第4話 ダンジョン攻略2

『ギャッギャッ、ギャッギャッ』



 不気味な笑い声をあげるゴブリンたち。


 俺は転げながらも、ゴブリンたちから距離をとる。

レベルがあがったせいか、痛みもそこまでじゃない。



名前:ヤマダ タケシ

種族:人間

性別:男

ジョブ:冒険者

レベル:3

HP:41/45

MP:27

STR:9

VIT:7

INT:8

DEX:9

AGI:5

ストックHP:10



 思ったよりも、HPが全然減っていない。

それどころか、体が軽い気さえがする。これがステータス上昇の恩恵なのだろうか。


 立ち上がりながら、腰に下げていた手斧を持つ。

先ほどの一角豚とは違い、人型のモンスター。


 それに対して、手斧を切りつけるのは少し抵抗があるな……。



『ギャッギャッ、ギャッギャッ』



 ……と、思ったけど。あそこまで化け物してくれているから大丈夫そうだ。

もう少し人間に近かったらヤバかったかもしれない。



『ウグゥッ、ウウウッウウウッ』



 唸り声をあげて、迫ってくるゴブリンたち。


 覚悟を決めて、先頭のゴブリンに向かって手斧を振りあげ、



 スキル【フルスイング】を発動させる。



 少しくらいは、ラグがあると思っていたけれど。


 スキルに意識を集中させるだけで、思いの他スムーズに発動した。


 手斧を持つ手が淡く輝く。力が漲ってくるのがわかった。


 迷っていれば、きっと俺がやられる。


 ――全力で手斧を振り切る。


 ズバッアアッッッッッ。


 ゴブリンの首が、青い血飛沫をあげて宙を舞う。



『ウギャッ? ギャギャッ?』



 飛んだ仲間の首を見て、ゴブリンたちの動きが止まった。


 続けさま、右側にいたゴブリンに向かって二度目の【フルスイング】を発動させる。


 振り切った手斧が、いとも容易く胴を切り裂いた。



『ギュアアアアアッッ』



 ひどい悪臭を放ちながら、こぼれだす内臓。

落ちた内臓をかき集めようとうずくまり、そのまま動かなくなった。


 それを見て、残ったゴブリンは完全にパニック状態だ。


 MPを確認すると、 MP:7/27となっている。

今のレベルだと、【フルスイング】は二回までが限度のようだ。


 俺はパニック状態になっているゴブリンに近づき手斧で切りつける。


 しかし、スキルが発動していないせいか、切りつけた傷は浅い。

何度も、何度も、必死で手斧を振り続ける。


 ビチャ、ビチャと青い血が体に飛びかかった。


 それを気にしている余裕などない。


 ゴブリンも抵抗を見せるが、すでに血を失い過ぎているからか、ダメージを受けるほどの攻撃はできないようだ。振られる棒が軽い。


 それを左手で受けながら、斧を振るう手を休めない。


 手斧から青い血が滴り落ちる。


 周囲を確認、ゴブリンたちはもう動かない。


 ――いや、まだだ。


 今さっき、油断をして背後から攻撃を受けたばかりだ。

ここはダンジョン。慎重に慎重を重ねなければ、俺みたいな素人はきっと生き残れない。


 ステータスを表示させて確認する。


 よし、三体ともにHPは0だ。



『 経験値取得にボーナスがつきます。87の経験値を獲得しました。 』



 経験値取得のログが流れる。

こうして、ダンジョンでの二回目となる戦闘は終わった。


 スキルを取っていなかったら、ヤバかったかもしれない。



 その後、二度ほどゴブリンに出会いながらも、ダンジョンの奥へと進んだ。

6体目となるゴブリンを倒し終わったとき、レベルアップのログが流れた。



『 レベルアップ。スキルポイント5を獲得しました。 』



 今回は前回のように背後から、奇襲攻撃を受けないように壁に背をつけて、スキル習得することにした。



取得可能スキル一覧: 消費スキルポイント


 ・火属性魔法Lv1: 5

 ・土属性魔法Lv1: 5

 ・風属性魔法Lv1: 5

 ・水属性魔法Lv1: 5

 ・戦士の雄叫び: 10

 ・ステータスアップLv1: 10


 取得したスキル表示がなくなった代わりに、属性魔法が増えたみたいだ。

今回は絶対に魔法をとるぞ。

 

 さっそく手に入れた5ポイントを使って、火属性魔法を取得した。

理由は、俺の中二心がそう囁いたからだ。


 だって、カッコイイだろ? 火の魔法は。



『 火属性魔法Lv1を取得しました 』



名前:ヤマダ タケシ

種族:人間

性別:男

ジョブ:冒険者

レベル:4

HP:55

MP:34

STR:11

VIT:9

INT:10

DEX:10

AGI:7

ストックHP:10

スキルポイント:0


アクティブ:スキル 

HPストック:LvMax

フルスイング:Lv1

火属性魔法:Lv1


パッシブ:スキル

アイテムパック:LvMax

マップ:LvMax

言語:LvMax



 少しづつだが、確実に強くなっている。


 このダンジョンは無理ゲーではない。

きっとこのまま油断せずにいけば、攻略できるハズだ。


 もう一度、頬を叩いて気合を入れ直す。


 移動を始める前に、火属性魔法を発動させて確認。

ぶっつけ本番で使うほど、危ないものはないからな。


 MP5を消費して、拳サイズのファイアーボールが生まれた。


 自分が生みだした魔法を見て、感動のあまり震える。

本当に使ってみたかったのよ、魔法を。


 しかし、これどうやって動かせばいいんだ。まさか、手に持って投げるわけにもいかないよな。


 ――動け、動け。


 そう念じていると、ファイアーボールは勢いをあげて壁に向かって動きだす。

着弾したファイアーボールは、数倍の大きさになって燃えあがった。


 おお、カッコイイ。


 これだ、これ。俺が求めていた魔法がそこにあった。

ついに、俺も魔法使いになってしまった。


 まだ、ファイアーボールしか使えないけど、魔法使いには違いないはず。

俄然、ヤル気が沸いてきたわ。




 剥きだしの壁が続く、通路をひたすら進む。

すると、今まで変り映えのしなかった景色に変化が生まれた。


 下へと続く、石造りの階段だ。


 光源がないのか、暗くて先が見えない。


 発炎筒をアイテムパックから取りだして、投げ込む。

発火した発炎筒が、照らすしだす階段をゆっくりと降りる。


 ビルで言えば、三、四階くらいは降っただろうか。

階段がなくなり、そこには石畳がどこまでも広がっていた。


 突然、差し込んだ光に目を細める。


 まるで、野外に出たような明るく広い空間。

所々に植物が育っており、欧州あたりの庭園に似た場所だ。


 ひょっとして、外に出てしまったのか。


 マップで確認すると、今まで通ってきた通路が表示されている。

その先は表示されていない。


 つまり、まだダンジョンの中だ。

文明を感じる景色に、毒気を抜かれ油断するところだった。



「あの、すみません……」



 突然、かけられた声は、


 とてもダンジョンに似つかわしくない、若い女性のものだった。

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