第42話 ノンフィクション


 「来てみろ!!」


 私の目の前にいたは、両腕両脚のレーヴァテインを激しく炎上させている火炎ひえんさんだった。その炎は撮影から後付けしているCGではなく、実際に私の目の前で燃えている。


 私は状況が分からず、強く拳を握っていた。


 その直後、今までに感じたことの無い頭痛や全身の痛み、そして何にでも負けないと感じる全能感が私を支配した。


「あああぁぁぁ!!! 痛い、痛い痛い辛い!」


 私は小休憩ができる所で『beat down』を見ていたはず。そして謎の『第41話『 』』を押した瞬間に目の前に広がった光景は、まさに先程撮影していた最後のシーン。場所はスタジオでは無く本当の東京駅のようで、バラバラに崩れ落ちた建物や瓦礫の山などは本物のように見える。


 最大の違和感は、肌に感じる肌寒い冷気や実際の物理的痛み、そして目の前の火炎ひえんさんの、演技では無いような本気の闘志。


「スノウ!」


 私はあまりの激痛に膝を着いてしまい、火炎ひえんさんは私に駆け寄ってきた。

 

 撮影中にしてはおかしな状況ばかりだった。

 

 身体の自由が効かないぐらいの痛み、なのに無理矢理立ち上がろうとする私の体。まるで、本当に私がスノウになったような感覚だった。


「決着は着いたかい?」


 声のした方へ振り返ると、『蒼雷公アズールレヴィン』の衣装では無く、デフォルトの衣装を着た伊奈妻いなめさんを抱えているしんさんがいた。


「サル! さっきちらっと見た時、塵も残らず消されてなかったか?」


 しんさんや火炎ひえんさんはセリフに無い言葉をツラツラと話している。


「ちょっとヒヤッとしたよ。でも仮にも元六天の神なんでね、対策は打てるさ」


 私は全身の強烈な痛みに苦しみながら、彼らの訳の分からない話を聞き流すしかなかった。しかし体は勝手に動き、よろよろな体で火炎ひえんさんへと歩いていく。


「スノウ、急に闘志が消えたぞ、もう助けたいからぶん殴るからな」


 ドス――ッ!

 

「うっ……」


 私は火炎ひえんさんからみぞおちに一撃を貰った。ただでさえ意識が朦朧としていたのに、彼の拳を喰らったために私の意識はそこで途切れてしまった。



 

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