第3話 アングリーホワイト
「やぁ」
声のした方を見ると、さっきまでいなかった男が立っていた。男は黒いスーツを着ているが、両腕が無かった。おまけに顔の半分は金属のような見た目をしていて、髪の毛は金髪のオールバックだった。
男は私に近づき、全身を舐めるように見る。足の先から頭のてっぺんまで、凝視と言うよりもはや視姦言うべき行為だった。
「なに、あんた? ここはどこなの」
男は私の目を見ると、嬉しそうに答えた。
「僕は『上界』の神様だよ。この世界は3つの層に分かれていて、君達が居たのは1番下の『下界』。今いるこの場所は、下界の上にある『上界』の1部さ」
自分を神と名乗る男に、いきなり世界がどうのこうの言われても信じられるわけがない。そう割り切ろうにも、今見えているこの真っ白な世界が現実なのか夢なのか分からない以上自分では判断出来なかった。
「疑ってるね? なら、試しに彼も連れてこようか」
神はそう言うと、一瞬の間を置いて消える。比喩やものの例えではなく、急に目の前から姿を消した。
私が2、3回の瞬きを終えると、神と共に横たわっているフラムが出現した。
「フラム!」
先程まであったフラムの外傷は綺麗さっばり消えていて、寝息を立てて寝ているようだった。
「彼は下界で死んだ。死んだ人間は次に上界に運ばれて、下界で転生するか、上界で『上位人』になるか選ぶんだ。今君には真っ白で何も無いように見えるここも、上位人になれば街の景色が見えるはずさ」
神は寝転んでるフラムをつつく。
フラムが下界で死んでここに来たという事は、自分も既に下界では死んでいるのだろうか、と私は考えを巡らせていた。
「まぁまぁ、とりあえず上位人になっとかない? 彼もきっとそう言うさ」
神は私に上位人になる事を促してくる。しかし、私には妹を放っておく事なんて出来なかった。
「私はやる事がある。彼を助けてくれると言うのならありがたいけど、上位人にはならない」
神は明るいぴょこぴょこした雰囲気だったが、上位人にならないと言った途端に態度が変わった。オールバックが崩れ、顔の金属には赤い筋が通り、見えていない両腕からメキメキと音がする。
「君、神様に逆らうの? おかしくない?」
顔の赤い筋はみるみる増え、鬼の形相のように禍々しく彩られる。
私はパンドラボックスを振り、神の怒りを買うことを決意した。
「おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい」
神は狂ったように言葉を連呼し、まさに鬼と呼ぶに相応しい顔つきになった。
メキメキ――
肉と骨が捻れるような鈍い音が辺りを覆い、神はニヤリと笑った。
「ここで死ねばもう君は消えちゃうよ」
明るい声とはうって変わって、合成音声のような不気味な声で神は話しかけてくる。
プシューッ―――
パンドラボックスの変形が終わり、神に飛びつこうとした瞬間。
「右だスノウ!!」
直後、強烈な鈍痛が右側面から直撃した。
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