第28話 クリスタルオブブルー

 私は、初めてマインと戦った時の事を思い出していた。氷が、魔法が、まるで自分の意思に呼応するように発動した。地面に氷の層を作り地雷を防いだり、刃のないナイフに新しく氷で刃を生成したりと、魔法だけでもやれる事はある。


「まずは……」


 神と戦うのに武器が無いと太刀打ちするのは難しい。そのため、パンドラボックスで形成できるロングソードをイメージして氷を生み出す。


「何してるんだい?」


 神は粘液を撒きながら私に近づく。剣の形成に時間を要するため、神の攻撃を捌きながら魔法に集中するのはとても難しい。

 

 そんな私の都合を知ってか知らずか、神の攻撃は一段と激しくなる。


「『天気雨ポイズンシャワー』!」


 神は大きく息を吸い込んだ。空気を取り込んでいる間、神の首から胸にかけての部分が風船のように膨らんでいく。

 空気を取り込み終わると、そこから一気に空に向かって自分の粘液や毒液を吹き出す。大小様々な粒の液体が、空から雨のようになって落ちてくる。


「ブリッツ!」


 彼女は今幻覚を見てる。そんな状態で、得体の知れない毒液を沢山浴びたら命に関わるかもしれない。

 私はアイスフィルムをブリッツにかけた。


「クソ! こんなものであたしを捕えられると思うな!」


 ブリッツは私の魔法を敵からの攻撃と勘違いしているようだった。

 彼女は直剣を両手で握り、切っ先を地面に付けて毒が降る空を見上げた。


「『天鳴マキシマムベット』!」


 ギリギリと直剣を地面に擦り、空に向かって軌跡がクロスするよう切り裂く。その斬撃は衝撃波を産み、私のアイスフィルムと神の毒液を吹き飛ばした。


「ナイスだブリッツ!」


 私はより強くロングソードをイメージして拳を握る。すると、握ったはずの拳には氷の柄が握られていた。

 鍔に雪の結晶があしらわれた柄は瞬く間に伸びていき、鋭利で青白い両刃のブレードが姿を現した。


「『クリスタルオブブルー』」

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