第27話 ポイズンフロッグ
「パンドラボックスを直せる人を知ってる。私は今からそこに行く」
食事を終えて外に出る支度をしていると、ブリッツが無線機を渡してきた。
「これはあたし特製の電気が流れてる。あたしが死なない限り、電池も電源も使わずに連絡できるよ」
ブリッツはソファから立ち上がって部屋のドアノブに手をかけた。
「さ、行こっか」
建物から出ると、そこは寂れたスラム街だった。路地にはウジの湧いた人間が横たわり、そこらの建物は全て汚くボロい。身なりの良い人間はブリッツぐらいしか見当たらず、都心とは全く違った景色が広がっていた。
「ここは神の目も届かない暗がりだよ」
ブリッツはすれ違う無法者たちに笑顔を見せながらズカズカと歩く。その様子はまるで、街のボスのように堂々とした態度だった。
「ま、こいつらはいわゆるクズだ。あたしが面倒見てやってるだけだから、気にせず行こうぜ。アテはあるのか?」
ブリッツは私の手を引いてそそくさとスラム街を闊歩する。
「コッカイギジドーに続いてるどこかの駅に、
次に行くべき場所を決め、味方も増えた矢先に奴らの刺客が来た。
「やぁ君達」
不気味な笑顔を浮かべたそいつは、すぐさま顔に赤い筋を浮き出させる。体には斑模様が浮かび上がり、見るからに毒々しい見た目になっていった。
「スノウ、ちょうどいい機会だからあたしの素晴らしく最強な力をお披露目するよ」
ブリッツは背の直剣を抜き、左腕を振ってカイトシールドを展開する。身体には僅かに赤い稲妻が走り、バリバリと唸っている。
ブリッツと神の両者は戦闘態勢に入り、互いに殺気を飛ばしあっている。
「おらぁ!」
神は口から毒液のようなものを打ち出してブリッツへ先制攻撃をする。
ベチャ――
ブリッツはカイトシールドで毒液を防ぐが、ほんの僅か1滴が体に当たる。しかし彼女は気づかずに、即座に剣を構え、神に一閃。
「お、おいブリッツ、どこ狙ってるんだ?」
彼女の振るった剣はあらぬ方向を切り裂く。神はそれを見るとにんまりと笑い、舌とヨダレを出しながら私を見てきた。
「君達は僕の毒に犯されて、自分の都合のいい映像を見て、僕に殺されるんだぁ!」
神は私に向けて毒液を吐き出す。
「『アイスフィルム』」
私は考えるよりも先に動いていた。
手で空を撫でると、私の周囲には見えないほど薄く透き通った氷の膜が張られていく。その膜が神の毒液を防ぐ。
「なかなか賢いねぇ君」
息巻いていたブリッツは使えず、パンドラボックスがない今、この状況は自分の実力がどれほどのものか試せる絶好の機会だった。
私は拳を握り、舌を出している斑の神を見る。
「やってやる」
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