第9話 グレン
僅かな冷気を纏い、轟音と共に放たれた弾丸は真っ直ぐに神の元へ進む。弾丸は空を切り裂き、触れる空気を微かに凍らせ軌跡に雪を降らせる。
「小賢しい!」
神は両翼で弾丸を防ごうと身を守る。
しかし大口径の弾丸は止まらない。鋼鉄の翼にめり込んだ弾丸は、翼周りの肉を抉りながら突き進む。やがて翼を貫通し、凄まじい威力と僅かに帯びた冷気で、神の胸には傷口が凍結した大穴が空いた。
穴の空いた神は墜落していく。それを見て私は次の狙撃位置へ移動した。
「穴空けられた!」
神はフラムの前で地団駄を踏んでいる。
「スノウはすごいな。俺も何か出来ないか…」
フラムは自分の手を見た。そしてしばらくして、何か決めたかのような顔をして神を見る。
「おい神。実は俺、格闘技が得意でよ」
フラムは目を瞑り手を大きく広げる。腕から手先は水のように流し、それとは対称的に、脚から足は地面のように力強く舞う。何かの所作を始めたフラムからは、溢れ出る闘魂と燃えるようなオーラを感じる。
「『
黒くたなびく髪が燃え、凛々しい蒼眼に残光が走る。おチャラけた雰囲気のあるフラムが一転、獲物を狩る狩人のように冷静に殺気を立てる。
「もっと早くやれば良かったな」
そう呟くと、フラムは神の前から消えた。
「あれ? いなくなった」
次の瞬間、神の懐からフラムが現れ、神の腹に拳を当てる。
「一」
強烈な一撃が神を揺らす。ゼロ距離から放たれたにもかかわらず、鋼鉄であるはずの神の腹が凹むほどの衝撃が走る。
「二」
脇腹を狙った回し蹴り。ベギベギャと聞いた事のない音が響き、直後神の体が建物へ吹き飛ぶ。
「三」
フラムは建物に激突した神の鳥のような顔面目掛け、かかと落としを直撃させた。神の顔面はグチャグチャに凹み、鳥だと分からないほどに形が変わってしまった。
「『
フラムは地面に大きく踏み込み、右手で強烈な掌底を神へ叩き込む。全身金属の鋼鉄神を吹き飛ばし、神の体を大きく変形させる。
吹き飛ばされた神はフラフラと立ち上がり、残った足と僅かな力でフラムに向かう。それを見たフラムは、遠くにいるはずの私を一瞥し、首を欠くサインを出す。
私はアンチマテリアルライフルに冷気を込め、息を止める。ゆっくりとトリガーに指をかけ、神に照準を向ける。
「これで死ね」
トリガーを引き、冷気を込めた弾丸を放つ。弾丸は神の首元に吸い込まれるように飛んでいく。
直撃した弾丸は神の体を削り取りながら進み、傷口の凍結した2つ目の大穴を空ける。凍結した傷口から冷気が広がり、パキパキと音を立てながら神の全身が凍結していく。神は氷の塊となった。
私がフラムの所に戻ると、いつものおチャラけたフラムに戻っていた。
「これどうするよ?」
「叩き割って」
「はいよ」
フラムは凍った神をぶん殴り叩き割った。体の芯まで凍結していた神は、氷を砕いた時のようにバラバラになった。
「ところでスノウ、魔法使えるようになったんだな。スノウは名前の通り、氷系が得意なのか」
私は今の位置から見えるデンシャに向かって歩き始めた。
「フラムも似たようなもんだろ」
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