第41話

 朝の授業でほどよい疲れを感じながらも充実して学べたお昼過ぎ、次は回復魔法の授業だ。


 紺の修道服先生から最初に光と闇魔法の基礎を習った後、時間いっぱいまで光と闇属性の魔力の感覚を教え込まれた。


 紺の修道服先生曰く、光と闇魔法を使って慣れていくのもいいけど、俺の様にイメージで発動するタイプは身体全体に属性魔力を循環させて馴染ませるのがいいんだって。


 そして俺がよくやってる属性も込めた魔力操作の鍛練で、魔法の操作と制御の腕を上げるにはいいみたいだ。

 授業の終わりに実際やってるところを見せると、驚きながらも納得した表情で、継続していくよう言われたよ。


 あと、込める魔力量を増やして操作と制御の鍛練をするように言われたね。

 同格以上の相手や、相手に悟らせないようスムーズに切り替えられるのも大事だって。


 その鍛練方法もやってたけど、せっかくなのであまりやらない2倍以上魔力を込めた操作と制御もやってみるのもありかもしれない。



 そんなことを考えながら回復魔法の授業をやる教室で待っていると、先生2人と…あれ?また修道服を着た人が2人入ってきたよ?


 …あー、今回の選択授業の時間割では属性魔法と回復魔法の授業が朝と昼、どれも一緒になってたのは教会関係の人が先生をするからかな?


 入ってきた修道服の女性2人も自己紹介の時に教会から来たと言ってたから、ほぼ間違いないと思う。


 まぁ俺は教わることはないか、回復魔法に関してはまだヒールしか使えないしね。修道服先生はより高い難易度の回復魔法を教えるだろう。



 で、俺が今回習うのは毒や麻痺などの状態異常を回復させるキュア系の回復魔法だ。

 魔法名で唱えると、キュアポイズンとかになり、キュア◯◯で使っていくことになるね。


 座学の後、誰かが状態異常にならないと、という話になったから俺が立候補した。

 立候補する人がいなければ、先生は何かしら用意してたと思うし、そもそも状態異常にならないことが理想だが、シルフと再会するまでソロでの活動が多いだろうから、僅かでも耐性をつけておきたかったのもある。


 微毒・微睡眠の薬を飲んで、まずは自分で何度か唱えたら発動して解除。成功したらまた薬を飲んで次は他の生徒達も俺に唱えて解除する練習をした。


 どちらも15回ずつくらい繰り返してたら先生からストップを受けてしまったので、次は同じキュア系の練習をしてた生徒が2回ずつ薬を飲み、自分で解除するのと、他の生徒に解除してもらうのを繰り返していた。


 え、麻痺?俺は雷魔法で麻痺耐性ができちゃってるから、微麻痺の薬程度じゃ痺れず、麻痺にならなかったよ。

 そこは全員に驚かれたね。


 だから代わり?に薬を使わず俺が雷魔法で威力を抑えた球を出し、感電による麻痺の状態異常を解除する練習になった。


 俺はヒールで自分と他人を回復させることに慣れてきたからか、1度発動に成功したら、その後は失敗することなく発動できたよ。


 先生からは習得が早いと言われたね。


 魔物や動物で試してもよかったんだろうけど、この魔法を使う相手の殆どは人種だろうから、必要な場面でも焦らず使えるよう慣らしておく、というのもあるだろう。



 授業の終わりには残った薬に直接キュア系を掛け、薬に入ってる毒や麻痺などの成分を消すというのをやった。


 そういうのもできるの⁉︎と思ったが、実際試したら成功して薬の色が目に見えて変わったし、他の生徒達はかなり苦戦してたみたいだね。

 先生曰く、効果の高い状態異常の場合、1度唱えただけでは完全に消し切れなかったり、解除するのも難しくなるそうだ。


「微毒で例えると、その上の毒・猛毒となれば更に解除が難しくなっていきますから、まずは微毒や微睡眠を1回で解除できるようにしていきましょうね」


 というところで回復魔法の授業は終わった。




 次の日の昼過ぎからは無属性魔法の授業だ。朝は選択授業がなかったので、王都内の依頼を受けて時間を潰した。


 訓練場まで行くと既に先生が3人いて、どうやらグループ分けをしてるみたいだ。


 俺は身体強化とインパクトが使えるグループの場所に移動して待っていると、担当?する獣人の先生が声をかけてきた。


「ほう、その肩の線、冒険者として認められた証か。上級生か?」

「いえ、新入生ですよ。担任の先生から依頼を受けた数と稼いだ金額が一定以上だったみたいで、大丈夫だと判断されたって言われましたよ」


 俺と獣人の先生との会話を聞いてた生徒は驚きながら俺と俺の肩を交互に見てくる。


「新入生か…成程、お前さんがライルで合ってるか?」

「はい、そうですけど…何かありますか?」

「あぁ、無属性魔法がどれだけ使えるか確かめてからになるが、2回目以降の戦闘系の授業では、ライルのように実力の高い生徒には授業の難易度を上げてもいいように言われてるからな、楽しみにしとけ」


 獣人の先生はニヤリとした笑顔でそんなことを言ってきた。それで上達するならありだと思うよ?



 生徒が集まったら、最初は身体強化とインパクトがどれだけ使えるかの確認だ。

 どちらか不十分だと判断されれば身体強化かインパクトを習うグループに移動、逆に十分使えるレベルだと判断されたら次の段階のグループに移動か、そのグループに留まるのを選べるみたい。


 とは言っても、俺のいるグループが現段階で一番上のグループになるので、自身の持ってる技術や熟練度が高ければ、属性魔法の授業の時みたいに個別で教わったり、獣人の先生が言ってたように教わる内容が難しくなっていくだろう。


 で、俺がいるグループは獣人先生との手合わせして確かめることになった。人数が少なかったというのもあるし、獣人の先生と話した時に予感はしてたけど、身体を動かすのが好きなタイプだね。


 早めに終わらせようと思って前に出たけど俺の順番は最後と言われた…楽しみは最後にとっておきたいんだってさ。


 なので軽く身体強化を発動して準備をしながら手合わせを見る。


 獣人先生は後手に回り基本攻撃せず観察して、身体強化の練度にどれだけ能力が上がってるか、インパクトの威力や発動の早さに命中率を確かめてる感じだ。

 あえてインパクトを受けて威力を確認してたね。


 大体10分、長くても15分程度で手合わせを終わらせて結果を伝えてるね。


 いやぁ、よく見てるよこの先生。良い点悪い点、両方をしっかり伝えてくれるから、まだ不十分だと言われた生徒も納得して別のグループに移動してる。



 そして俺の番になったんだけど、獣人先生、最後普通に攻めてきたよ!

 始める前に確認してきたし、お互い使ったのも身体強化とインパクト、接近時のみ体術で対応だったけどね!


 獣人の先生は身体能力がかなり高かったよ。

 最後の方は常に動いてインパクトが当たらないようにしてたし、それに魔力操作も上手くて、インパクトが当たる直前にその当たる部分だけ魔力を集中させて受けるダメージを軽減してた。


 俺もできるけどこの技術、結界やウォール系とかの防御系魔法を持ってない人にはかなり重要で、範囲系魔法を回避できない時や火力の高い攻撃にも使えるから、前衛は覚えておいて損はないと思ってる。


 実際俺も使って防いでみせたら「ライルも使えるのか!」と、一瞬驚かれてそれから終わるまで攻撃が激しくなったよ…



「…すまん。楽しくて30分くらいやり合ってしまった」

「…ふぅ、ありがとうございました。俺も楽しかったので大丈夫ですよ」

「そう言ってもらえると助かる。身体強化は文句なしの合格だ。練度や咄嗟の対応、自身の能力を把握して使ってたな。インパクトも十分合格レベルだ。威力の調整、精度、しっかり俺の動きを見て使っていた…が、まだ使いこなしてる感じではなかったな」

「…先生の言う通り、インパクトはまだまだ練習中ですね。入学してから習得した魔法なので、実戦ではまだ使ってないんですよ」

「…成程な、高い威力のを受けてみたが、ライルのインパクトならもう少し鍛えればBランク相当の魔物にも十分通用する威力になるはずだ。これから実戦でも使って少しずつ慣らしていくといい」

「はい、ありがとうございました」


 獣人先生に礼をして俺は舞台から下りた。人が多いと思ったら、どうやら他のグループの人達も俺と獣人先生の手合わせを観戦してたみたいだね。


 その後は全員集まっていたのもあり、そのまま先生達が時間いっぱいまで解説や説明、次回からやることについて等の話をして、無属性魔法の授業は終わった。

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