第14話 ピクチャー

 彼は元々神の一員だったらしい。下界に出向き、神として多くの人間を上界へ導いてきた彼は、魔法より物を作る事の方が上手かった。上界の街で至る所にある監視カメラや、本物と見分けのつかない機械動物、高速で走るデンシャの設計など、上界のありとあらゆる機械品を作ってきた。

 

 しかし彼には悪い癖があったそうだ。コッカイギジドーの地下13階にある下層転移門に自分の作った試作品を流し、下界の人間に試運転させるという。おそらく下界の政府は、この男の作った漂流物である遊撃ドローンや、他の機械を戦力にしているのだろう。

 

 あまりに自由奔放で、上界をも潰しかねない彼を見て、コッカイギジドーの神々は彼を追放した。

 

 だから彼は下層転移門に細工を施したという。下界に行く時は狙った場所に着くが、神が人間を連れて上界へ戻る時はコッカイギジドーではなく全く別の場所に着くという、彼なりのイタズラをしてコッカイギジドーを出ていった。

 

「そんで、今の鋼技こうぎ屋をやってるってわけだ」

 

 フラムはケタケタ笑いながらその話を聞いていた。

「あはははは! ただのアホじゃん元神様!」

 

 フラムは頭にサルのゲンコツを食らっていた。

 

「でも凄い、街の機械品はほとんどあんたが作ったんだな」

 

 サルは嬉しそうに鼻を伸ばす。しかし、すぐにしょんぼりしたような顔をしてうつむく。

 

「でもな、さっきのイヌ野郎と取り巻きがいただろ。あいつらは他の神とは少し違うんだ」

 

 サルは胸のポケットから半分に折れている板を取り出してそれを広げると、その中に保存されていた写真を私とフラムに見せる。

 

 その写真には先程の5人の神とサルが写っている。みな笑顔でカメラに向き、胸元には『六天』と書いてあるワッペンが付いている。

 

「これは、アイツらが時の写真だ」

 

 フラムはそれを聞くと目を見開いてサルを見る。

 

「生きてたってどういう…?」

 

「言葉のままさ。今のアイツらは、俺が作ったモノだ」

 

 彼らは、とても作られたようには思えないほど人間味があり、表情や威圧感など人間の持つものと遜色なかった。

 

「ま、しみったれた話はこれで終いだ」

 

 まだ謎が残る話だったが、サルは話を切り上げると、鋼鉄のかまくらから外に向かって何かを投げた。するとその直後、激しい爆発が連続で起こり、激しい揺れと耳が壊れそうなほどの轟音が鳴り響いた。


 

 しばらくして私たちがかまくらから出ると、かまくらのある地面だけが綺麗に残り、周りの地面や建物は瓦礫の山となっていた。

 

「上界はこんな時でもデンシャが来るんだな」

 

 フラムは駅を指さす。下界にある列車とは違い、デンシャの先頭車両には黒く丸い頭に煙突が付いていて、そこから30メートルほどの車両が10列ほどある。

 

「ありがとう鋼技こうぎ屋の人。また縁があれば」

「ありがとなオッサン」

 

 サルは優しく微笑んだ。そしてフラムの肩を掴んで一言。

 

「金」

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