第8話 アイスバレット
「スノウ、お前人斬ったぞ……」
フラムからの言葉を聞き、私はすぐさま刀を引いた。神に刃が届かない妙な違和感の正体は、神が掲げた上位人の肉壁らしい。
神は言った。
「君! にんげん殺したね!」
「君! にんげん殺したね!」
フラムは手を突き出して炎を放つ。人間を持っていない方の神に炎が直撃したが、燃え盛るどころか逆にすぐに鎮火する。負けじとフラムは火炎を放つが、ことごとく神にあしらわれる。
ズキン…―――
私は戦闘中にも関わらず、突如激しい頭痛に襲われた。刀を落とし、敵を前にして頭を押えてもなお痛みは容赦なく私を襲う。
「フラム…、私ダメだ……」
張り詰めていた神経がプツンと切れ、私は顔から倒れた。
これで晴れて、うぬは半上位人だ
おめでとう
力量はうぬで測れ
次に目が覚めると、私は簡素な街の中にいた。そこそこな高さのビル、枯れ気味の街路樹や往来する人々。そこには炎を放つフラムと、片腕が鳥の羽のようになっている二人の神がいた。
「スノウ! 大丈夫か!?」
フラムは神を牽制し私に近寄ってくる。戦闘中だということを思い出し、私は落とした刀を拾い構える。
「スノウ、お前その腕…」
私は自分の腕を見た。そこには、フラムに付いていたような金属模様が浮かんでいた。周りの景色や神の腕など、見えなかった物が見えるようになり私はようやく自覚した。
「君! これで半上位人!」
「君! これで半上位人!」
神は再び融合した。腕の見えるその神は、とても歪な見た目をしていた。頭や腕は鳥のような形をしているにもかかわらず、胴体は人の形をしている。
「フラム、私はもう大丈夫。だから援護を頼む」
私は刀を構える。神はそれに答えるように空へ飛び上がった。
フラムは舞い上がる神に向けて炎を放つ。踊るように神は避け、その鉄扇のような羽根を雨のように降らす。羽根の当たった地面や建物は砕かれ、辺りは瓦礫まみれになっていく。
「居合は無理か…」
私は刀をパンドラボックスに戻す。黒い箱から蒸気と共に甲高い音が出る。
「スノウ! 何やってんだ!」
私は祈った。
私は遠くへ走った。
私は高台へ走った。
私は私の変化に気づいた。
私は神のいる空に近づいた。
私は再びパンドラボックスを振るう。
全長1447.8mm、12.7mm口径、装弾数は10発。大口径の弾丸を使用し、分厚い鉄鋼をも貫通する威力を生むその銃は、『アンチマテリアルライフル』。
銃身から垂れるバイポッドを拡げ、舞い上がる神へと照準を調節する。
僅かに感じる冷気をマガジンに篭め、銃身へと装填。チャージングハンドルを引き、1弾目をバレルへと送り込む。
レンズに目を近づけ、可変サイトに神を入れる。
私は息を止めて神を見つめる。
「『アイスバレットダウン』」
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