第39話

「それじゃあ、今日は大まかな予定を立てていきましょうか」


 アイリス先輩とクレア先輩と合流して全員揃った俺達は観客席に移動して席に座り、打ち合わせを始めた。


 予定を大まかにしか決められないのは仕方ないね。

 今の段階では俺達が受ける依頼がまだ決まっていない為、今出来るお互いの実力確認や連携の練習、集まる日を決めるというくらいだ。


 まずはお互いの時間割を確認した後、今日の打ち合わせで決まったのはこんな感じ。



 ◯学校が休みの日は急遽予定が入らない限り、基本全員で行動する。

 まぁこれは当然と言えば当然だね。主に連携と立ち回りの練習・確認になるだろう。あとは休みの中で最低でも1回は外で実戦して動きを確かめるのと、遠征前には買い出しをするくらいかな。



 ◯遠征先と依頼の内容が決まるまでは、休みの日以外の空いてる時間は自由行動。

 1週目と2週目、3週目半ば頃までの前半期間で、選択授業のない空き時間のことだね。俺のように生活費を稼がないといけなかったり、お互いの空き時間を確認したけど全員が揃う時間帯がなかった、というのが主な理由だ。


 だから前半は個人で行動するのも、時間の空いた者同士で行動するのもありということだね。



 ちなみにだけど、2回目に選んだ授業数は俺が1番少なかった。その分1回の授業を長い時間受けられるから、もちろんメリットはある。


 いい機会になので、選択授業について軽くおさらいしておこうか。


 選択授業は選んだ数が多いほど様々な授業を受けて学べるが、その分1つごとの受けられる時間が短くなってしまう。朝から昼の時間帯に受ける授業が2つなら半分になったりね。


 色んな技術や知識を得たいというならむしろ推薦する方法だ。卒業してからだと学べる機会は更に減るだろうからね。


 俺のように受ける授業を絞って短期間で高い技術に、詳しい知識を得ていくというのももちろんありだ。


 こちらは逆に1つの技術や知識を朝から昼、昼から夕方と長い時間で集中して学べるし、練習もできて考えられるのがいいね。


 まぁ向き不向きがあるし、どちらも良い点悪い点があるから、自分のやりたいこと、やってみたいことをするのが一番。それに限るね。



 選択授業のおさらいはこれくらいにして、打ち合わせの話に戻ると、遠征先と依頼が決まらないと調べに動くこともできないから、まずはこのパーティーでの活動に慣れないといけない。


 ということで、次は舞台に移動して手合わせだ、お互いの戦い方を見ていくことになる。



 手合わせは3対2で分かれて組み合わせを変えつつ戦ったよ。前衛3、後衛2だから前衛1と後衛2の3人対前衛2人とか、色々試せたね。


 結果からいうと俺は全勝、負けることはなかった。自分がやられたら仲間がより危険な状況になる、そう考えれば勝ちを譲るなんてことはまずしないよね。



 アイリス先輩は全体の観察と指示出しが上手かった。開始と同時に支援魔法で味方の強化を素早く行い、攻撃魔法で牽制と本命を分けて使ってきたよ。

 敵として戦った時も俺が接近したらしっかり自身に支援魔法をかけてからフレイルで対応してたし、対人戦は結構慣れてる感じだった。


 ただ予想外な動きにはちょっと弱いかな?前衛を跳び越えて接近した時は硬直したままになってたからね。



 クレア先輩もかなり対人戦慣れしてる感じだった。堅実で守りが堅く、広い範囲を見て後衛に近付けさせないよう立ち回っていた。

 特に盾の扱いが上手く、受け止め・受け流し・弾き・ぶつけてきたりと相手の攻撃や状況を見て対応を変えてたね。


 ただ良くも悪くもアイリス先輩優先で動くから、意識がアイリス先輩に向いてると、時々目の前の相手に集中しきれてないから隙になってたんだよね。



 ちなみにアイリス先輩とクレア先輩の連携はかなりのもので、クレア先輩が敵の動きを止めたところをそれに合わせて2人で同時に攻撃とかもやってきたよ。



 ディーン先輩は自己紹介の通り、速さを活かした立ち回りだった。後衛からの攻撃を自身に絞らせないよう動き回り、だからといって無視すれば接近して攻撃と、いやらしい攻め方だ。


 ただその分武器がショートソードなのもあり攻撃力が少し低く、直線的な動きが多いので、対応はしやすかった感じだね。



 ミーア先輩は弓の精度と気配の消し方が上手かったよ。全体を見ていて、そっと移動しては追撃や牽制を使ってた。味方が攻撃を受けた時は弓で時間を作り、回復魔法を使ってたね。


 ただ静かにちょくちょく移動するから、時々前衛の味方がその位置を把握できてなかったり、接近戦の対応手段が少ないから、動けるけど近付かれたら不利になりやすいという感じだったな。



「というのが、敵味方の先輩方を見た俺の感想ですね」

「…ライル君はよく見てるわね」


 時間は昼と夕方の半ば頃、ひと通りの組み合わせで戦った俺達はそれぞれの感想を話すことになった。


 最後に俺が感想を言うと、4人は真剣に考えて始めてしまった。


「…私も気を付けてはいたが、ライルには隙に見えるのか」

「…直線的かぁ、先生にも同じことを言われたね」

「…ディ、ディーン君やクレア先輩が私を見て驚かれたりしたのはそういうことですか」

「あー…お互い気になる点を言いましたけど、遠征まで約30日しかありませんし、変に考えすぎず、今はそういう部分があったと、頭の隅で覚えててもらえればいいと思いますよ」


 その言葉を聞いて4人が不思議そうに俺を見てくる。


「意識するのはいいですけど、今までやってきた立ち回りを短期間で変えたりするのは難しいです。それよりお互いに感想を言い合って、そういった動きをすることがあるというのが分かったんですし、フォローできる陣形とか戦い方を少しずつ決めていきませんか?」

「…そうね、ライル君の言う通りだわ。みんな話してくれた内容がよかったから考え込んでしまってたわね」


 アイリス先輩が苦笑いしながら言った。実際近くで見た自分の動きについてそれぞれ話してくれるからありがたかったよ。


 俺の場合は4人から対応できすぎ!と言われたんだよね。

 悪い事じゃないんだけど、それで体力切れや魔力切れにならないよう気を付けてほしい。という内容だった。


 確かにペース配分には気を付けないとね、これは遠征先や依頼が決まったら話し合わないといけないな。



 色々話していると、訓練場の利用時間が終わりになってしまったので解散になり、陣形や戦い方については3日後の学校が休みの日に改めて話し合うことになった。


 明日からは2回目の選択授業の始まりだ!

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