第50話 ブラスティング

 レックスは人差し指の中指、薬指と小指をそれぞれまとめて3本の指へと形を変える。


「『王者神指おうじゃのかみざし』!」


 3本指になった両手を空へ振る。


「スノウ! ガードするんだ!」


 フラムは私に叫ぶ。

 その直後、フラムの腕や足から血しぶきが吹く。彼は何かを避けたり弾いたりするような動きを見せているが、私には何が起きているか分からなかった。とにかく、ガンブレードを前に構えてガードの姿勢を行う。


 ガギイィィン――!


 強い衝撃がガンブレードへと伝わり、私は攻撃の重さに思わず仰け反りそうになった。


「へばるなよフラム! 『王者神尾振おうじゃのかみおふり』!」


 レックスはフラムへと近づき脚を振り下ろす。フラムは腕をクロスさせ、上から振り下ろされるレックスの脚を受け止めようとする。


 バチイィ――!


 まるで肉同士がぶつかったかのような音が響いた。


「っ――! フラム!」


 フラムは確かにレックスの脚を受け止めていた。しかし、何故か背中の服が破けていて、背の傷の上から逆三角形の赤い痕が付いていた。


 最初に手斧で見せた歯型の攻撃、恐竜の指を模した手から出た見えない攻撃、脚が当たっていない場所からの攻撃。レックスの技はまるで、見えない恐竜が攻撃しているかのような物が多い。


 この世界には魔法がある。ひょっとすればレックスの魔法は、自分の攻撃に風圧で恐竜のパワーを乗せるものなのかもしれない。


「フラム! ヤツの魔法で攻撃の風圧が強力になってる!」


 フラムは片膝を付きながらもレックスへ反撃し、彼らは一時距離を開けた。


「女ァ! てめぇうるせぇぞ。こいつとでも遊んでろ、『空神からがみ』」


 レックスは歯をガチガチと鳴らし、距離のある私に向けてラリアットを行った。


 私はガンブレードを構えレックスからの攻撃に備えた。


「クウ!」


 ラリアットの風圧が人型へと変わっていき、私の眼前でラリアットをぶちかましてきた。

 人型のソレはレックスのような風貌で、しっかりと攻撃の衝撃が武器へ伝わってきた。


 フラムは私の方を振り返ったが、私の顔を見たあと頷いてレックスの方を再び見る。

 その時の私は、任せろと言わんばかりの顔をしていたのだと思う。

 

 当然、命の危険があって怖かった。本当なら、逃げ出したいと思った。しかし、ここでスノウは逃げ出さない。

 スノウならここで、きっとこう言うだろう。


「フラムはそっちに集中しろ、私ならもう平気だ」


 ガキィィン――ッ!

  ギリギリギリ―――

 

 手に汗とガンブレードを握りしめ、レックスの分身の重い攻撃を受けきり、鍔迫り合いへと持ち込む。


(スノウの使ってた技って私にも出来るのかな……。アレはきっと、下界で熟練されたスノウだから出来たもののはず。中身が私でも、気持ちで何とかなるかもしれない――!!)


 私はレックスの分身の腕を振り払い、グリッに付いているトリガーに指をかけて叫んだ。


「『ブラスティングダウン』!」

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