第40話

 訓練場で遠征するメンバーと手合わせと打ち合わせをした次の日、朝は属性魔法の授業だ。


 属性魔法の授業が行われる広い教室に移動して入ると、上級生以上の人もいるみたいだね。空いている席に座って待っていると、先生が数人入ってきた。


 男性が2人と女性が2人で、前回より1人多いのか…って、1人の女性は修道服っぽいのを着てるよ…教会関係の人かな?


「よし、集まっているな。先に言っておくが、ここにいる生徒は前回属性魔法の授業を受けた生徒が集まっているから、最初にあった魔法の適性確認はないぞ。これから出席確認と各属性魔法を担当する先生を紹介する」


 男性の先生が前に出てそう言った。まぁ何度もやるような事じゃないしね、一応希望者は確かめさせてくれるみたいなので、今の状態や覚えたい属性魔法の適性を調べたい時とかに聞いて確かめればいいだろう。



 少し座学をしたら、教室から訓練場まで移動して、それから俺を含めた1割くらいの生徒は光と闇属性魔法の両方を担当しているという修道服っぽいのを着ている女性の先生の元へ集まった。


 …のはいいんだけど、その先生の隣にいる色違いで紺色の修道服っぽいのを着てる若い女性は補助の先生かな?


 んー…それにしては紺色の修道服っぽいのを着てる先生の方がかなり強い感じがするんだよな…と、思ってたら目が合ったので頭を下げておく。


 …俺を見て面白そうな相手を見つけた表情だったのは気のせいだと思いたい。


「はい、始める前に気になってる人もいると思うので話しておきますが、私と隣の方は教会から来ています。だから修道服を着ているんですよ」


 どうやら思っていた通り、教会の人だったみたいだね。

 診療所の応援依頼とかで助けられたりしてるから、教会側は得意とする光と闇魔法、そして回復魔法を教えるのに協力しているんだってさ。


 で、その中でも優秀な生徒を教会に勧誘して、教会所属の冒険者に…みたいな感じかな。いや、修道服先生はそこまで言ってないけどね。



 説明が終わり、本来の目的である光か闇魔法がどれだけ使えるか修道服先生に見せることになった。


 集まった生徒が光か闇魔法を見せた後にアドバイスを受けていき、最後に俺の順番、俺はどちらも練習してる光と闇魔法を唱え、同時に10発ずつ俺の周囲に同時展開して複数の的に当てる。

 習った初級魔法に入るボール系やアロー系の魔法なら、移動しながらでも1属性につき15発ずつなら同時展開して、すべて的に当てられるレベルまで上がったよ。


 ただ、得意な風・氷・雷と比べると数もそうだし、同じ魔力量を込めても威力は結構落ちるんだよな…それだけなら込める魔力量を増やせば解決すると思うけど…


 一応もう少し慣らしたら実戦でも使ってみる予定だ。俺の場合、まずは初級魔法がCランク相当の魔物に通用するレベルまでいけば合格かな。


 修道服先生の方を向くと、2人だけじゃなく他の生徒達も驚いた顔をしていた。


「先生、今の俺が安定して使えるレベルだとこのくらいになりますけど、Cランク相当の魔物相手だと威力とかどうですか?」

「…Cランク相当の魔物ですか…そうですね、魔力操作に制御は十分合格レベルですが、どちらも威力が不十分なので、もう少し魔力を込めた方がいいですね」

「…やっぱり魔力を込めないとダメですか…込める量を増やしてもう1回やってみてもいいですか?」

「はい、大丈夫ですよ」


 修道服先生からも威力不足を指摘された。使い勝手は落ちるけど相手に通用しなきゃ意味ないし、アドバイス通り魔力をいつもより多く込めて使ってみるか。


 俺の感覚で得意な3属性と同じ威力になりそうな魔力量を込めて、光と闇魔法を唱え、発動して的に当てる。

 的に当たった感じ、3属性とほぼ同じ威力にはなったけど…うーん、光と闇属性は使い慣れてないのか魔力消費量の多さが問題だな…


「…1回で修正しましたか…その威力ならCランク相当の魔物にも十分通用しますよ」

「ありがとうございます」


 修道服先生からは通用すると言ってもらえた。


 そういえば慣れや適性の高さによって威力や発動に必要な魔力量とかは変わるのだろうか?


 気になったので、丁度修道服先生の元に生徒も集まってるから聞いてみることにした。



 先に答えから言うと、そうだ。


 まずは適性、相性と言ってもいいそうで、あらゆる要素で影響が出るんだって。


 ◯その属性の適性が高い場合

 ・威力が上がりやすい

 ・通常より少ない魔力量でも使える

 ・発動が早くなりやすい

 ・制御がしやすくなる

 ・上級魔法など、難易度の高い魔法を習得できる可能性が上がる



 ◯その属性の適性が低かったり、ないという場合

 ・通常より威力が下がる

 ・魔力量の消費が通常よりも増えやすい

 ・発動に時間が掛かったり、発動しない

 ・制御しても不安定で、酷いと暴発

 ・上級魔法など、難易度の高い魔法は習得できない事がほとんど



 という感じだそうだ。こうして詳しく聞くと、想像より適性の有無や高さが影響してるのが分かるね。


 次に慣れについてだが、練習が大事なのは確かで、継続して少しづつ積み重ねていけば技術や効率が上がり、上記の適性が高い場合ならあらゆる要素の更なる向上、適性が低い場合であればマイナス部分が緩和されて通常の適性レベルに近くなっていく。

 という感じになることが多いそうだ。


 元々の適性が低くても、使いたい魔法ならしっかり練習を継続していけば、いつか普通に使えるようになるってことだね。



 で、俺が使ってる光と闇魔法なんだけど、修道服先生2人に先程の2回目に込めた魔力量を球にして見てもらうと、魔力操作と制御を褒められた。


 紺の修道服先生が言うには(はじめて喋った)光と闇属性の適性としては普通で、2回目に込めた魔力量は平均よりちょっと少なめだと言われたよ。

 おおよそだとしても分かるのは凄いな!


「なるほど、だから適性が高くて使い慣れてる属性魔法は込めた魔力量が少なくても十分威力を発揮できてたし、光と闇魔法は得意な属性魔法で慣らしてたから少ない魔力量でも発動はしたんですね」

「そういうことですね…って、もしかして、私たちから指摘されるまで得意な属性魔法の感覚で使ってたのですか?」


 紺の修道服先生が納得した表情から以外そうな表情に変わって聞いてきた。


「あ、はい、そうなりますね。この学校で光と闇属性の適性があると知るまでは、適性の高かった得意な属性しか使ってこなかったので」

「…気になりますね、その得意な属性魔法。見せてもらってもいいですか?」


 理由を話すと紺の修道服先生が興味深そうに聞いてきたけど、いいの?という視線を修道服先生の方に向けると、申し訳なさそうに頷いたので了承し、風属性だけを見せることにした。



 俺と紺の修道服先生の2人で的当ての場所まで移動する。俺だけ他の生徒達より練度が高いため、それに合わせて別々で教える…という名目で分かれることになった。


 1発に込める魔力量は2回目に見せたのと同じでという要望もあったから、それで風魔法を発動。30発を俺の周囲に展開してより多くの的を狙い、当たると2回目よりも大きな衝撃。


 うーん、やっぱ1発の威力が違うね!


「…想像以上に修練を積まれた風魔法でしたね。発動の早さ、魔法の制御、威力、どれも高水準で、しかもイメージによる発動とは、得意とする風魔法を使いこなしていますね」

「小さい頃から使ってる魔法ですからね。風魔法はそれなりに自信持ってますよ」


 紺の修道服先生は最初は驚きながらも微笑んでそう言ってくれた。満足してもらえたようだ。



「それじゃあ光と闇魔法を教える前に確認です。君はどこまで光と闇魔法を使えるようになりたいですか?」

「まずはCランク相当の魔物に通用するレベルまで、最終的にはBランク相当の魔物に通用するレベルには上げたいですね。だから属性魔法の授業は継続して選んで受けますよ」


 そう答えると、紺の修道服先生は最初に目が合った時みたいな面白そうな相手を見つけた表情になった。

 …気のせいじゃなかった!


「ふふふ、これは久しぶりに鍛えがいのある生徒が来ましたね。ここが冒険者学校なのと、光と闇属性の適性が普通なのは残念ですが、既にここまで魔法の基礎や基盤が整ってる子はなかなかいません。グレイシアにはお礼を言っておかないといけませんね」


 この人グレイシア先生と知り合いか!ここで担任だと言うと嫌な予感しかしないから、俺からは言わないでおこう…


 それから俺はお昼まで、紺の修道服先生から光と闇魔法についてみっちり教わる事になるのだった。

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