第47話

「へぇ、ここが鉱山の入口か」


 森の入口から移動して1時間30分程、魔物との戦闘もなく順調に進み、俺達は目的地である鉱山の入口に着いた。


 鉱山の入口は高さもそれなりだが横幅も広く、馬車は厳しいけど荷車なら2台並んでも十分余裕のある大きさになっていた。


 鉱山の入口前は馬車等がいくつも置けるような広さになっていて、今は3組程の冒険者パーティーが泊まり込みで活動してるのか、テントやら馬車がそれぞれ分かれて設営されている。

 それでもまだ設営のスペースに余裕があるくらいだ。


 もしここのスペースが空いてなくても多少時間は掛かるが、森の入口まで移動すればテントは設営できる。


 暗くなってるだろうから、警戒は必要になるけどね。


 俺達は既に準備はできていたので、俺は荷物とつるはしを背負い、槍を手に持ってる状態で鉱山へと入った。


 鉱山に入る時、冒険者からの視線を感じたけれど、それだけだった。何かあった時には向こうか、俺達が声を掛けることになるだろう。



 入口から入って周囲を見渡すと、坑道には魔道具と思われる照明が点々と奥まで続いていて、それなりに見えやすくなっていた。


「へぇ、入口の看板を読みましたけど、看板の内容と地図の表記通り、この坑道は照明があるんですね」

「入口から中部辺りまでしかないけどね。それと出口に繋がる道だとわかるように、というのもあるわ。地図を持たずに入る人もいるだろうから、道標にもなっているのよ」

「成程、ちなみに途中までしか照明がないのは、照明のない道の先は強い魔物がいるとわかるようにする為ですか?」

「それと低ランク冒険者が奥に行きすぎないよう注意の意味もあるみたいね。だから照明のない道の先は危険な場所だったり、深部へと続く道になってるそうよ」


 採掘できる場所まで移動しながらアイリス先輩にこの鉱山について聞いてるんだけど、こうして聞きながら実際に坑道を見てみないと把握できないね。


 そして鉱山に入ってから20分程で最初の採掘場所へと分岐してる場所に着いた。


 最初ということもあり、採掘場所がどうなっているか全員で確認する事になったので、練習も兼ねて俺が先行して様子を見に行った。



 先輩達にはゆっくり追ってきてもらい、俺は軽く身体強化を発動して、素早く静かに移動しながら周囲を確認しながら気配を探る。


 少し進むとその先から気配を感じたので、小走りからゆっくり移動に切り替えて曲がり角の近くまで行くと、その先からカサカサという音が複数聞こえた。


 気配を殺し、曲がり角からそっとその先を覗くと、その先にはロックアントが2体いて、その奥には鉱石らしき物が光って見える。


 この曲がり角の先が採掘場所になってるみたいだね。


 ロックアントはDランク相当の強さで、頭と体が岩並みの硬さとなっている。弱点は関節部分が細く脆いのが特徴だ。

 アント系で共通してるのはピンチになると近くにいる仲間を呼ぶことで、下手すると近くにいた仲間がどんどんやってきて長期戦になってしまう事もあるから注意が必要だ。


 ロックアントのいる周囲を確認したけど、通り穴らしき穴も見当たらなかったから、おそらく坑道の奥からこっちにやってきたんだと思う。


 俺は静かに来た道を戻り、先輩達と合流してロックアントを発見した事を伝えた。


「いつ奥にいるロックアントがこっちに来るかわからないので、気付かれてないうちに先に仕掛けて、速攻で撃破がいいと思います」

「途中で挟み撃ちされても困るし、通り穴がないならその方がいいわね…私が支援魔法をかけるから、ディーン君とライル君で倒してもらえる?」

「「わかりました」」


 アイリス先輩から支援魔法をかけてもらい、ディーン先輩と2人で曲がり角の前まで移動してその先を覗いた。まだこちらは気付かれてない。


「あー、確かにロックアントが2体いるね」

「俺が氷魔法で球を作って向こうに投げますので、それに反応したら2人で飛び出して後ろから1体ずつ倒しましょうか」

「いいね、それじゃあ僕は右、ライル君は左をお願いするよ」

「了解です。準備できたら球投げますね?」

「うん、いつでもいいよ」

「では、投げます」


 ディーン先輩も準備はいいみたいなので、俺は氷の球をロックアント達より奥へと山なりに投げた。


 カーーン、カラカラカラ…


 と、音がした方向にロックアント達が頭を向けた、今だ!

 俺とディーン先輩は同時に飛び出し、それぞれの目標に一気に近付き、俺は左後ろから槍で頭を切り落とし、ディーン先輩は右側から剣で頭を切り落とした。


 …うん、仲間を呼ばれずに一撃で倒せたみたいだ。


「…うまくいったみたいだね。ライル君、お疲れ様」

「ディーン先輩もお疲れ様です」


 作戦通りうまくいったから俺とディーン先輩は互いに顔を見合わせ笑顔になる。

 周囲を警戒してるけど、今のところは先輩達以外の気配は感じない。


 その後すぐにアイリス先輩達とも合流して、ロックアントは凍らせて袋に入れてから収納袋で回収。


 この場所には鉱石があったけど、俺達は奥へと進むので、今回は採掘せずに来た道を戻って更に奥へと進んだ。



 次の採掘場所へと分岐してる道には20分程で着き、また採掘場所を確認しようとしていたんだけど、採掘場所の方からガンガン音が聞こえてくるので、誰かが採掘してると判断して寄らずに奥へと進むことにした。


 30分程で着いた3ヶ所目は採掘場所へと分岐してる道が2つあり、片方からは採掘してるような音が聞こえてくるから、もう片方の音のしない反対方向へと進んだ。


 全員で少し進んでいくと気配を感じたので伝え、警戒しながら進んでいると、天井にバットの群れが見えた。


 バットはDランク相当の強さで、主に洞窟とかの場所にいて群れで行動している。

 主な攻撃は噛み付きからの吸血や爪で、飛びながら攻撃してくるのが厄介だ。それと洞窟によっては暗かったり、狭くて武器を振り回せない、なんてのもあるから地形にも注意しないといけない。


 今回は事前に気付いて発見したのもあり、動かれる前にミーア先輩の弓とアイリス先輩の土魔法、俺の光と闇魔法で先制攻撃して討ち漏らしせずに終了だ。


 バットも凍らせて袋に入れてから収納袋で回収した。


 採掘場所はいくつか鉱石があったので手分けして採掘する事になった、色的に鉄鉱石かな?

 採掘の仕方を先輩達から教わり、実際に自分でつるはしを使って採掘したよ。


 軽く身体強化を発動したままで使ったので、すんなり鉄鉱石を回収できた。先輩達も回収できたみたいなので、鉱石を収納袋に入れてから来た道を戻っていった。



 分岐してる場所まで戻ったらいい時間になってきたので、昼食も兼ねて休憩だ。


 ここから2つ先の分岐地点から討伐目標のアイアンゴーレムがいる場所になるから、気を引き締めていかないとね!

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