第14話 パーティーメンバー
「さすが、ご主人様ですっ」
カタカタと骨を鳴らせて、駆け寄ってくるクリスティーナさんがちょっと怖い。
それをグッと堪えてハードボイルドに頷いてみせる。
倒れていたパーティーメンバーの回復は無事に終わったようだ。
地面に倒れていたのは、すでに過去のこと。
彼らも今は、元気に立ち上がっている。
回復魔法って、すげーな。
ゲームではお馴染みだけれど。その驚異的な効果を目の当たりにすると、ヤバイ副作用がないかと僅かばかり不安になってしまう。
「クリスティーナもご苦労様、回復魔法なんて使えたんだな」
スケルトンであるが、よくよく考えてみれば元聖女様だ。
回復魔法の一つ、使えたところでなんら不思議じゃない。
「いえ、スケルトンになってからは、魔法が一切使えなかったのですが……。あの白い部屋であらわれた輝く球体に触れてからは。少しだけですが、魔法が使えるようになりました」
「それって、呪いが少し解けたってことか?」
「私にも、わかりませんが。もし、そうなら嬉しいですっ」
スケルトンには、相変わらず表情なんてないが。
今はきっとカタカタと揺らしたその顔に、笑みを浮かべてるはず。
少しづつだけど、なんとなく感情の機微がわかってきた気がする。
「あの……助けて頂き、本当にありがとうございました」
そう言ったのは、金髪のイケメン。
悔しそうに、地面に倒れていた彼だ。
俺のいた世界であれば、モデルとかしているタイプ。
それもちょっと、チャラ目のやつ。
聞いてみれば、このイケメン、ローズの
「べつに、
などと、ローズは言っていたが。
それとなくローズを気遣うイケメンの感じが、ラブだよラブ。
許婚なんて空想上の生き物か何か、かと思っていたけど。
その幻獣を目のあたりにして、なんかこう色々と眩しい。
俺も、許婚がほしかった。
思春期を経てからの、お互いを意識し始める感じが最高だよな。
「助けて頂いて、ありがとうございます。……この恩は決して忘れません」
ペコリと頭を下げたのは、クレアと呼ばれていた少女。
短く揃えた、青い髪が印象的だ。
暴行未遂とはいえ、まだ時間がそう経っていないせいか。
表情は暗いが、それでも美しい顔立ちが見てとれた。
気になっていた顔の痣も、クリスティーナの回復魔法によって消えている。
傷が残らなくて、一安心といったところか。
他のメンバーに比べて、特に華奢な感じがする。
雰囲気的に見て、彼女は後衛か魔法職だろうな。
そして、パーティーメンバー最後の一人は、栗色の髪を後ろでまとめた剣士風の少女。
これまた、お礼の言葉を頂戴した。
しかし、前衛三人に後衛の魔法職一人という、何ともバランスの悪いパーティーだ。
回復職のヒーラーがいないとか、ケガとかデバフにかかったときにどうするんだよ。とか思わなくもない。
こちらの世界には、パーティーロールという概念がないのだろうか。
それとも単に俺が、ゲーム脳になっているのかもしれないけれど。
「あんたが、こんなに強いなんて意外だったわ」
うん、やまださんも最近知ったの。レベルってすごいね。
しかし、その様子から降下したと思われた好感度が回復した予感ビンビン。
あがったところで何があるわけじゃないが、さがるよりはマシだろう。
「ローズ、助けて頂いたのにそんな言い方してはダメだよ」
さりげなく入れるイケメンのフォローが、経験値の高さを伺える。
チャいとか言って、ごめんなさい。
……ダメだ。これ以上このパーティーを見ていると、何かが削れていく気がする。
鉄壁の紙装甲を誇るやまださんとしては、ここいらで早々に離脱せねば。
手遅れになってしまう前に。
「それじゃあ、俺達はここで」
この場を後にするべく、立ち去ろうとした時だ。
ローズにガッチリと、袖を掴まれてしまった。
その目つきは、獲物を狙うような感じ。
「な、なんでしょう……」
何かマズイことでも、してしまったのだろうか。
なにせ、異世界のマナーなどこれっぽちも知らない自分である。
些細なすれ違いが大きなトラブルに、なんてこともあり得るからな。
「まだ、お礼が出来ていないわっ」
――ああ、お礼ね。
お礼か……。
完全に忘れてしまっていたわ。
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