第8話 ダンジョン攻略4

「そ、それ……ゴーレムです」



 ゴーレムって、アレだよね。


 動く石像。知ってるよ、ゲームで見たことがあるもん。


 この物知りスケルトンさんめ。



 そういう事は、もっと早く言って……ぇぐおおおおおあああああああああっ!!!



 突如、動きだした右側のゴーレムは、


 外見ではおよそ、予想できない速さで俺を殴りつけた。


 その拳を全身で受け止めた俺は、ピンボールごとく吹き飛ぶ。


 五回転半のスピンをを決めたところでようやく止まった。



「ご、ご主人様あああっ!」



 クリスティーナの声が響く。


 全身粉砕骨折しても、おかしくない衝撃だった。


 俺がまだ小学生だった時分、軽トラに跳ねられたときの衝撃に似てる。


 地面に打ちつけられた俺は、二度ほど跳ねてようやく止った。


 残りHPは、どうだっ? 


 すばやく、自身のHPを表示させる。



 【HP:725/750】



 よし、まだ全然いけるぞ。

手足を動かして確認。大丈夫だ、どこも折れていない。



種族:ゴーレム

性別:男

レベル:12

HP:190

MP:0

STR:98

VIT:155

INT:0

DEX:35

AGI:57



 ゴーレムのステータスを表示させてみれば、

スライムさんがくれた経験値がなければ、一度退却も考えなければいけないレベル。


 しかし、大幅にレベルアップを遂げたレベルは今や37。

戦闘経験に乏しい俺でも、十分に圧倒できるハズだ。



「ご主人様っ、大丈夫ですか!?」



 心配そうな声をあげて、駆けつけようとするクリスティーナ。



「俺一人で、大丈夫だ。ここは、任せてくれ!」



 手でクリスティーナを制して叫ぶ。



「ご、ご主人様っ……」



 今のセリフは、決まった気がする。

ずっと、言ってみたかったセリフの一つだ。


 惜しむべくは、言った相手がスケルトンだということ。


 できれば、美少女がよかった。


 しかし、今は余計なことを考えている暇はない。


 目の前のゴーレムに集中しなければ。


 立ち上がり、転がったバット拾う。


 バットを構えながら、ゴーレムにゆっくりと近づく。

距離をとって、わかったことがある。


 このゴーレムは、近づかなければ攻撃をしてこないようだ。

もちろん近づかなければ、当然その先にある出口は通れない。



 結果は同じだが。射程範囲からはなれてしまえば、追撃がない分マシか。


 幸い動くのは、右側の一体・・だけだ。


 油断さえしなければ、きっと大丈夫。


 バットを握る手に力を込める。


 その時だった、


 左側に立つ、ゴーレムの目が赤く光る。


 ……マジかよっ。


 咄嗟に、ジャンプして回避。


 そこで俺は思った。人間が飛んだところで、たかが知れていると。

人の胴以上はあろう、ゴーレムの拳を避けれるものかと。


 しかし、結果はその予想を裏切って高く飛びあがった。


 どのくらいの高さというと、軽く三メートルは越えている。


 これが、レベル37の実力か。

完全に感覚と実力が乖離している。


 標的を失った、ゴーレムの動きが止まる。


 これならっ!


 落下しながら、バットを振り上げて。


 右側ゴーレムの頭に目がけて、振り落とす。


 バットがゴーレムの頭を捉えた。


 スキル『フルスイング』を発動させて、そのまま、打ち抜く。


 手に伝わる感触は、石を打ち抜いたような硬いものではなく。

まるで雪を砕いたような、柔らかなものだった。


 頭部を粉々にされたゴーレムは、そのまま動かなくなる。


 どうやら、頭部が弱点のようだ。


 アレ、なんて言ってけ……ゴーレムの頭部かどこだかにある文字を、一字消してとかいうやつだろう。


 残ったゴーレムに向き合う。


 すでに射程範囲内に入っていたのか、ゴーレムの予備動作は完了していた。

繰りだされる拳に向かって、『フルスイング』を発動させたバットを振る。


 バットにぶつかった、ゴーレムの拳が砕けた。


 足を踏ん張り、今度は頭だっ。


 レベルアップで生まれたMPの余力で、三度目の『フルスイング』を発動。


 拳を砕かれ、バランスを崩したゴーレムの頭部を砕く。



『経験値取得にボーナスがつきます。270の経験値を獲得しました。』


 ふう、無事に倒せたようだ。

レベルアップで得た力がこれほどのものとは、正直思わなかった。



「ごっ、 ご主人様あああっ。ご無事ですかあっ!」



 クリスティーナが抱きつく。


 その図は、さながら襲ってくるモンスター。


 完全に腰が引けてしまった。



「あ、ありがとう……」



「ご無事でなによりです。う、うううっ……」



 涙声を聞くに、本当に心配してくれていたようだ。

しかし、突然スケルトンに抱きつかれて、ビビッてしまうのは仕方ないよな。



 ゴーレムが守っていた門を通り、階段を下ると、


 その先に待っていたものは、真っ白な空間だった。


 唯一あるものは、中央に置かれた石碑だけだ。


 その石碑が光を宿す――



『始まりの洞窟ダンジョンRE、最深部へようこそ。』



 

 

 


 




 

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