第37話

「おはよう、みんな集まってるねー♪今日は2回目の選択授業終了後に行われる遠征のパーティーメンバーとの顔合わせだよ」


 グレイシア先生の言葉にソワソワしだすクラスメイト達、先輩達とは訓練場や選択授業で一緒になることはあるけど、本格的にパーティーを組んで交流をするのは今回がはじめてだ。


「それじゃあ、広場へ移動を始める前にこの用紙を配るから、その用紙に書かれている場所と番号に行くようにしてね」


 そしてグレイシア先生が用紙を配っていき、俺も受け取り確認すると、広場の中央1番か…



 1組全員で広場まで行くと、上級生が既にいて数ヶ所に分かれており、それぞれのパーティーの代表者?が番号を持って待機してるね。新入生が最後みたいだ。


 俺は用紙の内容通り中央1番を持っている人に近付くと、見覚えのある女子が2人…あ!この2人は!

 相手も俺に気付いたので、俺は用紙の番号を見せながら1番を持っている女子に挨拶する。


「おはようございます。お久しぶりです」

「おはよう、それと久しぶりね。まさかここで同じパーティーになるとはね」

「ようやくおふたりにお礼が言えます。あの時は施設の案内と、兄さんと姉さんのいる所に連れていただき、ありがとうございました」

「ふふ、いいのよ。正直あの2人と家族なんて知らなかったし、2人にもその後お礼も言われたから」


 そう、入学試験前の時に俺に学校ギルドで声を掛けて案内をしてくれた先輩の女子2人だ。

 入学してから時間の空いた時に探してたんだけど、名前を知らなかったし、今日この時まで見つけられなかったんだよね。


 その女子2人以外には、男女が1人ずつ、俺達の所は5人パーティーみたいだ。


「それじゃあ私達のパーティーは集まったことだし、ここから移動して自己紹介しましょうか」



 移動先は学校の食堂で、そこのテーブル席で自己紹介することになった。


「それじゃあ、まずは私からね。私は最上級生のアイリスよ。冒険者ランクはC、役職は攻撃魔法と支援魔法使いの後衛だけど、近付かれた時はフレイルによる接近戦もいけるわ」


 俺に声を掛けてくれた女子、アイリス先輩は後衛職みたいだね。フレイルはメイスとかの先端を鎖で繋げてあり、振り回して使うような物理武器だ。



「次は私だな、私はクレア。最上級生でアイリス様の従者だ。冒険者ランクはCで役職は剣と盾の前衛を得意としている」


 クレア先輩はアイリス先輩の後ろに付いてた女子だね。あー…だからあの日アイリス先輩と気軽に話してた時、強い視線を向けてたのか…剣と盾ということはタンク役も担ってるかもしれないな。



「じゃあ次は僕だね。僕は上級生のディーン。冒険者ランクはCになったばかりで、役職は双剣を使った速さと手数重視の前衛だよ」


 初対面の上級生、ディーン先輩は双剣使いの前衛職だそうだ。速さと手数というのだから自信を持っているんだろうね。



「つ、次は私ですね。私は上級生のミーアです。私も冒険者ランクはCになったばかりです。や、役職は回復魔法と弓の後衛ですぅ」


 続けて初対面の上級生、ミーア先輩は後衛職か。回復職はありがたいし、弓は使い方次第では相手に気付かれにくいし、奇襲や不意打ちに使える遠距離武器だな。


 そして4人が俺の方を向き、アイリス先輩は面白そうな感じで、クレア先輩は興味深そうに、ディーン先輩は微笑みながら、ミーア先輩はチラチラと俺を見てきた。



「最後は俺ですね。新入生で下級生のライルです。冒険者ランクはC、役職は基本槍と体術による前衛ですが、攻撃魔法が使えるのと、回復魔法はヒールのみですが使えるようになりましたので、どの距離でも対応できる万能役と思ってもらえればいいですね」


 俺の自己紹介に目を丸くする4人。なんか変なこと言ったかな?


「先輩方どうしたんです?驚いたような顔して」

「…驚くわよ。あの召喚獣との模擬戦を見てたけど、本当に色々できるのね」

「魔法と近接、どちらもかなり高いレベルだったので気になっていたが…、一応前衛なのだな」

「あの身のこなしは凄かったね。流石話題の新入生だよ」

「そ、そんなに凄かったんですか…?あ、あと回復役が2人いればかなり安定しますよ!」


 4人の反応は様々だった。ミーア先輩以外は虎さんとの模擬戦を観戦してたみたいだね。



「全員冒険者ランクがCとなると、遠征で受ける依頼もCランクのものになりそうね…」

「あ、遠征時に依頼も受けるんですね」


 アイリス先輩の呟きに反応して、俺は収納袋からメモ用紙とペンを取り出して話を聞くようにする。


 先輩達から話を聞いて軽くまとめてみるとこんな感じ。



 ◯パーティーメンバーの総合の実力に応じて遠征先や依頼のランクが変わる。

 遠征先によっては野営の日数も変わりそうだね、依頼のランクはE・D・Cのどれかになるそうだ。


 ◯遠征先と依頼の発表は2回目の選択授業の半ば頃。

 授業の合間や休みの日に打ち合わせや準備を進めていく感じかな?



 思ったことを聞いてみると、どちらもその通りみたいで、授業のない空いた時間と休みの日に打ち合わせ、それと訓練場や外の依頼を受けて連携の確認をするって。


「だから選択授業の予定が決まったら教えてほしいのよ」

「そういうことなら、わかりました」


 他の先輩達も了承して、選択授業の時間割が決まったらまた集まることになった。


 次は戦闘以外に出来ることの確認だ。


 斥候・料理・野営関連の3つで、それぞれどのくらい出来るかはこんな感じ。


 ◯は出来る、△は微妙、✖︎は出来ないで分けると…


 ライル

 斥候◯

 料理◯

 野営関連◯


 アイリス

 斥候✖︎

 料理△

 野営関連△


 クレア

 斥候△

 料理◯

 野営関連△


 ディーン

 斥候△

 料理✖︎

 野営関連◯


 ミーア

 斥候◯

 料理◯

 野営関連△



 その3つは全部出来ると伝えると、これも全員に驚かれたよ。


 斥候に関しては気配を消す技術や身のこなしも重要なので、役職や装備でも影響が出る。基本は俺かミーア先輩がやることになるだろう。


 料理に関しては流石従者というべきか、クレア先輩がかなり得意なようだ。俺とミーア先輩も出来るので、アイリス先輩も入れて2人体制で交代しながらやることになりそうだね。


 野営関連は女性陣は経験不足だそうだ。これは何度も練習するしかないからね。俺とディーン先輩が分かれて教えていくことになるかな。



「今確認しておきたいのはこのくらいね。時間は…まだお昼まで時間があるし、教室に戻るまで少しお話ししましょうか」


 それからお昼まで5人で雑談をしたよ。主に選択授業に関してだね。


 アイリス先輩は身体強化を覚えてないと言っていたので、無属性魔法の選択授業をお勧めしておいた。

 身体強化と支援魔法を合わせると、身体能力の強化が上乗せされた体験談を話すと興味を持ち、クレア先輩が驚いていたね。基本2人で行動していたからか、当たり前のように使っていて気付かなかったみたい。


 ディーン先輩とミーア先輩にカイル兄さんとシェリル姉さんの弟か聞かれた時はそうだと教えたよ。入学試験時から噂や話題になっていたようで、事実確認をしたかったんだと。

 パーティーの模擬戦で話した時は…あの問題児6人で有耶無耶にでもなったか。


 他の人にも教えていいけど、大した理由もなく1組に来たりしないこと。これは他の人に迷惑をかけないでほしいからだ。

 そして手合わせは休みの日訓練場に来た時以外は基本受けないというのを伝えてほしいと4人にお願いした。


 理由は単純、生活費を稼ぐためだね。

 故郷で稼いでた分は卒業後の旅の為に残しておきたいから、入学試験の時と武器関連で使ったこと以外、今は王都で稼いだお金で過ごしてる。


 授業のない時間や休みの日は基本生活費を稼いでることを伝えると、4人には納得してもらえた。



 そんな感じで話しているといい時間になったので、解散してそれぞれの教室に戻っていった。


 お昼後は2回目の選択授業を選ぶ時間だ!

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