第2章 no chance of surviving

第41話 

「はい、カットォォォ!!」


 監督からの指示が来た。


「『ゆき』ちゃん、あの迫真の演技と表情最高だったよ〜!」


「ありがとうございます! もち監督!」


 私は女優、『冬帝ふゆみかど ゆき』。今は、あの大人気ライトノベルの『beat down』の実写映画を撮影をしていた。素晴らしいアクション表現や物語の構成が人気に火種を付け、アニメやゲームなど様々なジャンルで有名になった作品だ。

 そんな私は主人公の『スノウ』役に抜擢され、それはもう大変嬉しかった。私は『beat down』がとても大好きで、電子と紙の両方の媒体で読みまくっていた。


「お疲れ、ゆきさん」


 声をかけてきたのは、相棒の『フラム』役である俳優の『嗅土かぐつち 火炎ひえん』さんだった。彼はとても優しく、スタッフや他の女優や俳優に好かれていた。


「ありがとうございます、火炎ひえんさん」


 私達は今、スタジオのグリーンバックで撮影をしていた。それに、物語の最後であるスノウとフラムの対決。ブリッツやサルを演じた役者さん達も見守る中、私は全力の演技ができたと思う。


「さて、皆さんお疲れ様でした!」


 もち監督は足早に帰宅していった。あの人はいつも現場を颯爽と去っていくため、撮影チームや役者の私たちも少し呆れていた。


「あの人は最後まで自分勝手だったね〜」


「そうですね、アハハ」


 『ブリッツ』役の『雷電らいでん 伊奈妻いなめ』さんが話しかけてくれた。彼女は快活な性格で場を和ませてくれる、まさにムードメーカーのような人だ。


「でもあの人、奥さん大好きらしいぞ」


 『サル』役の『神野かみの しん』さんだ。彼は少しダンディな見た目で声が渋く、俳優界のお父さんとよく言われている。


「自分の映画より奥さん優先なんですね」


 場にいる人々がくすりと笑い、徐々に緊張が解け撮影の終了を祝うムードへと変わっていく。


「あ、私少し休憩頂きますね!」


 私はスタジオの小休憩ができるエリアへ行き、自身のスマホで『beat down』を読み始める。


 第1話『プレリュード』、第2話『パンドラボックス』、第3話『アングリーホワイト』…………、幾度と見た会話、幾度と見た戦闘、本当に何度見ても面白くて大好きだと思った。


 


 第40話『ザン・テツ・ケン』を読み終えると、見覚えのない第41話『 』が更新されていた。作者のもちさんが新しく書いたのだろうか、完結しているはずなのに何故、など疑問が頭に浮かんだ。

 しかし1番の疑問は、その第41話にタイトルが書いていなかった事だ。


 私は大好きな作品の続きが見れるとワクワクし、その第41話『 』を押した。

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