第17話 冒険者ギルドの反乱2
「こ、これは……もしかして、スライムの魔石ですか?」
魔石を持つ、店主さんの華奢な手がワナワナと震える。
よくみれば、店主さん。
耳が長いな。これはもしかして、エルフだったりするのだろうか。
しかし、イキナリ種族を聞いたりするのってどうなんだろうな。
「よく、おわかりで」
などと、ハードボイルドに答えてみたけど。魔石の違いなどこれっぽちもわからない。
果たして、お値段は如何に。
「どこで、これを?」
「ダンジョンで手に入れました。実は、それだけではなく、まだあって……」
アイテムパックから、残りの魔石を取り出す。
ガラガラと、カウンターに置いてみれば魔石の山。
それもそのはず、登山用リュック一杯集めたからな。
スライムを潰す作業よりも魔石を拾いまわる方が大変だった。
「お、おおおおおおおおおおおおおおおっ」
どうしよう……店主さんが大変だ。壊れてしまった。
もっと小出しにするべきだったか。
「だ、大丈夫ですか?」
「はぁっ、はぁっ……取り乱して、すみません。これほどの量は今まで見た事がなくて……」
「それは、驚かせてしまってすみません」
「いえ、勝手に取り乱したのは私ですので……。それで、買取金額なのですが。魔石一個に対して大金貨三枚になります」
スライムさんの魔石は、大金貨三枚になるらしい。
うん、さっぱりだ。
ただ、金貨と聞いて。それなりの金額だということはわかる。
「実は自分、異国から来たばかりで……よければ、この国の通貨ついて教えてもらえませんか?」
「そうだったんですね」
店主さんに教えてもらうこと、しばらく。
なるほど、わかったぞ。
この国に、流通している通貨の種類は四つ。
銅貨、銀貨、金貨。大金貨とあるらしい。
ざっくりいえば、銅貨で100円、銀貨1000円、金貨で10,000円の価値だ。
で、大金貨はというと、金貨の十倍。
つまり、十万円の価値があるみたいだ。
それが、三枚。
スライムさんの魔石一個で三十万。
マジかよ……。
スライムさん、やばい。マジやばい。
やまださんは明日からスライムハンターとして生きていくよ。
「教えて頂き、ありがとうございます」
「しかし、ウチではこれだけの数は……とてもではありませんが、買いきれません」
見てみれば、二百個はありそうだ。
金額にして、六千万。
安い宿であれば、銀貨一枚で泊まれることを考えれば。
この小さな商店にはさすがに、無茶な金額である。
「そうですか。では、どこに行けば買い取ってもらえるのでしょうか?」
「冒険者ギルドであれば、可能かと思います」
やはり、冒険者ギルドに買い取ってもらうしかないようだ。
「あの、もしよろしければ。少しだけでも売ってもらえないでしょうか?」
そう言う店主さんに、魔石を二個ほど売って。
大金貨六枚をゲットした。
無一文からの、六十万を手にして懐が暖かい。
ついでに、美味しいお店についても教えてもらった。
そのお礼として、アイテムパックからアメちゃんをいくつか出してお渡しする。
「こっ、これは?」
めずらしそうに、アメちゃんを持つ店主さん。
「それは砂糖菓子です、口の中に入れてコロコロと舐めると美味しいですよ」
「そんな貴重なものいいのですか?」
嬉しそうにほっぺを、プニプニとさせた店主さんかわいい。
異世界でも、女性は甘いものが好きらしい。
「ええ、色々と教えてもらったお礼です」
アメちゃんで、ここまで喜んでもらえるとは思わなかった。
また今度、なにか持っていこう。
ほっこりした気分のまま店主さんに見送られて、ご飯屋さんへと向かう。
お目当ての場所は冒険者ギルドのすぐ近くにあるらしい。
そろそろ例の反乱おさまっていないかな。まったくもって迷惑な話である。
しかし、遠回りしたからこそあの可愛い店主さんに出会えたのだから。まぁ、結果オーライなのかもしれない。
トコトコと歩いて来てみると、ギルド会館に詰め掛けた野次馬の数が増えている。
先ほどの、二倍以上になっているのじゃないだろうか。
それどころか、騒ぎが大きくなっている気がする。
その中心を見れば。
ああ、どうしたことか。腰に手を当てて仁王立ちしているローズさんの姿が。
それもよりによって、ギルド会館に向かって何か叫んでいるではないか。
「黒鷹のリーダー出て来なさい。この私が、相手するわっ!」
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