第16話  冒険者ギルドの反乱

 その二階の窓から体をのりだして叫ぶハゲマッチョ。


 冒険者ギルドで反乱が起きたせいで、野次馬達もヒートアップしている。

ハゲマッチョに同調する者、ギルドの業務が停止したことに不満を漏らす者と反応は様々だ。


 ローズからのお礼が貰えなくなったのは、仕方ないがこれ以上関わっていても、

時間ばかりとられてしまう予感がヒシヒシと感じる。



「ローズさん、ローズさん」



 やまださんから、ローズさんへお問いかけ。



「な、なにかしら? もしかして、あなたがアレを止める気じゃ……」



「いえ、ここは一つ。現地解散ってことで」



「げ、げんちかいさん……?」



「それでは、お元気で!」



 早々に、現場から戦線離脱。


 モブABCは、ローズ達に任せておけば。


 まぁ、なんとかなるだろ。


 異世界新参者の俺としては、冒険者ギルドの反乱よりも、腹の虫を治めるほうがよっぽど大事だ。


 先ほどから、お腹の虫が鳴りっぱなしである。

よくよく考えれば、朝から何も食べていない。


 早々にスライムさんの魔石を換金して、異世界料理を堪能しなくては。





 

 アッチへいったり、コッチへいったり、街の大通りを歩く。

その様子はまるでお上さん。


 しかし、どこで魔石を換金すればいいのだろう。

魔石買い取ります、なんて看板どこにもない。


 これは、困ったぞ。



「クリスティーナ、魔石ってどこで換金できるのかな?」



 ここは一つ、リュックのクリスティーナさんに聞いてみよう。



「わたしも、実際には買い取ってもらったことがないので……お役に立てずにすみません」



「謝らなくて大丈夫だよ、一緒に探そう」



「はいっ」



 やみくもに探してみても、見つかる気配がなく。

ここはやはり、第一村人に聞いてみるのが一番だろ。


 どれに……しようかな……っと。


 よし、あの裕福そうな商人の男に決めた。



「あの、すみません」



 かくかくシカジカと、聞いてみる。



「ああ、魔石か。本来なら冒険者ギルドで買い取ってもらうのが一番なんだが。今は騒ぎがおきているからなぁ」



「そうなんです、それで困っていて」



「なら、アリス魔法商店がいいんじゃないかな。あそこは良心的と聞いているよ」



 なるほど、それは良い事を聞いた。


 第一村人にお礼を言い、教えてもらった『アリス魔法商店』へと向かう。


 確か、大通りの一本裏には入ってと、


 あった、あった。アレかな。


 確かに、掲げられた看板には『アリス魔法商店』の文字がしっかりと書いてある。


 冒険者ギルドと比べると、かなり小さい木造建築。

しかし、小奇麗に整えられたその造りは、なかなか趣が良いではないか。


 さっそく木製のドアを開けると、カランカランと小気味よいドアベルの音が鳴った。


 中に入ってみると、エスニックな香りが鼻につく。

それに怪しげな壷や、宝石をあしらった杖、はたまた藁のような素材で作られた人形だったりと色彩の商品が所狭しと陳列されていた。



「いらっしゃいませ」



 出迎えてくれたのは、小学生くらいの女の子。


 お店のお手伝いでもしているのかな。



「お嬢ちゃん、魔石の買取をしてもいたいのだけど。店主さんはいないかな?」



 良い子にはあとでアメちゃんでもあげよう。

たしか、アイテムパックに入っていたはずだ。



「コホンッ、私が店主です。こう見えても、102歳なんです」



 ……マジかよ。


 今年一番のビックリだわ。ちなみに二番目は五十過ぎの叔父さんが突然、女装をはじめたこと。


「これからは、よしえって呼んでね」と、言った叔父さんの顔がホラーだったわ。

今でもあの笑顔はトラウマになっている。



 さて、場所は店舗の奥にあるカウンターに移して。

スライムさんの魔石を査定してもらうことに。


 アイテムパックから無造作に取り出すと、店主さんが驚き顔に。



「それは……空間魔法ですか?」



「ええ、そんなところです」



「その年で、空間魔法が使えるなんてすごいですね……」



「そうなんですか?」



「……滅多にいないと思いますよ」



 小学生が店主をやっているほうが、やまださん的には驚きだったけどな。


 いや、102歳だっけか。


 色々と反則だろ。


 店主さんがおもむろに、ルーペのようなもので魔石を覗く。


 すると、どうだプルプルと震えだしたではないか。


 おいおい、今度はなによ。



「こ、これは……もしかして、スライムの魔石ですか?」



 もしかして、高額査定きちゃったのではないだろうか。




 

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