beat down
mochi
第1章 until you die
第1話 プレリュード
揺れる車内で私は考えていた。どうしたら妹を助けられるだろう、あの時私が妹を引き止めていれば。妹にあんな事言わなければ、と。
「これから避難所に入る。検査をさせてもらうぞ」
政府の兵士が列車内の乗客を1人ずつ検査し始めた。乗客は、この列車専用のローブを羽織って乗車している。兵士はローブの内側に怪しい物を持っていないかのチェックをしている。
この列車は、外界の獣に住む場所を追われた人達が、政府の避難所に向かうための列車だ。しかし、避難所に着いた人間は、友人や家族とは一生会えないと言われている。その避難所に私の妹はいる。
「おい、そこの姉ちゃん」
隣に座っていた黒い長髪の男が話しかけてきた。
「そんな顔してちゃ怖いぜ? 何考えてるか知らんけど、妙な事は考えるなよ」
私は長髪の男を無視し、段々と近づいてくる政府の兵士を待っていた。
コツコツコツ――
「次はお前だ。立て」
私は、目の前に来た政府の兵士に従って席を立つ。今私のいる車両は4両車で、この車内にいる兵士は私の目の前にいる奴と、私の向かいで検査をしている2人だけだ。
「すまない」
私は目の前の兵士の武器を取上げ、両足と両腕に銃弾を放った。車内は大混乱になり、向かいで検査をしていた兵士がこちらに武器を向ける。
「動くな!」
私はすかさず兵士の胴に銃弾を放つ。被弾した兵士は仰け反り、向かいの席の乗客の上に倒れる。
キャー!!―――
乗客の悲鳴と不安な声で、車内は阿鼻叫喚となる。車内のランプが赤く光り、甲高い警報とともに列車は緊急停止を始めた。
「姉ちゃん、あんた凄いな。何かやってたのか?」
隣に座っていた長髪の男が、向かいの兵士から武器を取上げていた。
「お前も早く逃げろ。もうすぐドローンが来る」
長髪の男は武器のチェックを終えると、専用ローブを脱ぐ。青い瞳に傷のある顔が特徴で、黒いコートを羽織っていた。
「姉ちゃん、俺は『フラム』ってんだ、よろしくな。姉ちゃんはなんてんだ?」
フラムは私と一緒に反逆を起こそうとしている。一般人を巻き込む訳にはいかないと思い、フラムから武器を奪おうとした。その時。
「姉ちゃん、気持ちはありがたいが、俺も避難所に用がある。一時共闘と行こうじゃねえか」
フラムは私に銃を向けてきた。
「私は『スノウ』だ。」
私はローブを脱ぎ捨て、唯一列車に出入りできる先頭車両に向かって走った。
「スノウ、よろしくな!」
フラムも私に続いて走る。
隣の3両車に着くと、赤いランプと緊急停止の騒ぎで、兵士の数は2人から4人になっていた。
「居たぞ! 撃ち殺せ!」
兵士は他の乗客もお構い無しに銃をぶっ放ってきた。車両には銃弾を遮る物はなく、大量の銃弾が真っ直ぐこちらに向かってきた。
私は僅かにでも被弾面積を減らそうと、姿勢を低くして反撃しようとしたその時。
「うぐっ……」
フラムは私の前に立つと、放たれた弾丸を全て受ける。フラムは文字通り蜂の巣になり、見るも無惨な形になってしまった。
「1人残ってるぞ! 殺せ!」
兵士は撃ち尽くした銃の弾を補充している。私は考えるよりも先に動いた。
兵士の銃撃に巻き込まれてくたばった乗客を弾除けにし、その脇から兵士に向かって銃を放った。
「ぐはっ!」「うわぁ!」「ぐぇっ……」
私の放った弾丸に当たり、3人の兵士が崩れる。弾除けに使った乗客は、もはや流血していない部分を探す方が難しい程に傷だらけだった。
「貴様!」
残った兵士はナイフを構える。私は弾除けを兵士に投げつけ、その影に隠れながら兵士の懐に入った。
ダン―――
私の後方から1発の銃声が聞こえた。
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