第26話 イーティング
「トウキョウに住む彼らは、戦闘が起きようが街が破壊されようが人が死のうが見て見ぬふりしてるの分かるか?」
そう、上界に来て、トウキョウに来て、ずっと違和感を持っていた。
鳥の神が犠牲にした街と人、五天のマインが暴れた駅前、鼠の神とのデンシャ内の戦闘など、住人に被害が及ぶ戦闘があったのにも関わらず、彼らは全く無関心のように感じた。
「彼らは神の魔法で、何が起きても平然とするように縛られてる。優しくて天才でなんでも出来るあたしは、そんな意味の分からないトウキョウの現状をぶち壊そうとしてるって訳よ!」
ブリッツの目的である神への反逆と、私達の目的である下界に帰る事は、途中まで利害が一致している。
神は強い。五天の連携に手も足も出なかった私は正直、戦力が欲しいと思った。
「でも、今私には武器が……」
「これだろ?」
ブリッツは半壊したパンドラボックスを私に渡してきた。
「あたしに協力して欲しいけど、まずはそいつを直して欲しい。フラム・カグツチの完治も優先しなきゃな」
ブリッツは手を叩く。すると、五天との戦闘時に現れたドレッドノートが再び姿を現した。しかし、鋼鉄の体には似合わない真っ白なエプロンを装備していた。
「ブリッツ様、フラム・カグツチ様のバイタルは安定してきました。スノウ・トウティ様もお目覚めのようですね、ご飯の用意が出来てますよ」
そう言ってドレッドノートは、お盆に乗せられた食事を運んできた。
「ま! まずは腹ごしらえからだな。腹が減っては何とやらだ!」
ブリッツはドレッドノートからお盆を受け取ると、ソファに座ってもぐもぐ食べ始めた。
「今日の昼食は、『白米、焼き鮭、青菜の和え物、豆腐の味噌汁』でございます。」
私はお盆を受け取りソファに座る。
下界では見た事も聞いたことも無いこの食べ物を、私は口に運ぶのを躊躇っていた。白いふっくらとした小さい穀物がいくつも入った椀、軽く焦げ目のついたオレンジ色の肉、緑色の野菜のようなもの、そして白い物が浮いている茶色い熱い汁。
「毒なんか入っちゃいないよ、さっさと食べな」
私は茶色い汁をすする。
「美味しい……」
スプーンを握り、私はオレンジ色の肉をすくって口に運ぶ。次に白い穀物を頬張り、緑色の野菜をつまむ。
「すごく美味しい」
「へへん! そうだろうそうだろう!」
自分が作った訳でもないのに、ブリッツはとても得意げに言う。
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