第38話

「それじゃあ、2回目の選択授業を選ぶ用紙を配るから、学びたい授業を選んだら私に渡してねー」


 時間はお昼過ぎ、遠征でパーティーを組むメンバーとの顔合わせと打ち合わせをした後、教室に戻ってきたら2回目の選択授業を選ぶ時間だ。


 グレイシア先生から用紙を受け取り、選ぶ授業は決まっているけど、他に気になる授業はないかひと通り見てみる。


 んー…1回目にはなかった新しい授業もあるみたいだけど、簡単な説明文を見ても特に気になる授業はないな…予定通り回復魔法と無属性魔法と属性魔法と精霊…あれ?精霊の授業がないんだけど⁉︎

 俺はグレイシア先生に近付き、小声で聞いてみることにした。


「グレイシア先生、選択授業についてちょっと聞いてもいいですか?」

「大丈夫だよ。何について聞きたいんだい?」

「1回目にあった精霊の授業が2回目にないんですけど、何かありました?」

「あー、それについてか…アーシア先生から聞いたんだけど、どうやら最近王国にいる精霊が面白い情報を手に入れたらしくてね」

「面白い情報?」

「そう、それが一部の精霊にとってはかなり有用で衝撃的な情報らしく、急遽その事実確認と情報を集めるよう言われたらしいんだ」


 精霊と話せて、王都で過ごしているエルフのアーシュ先生とアーシア先生が選ばれちゃったのか…これは仕方ないね。


「あー…それでいつ落ち着くか分からないから、選択授業からなくなってるんですね」

「そういうことだね。精霊に関しての情報は王国でも重要視されてるから、ライル君には申し訳ないけど、少なくともこの2回目の選択授業に精霊の授業は入っていないんだ」

「そういうことならわかりました…なら今回選ぶのは1回目に引き続きのを3つですね」

「生活魔法は合格もらってたね。それじゃあライル君はこの3つで時間割を組んでいくよ」

「はい、よろしくお願いします」


 グレイシア先生に精霊の授業について確認した後、そのまま選択授業の用紙を渡して、残りの時間はのんびり過ごした。




 次の日の朝、今日は2回目の選択授業の時間割表が渡され、その後はアイリス先輩達と集まって遠征までの予定を話し合う日だ。


 グレイシア先生がそれぞれの時間割を渡していき、最後に俺が呼ばれた。


「はい、これがライル君の時間割と、あとこれね。まさかもう渡すことになるとは思ってなかったよ」

「ありがとうございます…これは?」


 グレイシア先生から時間割の紙と、小さな玉を受け取った。この小さな玉はなんだろうか?


「これはライル君が学校側から冒険者としても活動できているという証の1つでね、ちょっと魔力を流してみてくれるかい?」

「はい…お?」


 言われた通りその小さな玉に魔力を流すと、光ったと思ったら玉が消え、その光が制服に…どうなってんの⁉︎

 光が消え、着ている制服を見てみると、肩の部分に白い線ができていた。これ今までなかったぞ?


 俺の反応を見たグレイシア先生は満足そうな顔をしている。


「よくできてるだろう?これでライル君は今日から食堂の利用が有料化されて、Bランク依頼を受けられる1歩を踏み出したわけだ」

「あ、これが分かりやすくするための目印になるんですね」

「そうだよ。約30日間、ギルドで達成した依頼の数と稼いだ金額が一定以上を超えたからね、ライル君なら大丈夫だと判断されたんだ」


 食堂の有料化はすっかり忘れてたな、自分で料理も作ってたし、そこは特に問題はないな。

 依頼もそれなりにこなしてたみたいで、金額は特別報酬もあったしね。


「ちなみに言っておくと、金額面に特別報酬分は入ってないよ。毎回あるものじゃないからね」

「あ、そうでしたか。まぁ急いでBランク依頼を受けたい訳じゃないので、これまでと変わらずやっていきますよ」

「うん、それでいいよ。ライル君のペースでやっていくといい」


 グレイシア先生は笑みを浮かべながらそう言った。

 自分の席に戻ると、クラスメイトから視線が…さっきの光とその理由にクラスメイトも驚いてたし、何か聞かれたら答えられる範囲で話そうか。


 あと今回属性魔法と回復魔法の授業がどれも朝か昼でどれも一緒になってるんだよね…なんでだろ?


 選択授業は明日からなので、学校はこれにて終わり。次はアイリス先輩達と打ち合わせだね。


 昨日、迎えに行くから教室で待つように言われてるので、同じように迎えを待っているクラスメイトと雑談していると、教室のドアが開いた。


「失礼します。ライル君はいるかしら?」


 やってきたのはアイリス先輩とクレア先輩だ。2人を見たクラスメイトの何人か恐縮してる?…アイリス先輩、俺の想像よりもっと高い身分の人なのかもしれないね。


 まぁ2人から何か言ってこない限りは一緒に遠征する仲間で先輩、それだけだ。


 既に荷物はまとめてあるので、先程まで雑談していたクラスメイトに挨拶して、席を立ってドアにいるアイリス先輩達に近付き一緒に教室から出る。



「おはようございます、アイリス先輩、クレア先輩。今日はどこで打ち合わせをするんですか?」

「おはよう、ライル君。今日は訓練場で打ち合わせするわ。観客席で打ち合わせをした後、お互いの実力を見るために軽く手合わせをする予定なんだけど、大丈夫かしら?」

「大丈夫ですよ。実力確認をいつやるか気になってたので、武器も収納袋に入れて持ってきてます」


 アイリス先輩の質問に答えると、満足そうに微笑みながら頷いた。


「助かるわ。それじゃあ私達はこのまま訓練場まで直接向かいましょうか」

「ライル、上級生の2人とは訓練場で合流予定なのだが、2人とも寮へ武器を取りに行っている。私達が先に到着したら、念の為訓練場の前で待っててもらえるか?私とアイリス様は観客席にいないか確認をするから」

「あ、それがあったわね。もし観客席にいたら4人の誰かがライル君を迎えに行くわ」

「わかりました。もし俺が先に上級生2人と合流したら、3人で観客席に移動しますね」

「ええ、それでお願いね」


 途中そんな話をした俺達3人は、実力が冒険者ランクC相当からそれ以上の生徒が現在利用できる訓練場まで移動して、上級生が先に到着していないか確認のため、2人と分かれた。



 訓練場で受付をしてる人に確認をするが、言伝とかは受けてないそうなので待ち合わせしてることを伝え、相手を見つけやすく邪魔にならない位置を教えてもらい移動する。


 そこで魔力操作の鍛練をしながら少し待っていると、上級生2人が見えたので手を振り、それに気付いた2人も手を振って俺に近付いてきたので、鍛練をやめた。


「おはようございますディーン先輩、ミーア先輩。最上級生の2人は観客席で探してたので、早速合流しましょうか」

「おはよう、ライル君。そうだね、少し待たせちゃったみたいだし、訓練場に入ろうか」

「お、おはようございます。先程ライル君の周りを何かが飛び回ってたように見えたのですが…」


 おお、それなりに離れてた位置で鍛練をやめたけど、ミーア先輩には見えてたみたいだ。

 受付を済ませて訓練場に入り、観客席へ移動している間に先程の話の続きをする。


「ミーア先輩よく気付きましたね。2人が来るまでの間、魔力操作の鍛練をしてたので見間違いじゃないですよ」


 魔力の球を1つだけ出して、俺の周囲で速度を変えながら回すのを見せると、ディーン先輩は驚いた顔で、ミーア先輩はちょっとドヤ顔をした。


「へぇ、この方法が魔力操作の鍛練になるんだね。ライル君も言ったけど、ミーアさんこれによく気付いたね」

「こ、これでも弓使いですから」



 そんな話をしてると観客席に着いたので、アイリス先輩とクレア先輩を探そうと思ってたら、2人は観客席の入り口付近で待っていた。

 観客席では見つからなかったから、俺達が入ってくるのを待ってたみたい。


 これで5人揃ったから、まずは遠征までの予定を話し合う時間だね。

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