第5話 シティ

 1、2撃地面に向かって攻撃を叩き込んだ。しかし地面までもが白いせいで、傷ついているのかすら分からない。

 

「やっぱりダメか」

 

 フラムは再び腕を組んで考え込む。私はふと、さっきの神との戦いでの出来事を思い出していた。私には見えなかった神の攻撃がフラムには見えていた。

 

「フラム、周りに何が見える?」

 

 フラムは辺りを見回す素振りをする。闇雲に何かを視界に入れるような見方ではなく、しっかりと何かに焦点があっているかのような見方だった。

 

「会議室みたいな感じで、椅子とかテーブルがある。あと窓があって…、外には街がある。ここは建物の3、4階みたいだ」

 

 神は上位人になれば街が見えると言っていた。フラムがそれを見えているという事は、フラムはもう上位人になっているという事なのだろうか。

 

「フラム、建物の外に出て、人がいるなら下界への行き方を聞いてくれないか?」

 

 フラムはとても嫌そうな顔をした。

「まぁ期待はするな」


 


 フラムは聞き込みを終えて帰ってきた。その顔は心無しか元気が無く消耗していた。

 

「話しかけたら気味悪がられたり、物珍しいような視線も注がれちまったよ。でも、分かったことはちゃんとあるぜ」

 

 フラムが言うに、この場所は『トウキョウ』という場所らしい。トウキョウは人が多い土地で、色々な場所に行ける『デンシャ』という機械が発達していると言う。そのデンシャに乗り、『コッカイギジドー』の地下13階にある『下層転移門』に入れれば下界に戻れると言われたそうだ。

 

「よし、行こうフラム」

「待て待て、ちょいと問題があるらしい」

 

 フラムは続ける。

「このトウキョウには、神がまだいるらしい。というか、神という組織と言った方が良いか。下界で死んだ人間を連れてきて上界の上位人にする組織だ。しかも、そのコッカイギジドーが神の穴蔵らしいんだ」

 

 つまり、下界に帰るには神を殺しまくって突き進まなきゃ行けない。下界の人間である私は神の攻撃は見えないし、武器もないフラムは言わずもがな太刀打ちは不可能だろう。

 

「それともうひとつ……」

 フラムは手を地面に向けた。

 

「オラァ!」

 直後、フラムの手から炎が出現し、白い地面に炎が立つ。近づいて触れようとすると、しっかりと熱があり、パチパチと音を立てていた。

 

「なんか、上位人は『魔法』が使えるらしい。でも人によって得意不得意があるみたいだ」


 ここで私は、先程からフラムへ持っていた疑問を投げかけた。

 

「待て待て、そうするとフラムは上位人になったってことか?」

 

 フラムは首を振る。そして服の袖をまくり、腕についている金属のような模様を見せてきた。

 

「これが付いてる奴は『半上位人』って呼ばれてるらしくてさ、この模様が体の半分を覆ったら完全に上位人になっちまうらしい」

 

 確かに神は顔半分が機械の様だった。となると体も半分金属のようになっているのだろう。

 私にはその半上位人の証が無い、つまり、まだ下界の人間のままというわけだ。

 

「なるほどな、フラムは上界で生き返る代わりに半上位人になったってわけか」

 

 得体の知れないトウキョウの街と発達した機械の存在、神を名乗る組織とコッカイギジドー。見えない敵と街に一抹の不安を抱えつつも、私は妹を救うためにフラムとトウキョウ攻略を開始した。

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