第39話 バーニングイフリート


  一方―――


「六天のお前がなんでこんな所に! それに、なんで神のお前がスノウの味方をする!」


 ブリッツは直剣を振りながらサルへ矢継ぎ早に質問を投げていた。サルはブリッツの攻撃を軽くあしらい、ため息混じりに自分の現状を話した。


 しかしブリッツはそれを聞くと、

「そんなこと信じられるか! 神は敵、特にトウティに近い六天なら尚更だ!」

 と、サルの話に聞く耳を持たない様子だった。


「仕方ないな、この暴れん坊将軍め」


 サルは直径2メートルほどあるパイルバンカーを軽々と扱い、身体能力と魔法の効果が大幅に上昇した『蒼雷公アズールレヴィン』状態のブリッツと互角に渡り合っている。


 蒼く光り轟音を従わせ走る稲妻がほとばしり、ブリッツは踊るように武器を振るった。


「これは捌ききれる!? 『獄駆動雷公ウルドライブレヴィン』!」


 ブリッツの全身から蒼い閃光が弾け、サルの目の前から消える。


「こりゃ凄いな」


 サルが何も無い所にパイルバンカーを振り下ろすと、タイミングよくブリッツが直剣を振っていて鍔迫り合いになった。


 ズバァァァン―――ッ!


 その直後大きな落雷の轟音が鳴り響き、彼女らの鍔迫り合いと落雷の音で周りの空気が激しく震える。


「あんたが初めてだよ、この『獄駆動雷公ウルドライブレヴィン』を見切ったのは。でも2度目は無い」


 そう言うとブリッツは再び姿を消した。


「おー、怖い怖い」


 サルはパイルバンカーを小突くように動かす。すると、極太の釘の先から攻撃の軌道をずらされたのであろうブリッツが姿を見せた。

 しかし彼女は止まらなかった。3回、4回と現れては消え、現れては消える。その度に落雷の音が遅れて空気を揺らし、彼女らの周囲だけはとてもプレッシャーが強かった。


「君のその技の正体は、自分の脳に電気を流して超高速で動けるよう電気信号を操っている。霊装の効果でその魔法と君の身体能力は飛躍的に上がり、一見消えてるように見える、ってところかな?」


 サルは右腕に装備したパイルバンカーを縦に立て、飛び出ている極太の釘をその四角い大砲のような銃身にぶち込んだ。


「さ、1回喰らってみよう!」


 サルは次に来たブリッツの直剣をパイルバンカーで弾く。そして彼は体勢が崩れたブリッツの腹に、ゼロ距離でパイルバンカーの銃口を押し付けた。


「死なないといいね」


 サルはそう言うと、パイルバンカーのトリガーを引いた。


 ギュィンギュィン……―――


 バアアアァァァァァン――ッッ!!


 警告音が響いた直後、落雷の轟音に勝るとも劣らない爆発音が周囲に響いた。

 

 撃ち出された極太の釘は、ブリッツの腹に大穴を空ける予定だった。


「へ、へへ! 危ない危ない」


 ブリッツは間一髪の所で撃ち出された釘をぶん殴り、パイルバンカーの銃身を逸らしていた。


 サルが行った釘の射出にインターバルが必要なのか、パイルバンカーは蒸気を噴出し、ピーという甲高い音もなっている。


「凄いな君」

 サルは赤熱化した釘の冷却の為パイルバンカーを振り回している。


「くそ……、バカにしやがって!」


 ブリッツは直剣を天に掲げてサルを睨んだ。


「この技はあたしの今の最高点だ。霊装の副作用で死のうが関係無い!」


 直後、蒼い落雷がブリッツを突き刺した。尋常ではない空気の震えと眩い雷光。


 その中から、目にも止まらぬ早さで彼女は飛び出し、蒼く光っている稲妻の刃をサルに向け振るう。




「『地獄の火炎バーニングイフリート』!!」




 サルはブリッツの渾身の技を正面から喰らい、塵すら残らず燃えて消滅してしまった。

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