は神と目を合わそうとせず、逆に神は男を見て驚いた様子を見せる。

 すると、青メッシュの男が口を開いた。


「へぇ、お前の入れ知恵か、『サル』」

 

 男は青メッシュを鋭く睨み銃を向ける。

 

「黙れ『イヌ』。俺はもう神じゃねぇんだ」

 青メッシュと男の会話を聞いてとても驚いた。鋼技こうぎ屋の男は元神だったらしい。

 

「相変わらず、なんの役に立つか分からないモン作ってんのか?」

 

「お前こそ、まだコッカイギジドーのワンちゃんなんだな」

 

 犬猿の仲とはよく言ったものだ。まさにその体現と言っていいほど、青メッシュと男は仲が悪い。

 

「サル、邪魔だ」

 

 オールバックの男が私に向かってくる。サルと呼ばれている男は突撃銃を構えるが、僅かにオールバックの方が早い。

 

「お前が邪魔だよ!」

 オールバックの男の足元から、フラムが地面と氷を突き破りながら出てきた。勢いの乗ったフラムの拳は男の顎に直撃し、拳の当たった場所からは橙の炎が少し見えた。

 

「フラム!」

「悪いなスノウ。俺地雷食らった時、地面ぶん殴って地中にいたんだ」

 

 コイツはいつも戦闘になると、人格が変わったかのような動きをする。普通の人間が考えもしない行動を飄々とやってのける所は、私も少し見習いたい。

 

「さて、3対5だなイヌ」

 

 イヌと呼ばれている青メッシュは笑い、直後手を挙げて空を見る。

 

「今回は帰る。また遊んでやるよ、スノウにフラム」

 5人の神はイヌの合図を見ると、イヌに続いて私たちの目の前から消えた。

 

「絶対許さなぃ。置き土産してあげるぅ!」

 

 去り際にマインは指を鳴らし、一瞬で消える。

 

「なんだったんだアイツ」

 フラムはレーヴァテインを外しサルを見る。

 

「まて兄ちゃん、動くな。周りよく見てみ」

 私とフラムは猿に言われた通り、周りを見渡す。

 

「はっ……!?」

 

 空中には、無数の小さな金属の物体が浮遊していた。これがマインの言った置き土産なのだろう。

 

「触れたらこの辺吹き飛ぶ。これはマインの得意技の『エアマイン』だ」

 

 その金属の物体は重力を受けていないのか、空中を漂うというより、空中に設置されているかのように感じた。

 

「どうしたらいい?」

 フラムは動かずサルに指示を煽る。すると、サルは小さな箱のようなものを取り出し足元に投げる。それは次第に、私達3人を取り囲む鋼鉄のかまくらを形成して行く。

 

「まだ動くなよお前たち」

 

 次にサルは、猿のぬいぐるみを持ち出す。そしてぬいぐるみの鼻を押してそれを掲げる。

 すると、かまくら内にあった『エアマイン』が次々と地面に落ちていく。


「コイツは範囲内の魔法を無力化するモンだ。すげぇだろ!」

 

 かまくら内の安全が確保され、戦闘の緊張が解けた私とフラムは地べたに座る。

 

「さすが元神、すごいな」

 私は素直にサルを褒める。しかし、サルはあまり嬉しそうに見えなかった。

 

「嬢ちゃんの話も聞いた事だし、こんどは俺の話をしよう」

 

 サルはぽつりぽつりと話し始めた。

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