第55話 クロッシング

 私、冬帝ふゆみかど ゆきことスノウ・トウティは、目的が一致している2人の仲間と、神が巣食うコッカイギジドーへと歩みを進めている。


 

 下界の列車内で出会った、フラム・カグツチ。炎の魔法と自らが培ってきた格闘技術を併せて戦う超近距離戦闘員。黒く長い髪に青い瞳、目には傷痕があり、優しい青年と血の気の多い戦闘狂の人格を有する。


 

 スノウとフラムの危機を救い、命の危険を伴う霊装『蒼雷公アズールレヴィン』を体得しているブリッツ・ライデン。雷の魔法と赤い片刃の直剣を扱い、時に速く、時に力強く戦う近距離戦闘員。赤いボブのその後ろ姿で、大勢の上位人と愛する人を救う覚悟を見せる。


 

 外界の獣に抗い、上界の神へと立ち向かう。その瞳には、たった1人の妹の姿。

 変幻自在のパンドラボックスを振るい、近距離から遠距離まで幅広い戦闘ができるオールマイティなスノウ。神を束ねる存在を知った時、彼女はどういった反応を見せたのだろうか。



 

「戻ってきたな、コッカイギジドー」


 フラムが呟く。そんなフラムの肩を叩いて、ブリッツは背の直剣を抜剣する。


「最強で最高なあたしがついてる。肩の力抜いて行こうぜ?」


 ガチャンと、ブリッツは左腕の細いカイトシールドを展開した。フラムもレーヴァテインを強く打ち付け、怪しく光るひとつの建物を見つめる。

 


 ゾロゾロと、コッカイギジドーの方から大量の人影がこちらへ歩いてくる。アクション映画の撮影でも見たことが無い程、大勢の人間がそこにいる。


「なるべく殺さず無力化しよう」


 私はパンドラボックスを振った。


 ガチャガチャ―――


 手に握られていたのは、4本の剣が合わさって出来た合体剣だった。合体剣はとても重く、今の私では両手でも振るえるか怪しい程に重量感がある。


「3人で戦うのもいいが、一旦別行動を取ろう。この人数を相手に、味方に攻撃を当てるなという方が難しい」


 フラムは、コッカイギジドーを右側から周って攻めようとしていた。


「あたしは賛成だ。スノウもフラムも、あたしの超火力で死んじまう」


 ブリッツは私の左側へ立つと、全身に紅い稲妻を走らせる。


「集合場所はコッカイギジドー前。なるべく傷を負わず、ブリッツは霊装を控えるように」


 重い合体剣を肩に担ぎ、私はゾンビのように群がる上位人の波を睨む。


「「死ぬなよ!」」


 フラム、ブリッツの両名は一斉に左右へ走り始め、上位人の波は綺麗に3分割される。それでも戦闘初心者の私には数が多すぎて、足が少し震える。


(私はスノウなんだ。このぐらいの数、殺さずに戦える。人を殺した事なんてないけど、私には魔法もパンドラボックスもあるんだ。何とかなるはずだ!)


 自分で自分を鼓舞すると、自然と体が軽くなり、こんな重い合体剣も軽々扱えそうな気がしてきた。


「喧嘩上等!」

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