第4話 リベレーション
フラムの声が聞こえた直後、すぐに変形させたパンドラボックスを構えたが、その重機関車に激突したかのような衝撃と圧倒的なパワーで意識が吹き飛びそうになった。
「何だ、そのデカい物は!」
ぶっ飛ばされた身体を立て直すため、デカく変形したパンドラボックスを地面に突き立てた。
「今回はコレか…」
太く、長く、大きな両刃、黒い刀身に赤いダイヤの刻印が施されたシンプルで無骨かつ扱いの難しい特大剣だった。
フラムは身体をよろめかせながら弱々しく立っていた。フラムの咄嗟の指示を聞くに、フラムには私には見えていない何かが見えているようだった。
「フラム、私には敵の攻撃が見えない。だから指示だけくれ」
私は特大剣を大きく構える。神はもはや言葉と言うには理解し難いような奇声を上げていた。
「正面だ!」
フラムの指示を聞き、私は刀身の腹を抑えて攻撃を受け止める。先程同様、重く響くような衝撃が特大剣を通して私に伝わってくる。
「右!」
私は大きく踏み込んで、大振りのカウンターを敵の攻撃方向へ放つ。
ギャアァァァァ!!!―――
手応えは十分あった。なにか大きな肉塊をぶった斬ったような感触があり、剣の刃の根元から切っ先まで広い範囲にカウンターが成功した。
続けざまに、私は神に近づくために地面を蹴る。特大剣を引きずりながら、その鬼面に一撃入れようと特大剣の届く場所まで走った。
「左右から来るぞ!」
私は特大剣を両手で握って大きく飛び上がった。私のいた所からは、肉と肉がぶつかったような気味の悪い鈍い音がした。
空に飛び上がったおかげで、神のいる場所まで大きく前進した。特大剣が届く。
「『ブレイバーダウン』!」
体重と重力を乗せ、高速で特大剣を叩きつける。空を斬ると真空が生まれ、肉を斬れば切断面が見えない程に綺麗な斬撃を浴びせる。
「グギグギグ…」
神は目をギョロギョロさせ、神の見えざる手は地面に叩きつけられている。神の顔半分の金属からは赤い筋が引いていき、元の顔に戻っていった。
「スノウ、ダメだ!」
フラムの声でハッと気を持ち直した。私は今、神の顔を無意識に触ろうとしていた。意識ははっきりしていて、私はずっと神を見ていた。なのに、フラム言われるまで神に触ろうとしているのに気が付かなかった。
しかし手は止まらない。
私の手は神の顔に触れた。
いままでごくろう
もうやすむがいい
うぬはけんとうした
とうぜんかれもだ
わたしからのほうびをあたえる
しろきにんげんよ
ただし
にんげんをころせ
いぎはきかぬ
るけいにんとしてのせきむをはたすのだ
大きな機械の獣に爛れた悪魔、人間の形をした何かなど、様々な情景と共に神からの言葉が頭に流れてきた。神からの褒美を得るには人を殺す、そして流刑人としての責務という謎の言葉。一度に考えるには多すぎる情報だった。
「スノウ?」
フラムが私を揺さぶる。彼の青い瞳が私を刺す。
「すまない、神に触ったら色々流れ込んできて……」
「それ、俺も見た。色んな景色と一緒になんか言われたやつだろ? しかし、どうやってここから帰ろうか……」
私とフラムは腕を組んでしばらく考えた。この真っ白な空間から抜け出す方法を。
「確か、神はここを上界つってたよな…」
フラムは何か思いついたような顔をして私を見た。
「なぁスノウ、ちょっと地面思いっきり叩いてみてくれないか?」
上界の地面を叩けば下界に通じてる、と言いたいのだろうか。バカバカしく子供の発想だと思いつつも、何かのヒントになると思い、私は特大剣を地面に思い切り叩きつけた。
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