第54話 スタート
ブリッツはモジモジしながら答える。
「つまり、嬢ちゃんは妹のために、暴れん坊将軍は好きな人のために神に立ち向かう訳か」
サルは何やら納得した様子でブリッツの方を見る。
ブリッツは、今にもサルに噛みつきそうな目線を送りながら彼の質問に答える。
「暴れん坊将軍じゃなくてブリッツね! まぁそんな所よ……」
人を好きになると、こうも大胆に行動できるのか、と、ブリッツに関心してしまった。
私にも好きな人が出来たら、いずれはその人のために頑張ることができるのだろうか。
「あたしの好きな人はね! 凄い優しくて、1番かっこよくて、料理も上手でなんでも出来るんだ!」
ブリッツは鼻高々に好きな人の話をし始める。どうやら相当惚れ込んでいるらしく、聞いてもいないことを淡々と言い続ける。
「んぁ……? 起きたのかスノウ」
寝ぼけたフラムが起き上がってきた。フラ厶は、周りを見ずに延々と好きな人の話をしているブリッツを見て軽く引いている。
「え…? こいつってこんなヤツだったのか……?」
そういえば、彼はブリッツとしっかり会話するのはこれが初めてになるのだろうか。
コッカイギジドーで瀕死のスノウとフラムをブリッツが救い、そこからフラムは傷の治癒のためにスラムで寝ていた。
一方のスノウとブリッツは、蛙を彷彿とさせるような斑の神とヤク中のエスを打ち倒した後、霊装の反動でお互い瀕死になり、フラムとサルに助けられ今に至る。
颯爽と駆けつけた自己肯定感の高いナルシストなブリッツからは想像できないような惚気っぷりに、私もフラムも苦笑いすることしか出来なかった。
「ま、とにかくだ。これでまたコッカイギジドーに攻める準備が終わったって事だな」
フラムはちゃぶ台にあった湯呑みをすする。
「やっとだよ! こっちから神の本陣に攻め込んでやる」
ブリッツは拳を手のひらにうちつけ、ニヤリと笑う。
「それぞれの目的のためにここまで来たんだ。最後まで付き合ってもらうぞ」
私は、ブリッツとフラムに、そして何より自分に言い聞かせるように喝を入れる。
これから先、私達は死地へと赴く。ここには覚悟の無い人間など1人も存在しない。その緊張感は、かつてないほどに私を刺激する。
「気合い入れていくぞ」
私達は
そんな私達にサルが一言。
「だから、しばらく休んでから行きなさいと」
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