第34話
「おは…あ、ガイウスさん、おはようございます」
「ん?おう、ライルの坊主じゃねぇか、よく来たな。今客の対応中だから待っててくれ」
「わかりました。武器眺めて待ってますね」
「おう。すまん、待たせたな」
「いえ、大丈夫ですよ。それじゃあこれが…」
時間はまだお昼前、ガイウスさんの武器屋に入ると、ガイウスさんは客の対応中だった。危うく大声で呼びかけるところだったよ…
男女2人ずつの冒険者が4人いて、男性がガイウスさんと話してる。
と、そのまま見てても失礼なので、俺は武器を眺めることにした。
「待たせたな、ライルの坊主。今日は武器の受け取りに来たのか?」
「あ、はい。槍と剣の受け取りです」
「分かった、今持ってくるからもうちょっと待ってろ」
武器を眺めて待っていたらガイウスさんが武器受け取りの確認に来たので返事をすると、ガイウスさんが取りに行き、槍と剣を持って来た。お、剣は鞘にしまってある。
「槍は以前と変わらんはずだ、剣の方は要望通りお前さんが作った氷の剣より少し重くしてある。鞘は俺の好みで作らせてもらった。この後裏庭で試してみろ」
「おお、ガイウスさんありがとうございます!槍は…うん、問題ないな。剣は…あれ?鞘の方けっこういい品質で丈夫な素材使ってません?」
「お、それも分かるか。ライルの坊主が使ってたあの槍と魔鉱石がいい品質だったからな、それに見合ったレベルの鞘じゃないと鞘が先にダメになっちまう」
「あ、そうか。長い間氷の剣で代用してたから忘れてましたよ」
「はっはっはっ!かなり長い間使ってたみたいだな!そういやお前さんが作った氷の剣、まだ消えてないんだが大丈夫か?」
大丈夫とは?…あ、もしかして…
「氷の剣は込めた魔力を中で循環させた状態で作ってますから、使用して魔力を使い切るか、俺の意志で消すまではなかなか消えませんよ?もう必要ないなら消しますけど…」
「…そういやカイルの坊主も同じことやってたな。せっかくだから色々試したい。悪いがそのままにしておいてくれ」
「わかりました」
ガイウスさんと会話をしながら裏庭に移動、最初に槍を試して問題ないのを確認した後、剣を左側の腰に差して構える。重さはそこまで気にならない。
抜刀しながら片手で斜めに斬り上げ、腰の辺りを横に斬り払い、続けて足元を斬り払ったら前に踏み出し足元から斬り上げ、振り下ろす。
10分程度続けて、片手での動きを確かめたら両手で剣を持ち、身体強化は使わないので序盤辺りの強さの虎さんを想定して防御に専念する。
あ、この剣両手でも持ちやすいぞ!
前脚の攻撃は受け流し、突進は避け、尻尾の攻撃はしっかり受け止めてから流す。うーん、やっぱまだまだ勝てる想像ができないな!
防御の動きも確かめたら、剣を鞘に収めて終わりだ。
「…これは驚いた。以前2人から一緒に来た時に聞いていたが、実際剣もかなりのもんだな」
「ガイウスさん、この剣かなり使いやすかったですよ!ありがとうございます!」
「はっはっはっ!俺が作った剣だ、当たり前だろう!」
ガイウスさんの最初の呟きは聞こえなかったが、俺が近付いてお礼を言うと、笑いながら笑顔で何度も頷いていた。
「実戦前のいい運動にもなったろう。荷物を見るにそのまま依頼受けて外に行くんだろ?」
「はい、この前は王都内の依頼と虎さんとの模擬戦でしたからね。今日と明日は外で実戦です」
「そうか、お前さんのことだから無理はしないと思うが、気を付けて行ってこい」
「はい、ガイウスさん、改めて槍と剣、ありがとうございました。いってきます!」
「おう!また武器に何かあったら来いよ!」
剣は収納袋にしまい、槍と荷物を背負ってガイウスさんの武器屋を出たら、そのまま王都の冒険者ギルドへ行く。
時間はお昼ちょっと過ぎ、行く途中飲食店で昼食を済ませてから王都の冒険者ギルドに入った。
Cランクの依頼で場所が森の深部なのは…お、ワイルドボアの肉と毛皮の納品か。解体せず丸ごとでもいいし、確認と引き取りはギルドで行い、状態と大きさによっては報酬の増額もあるみたいだからこれにしようか。
ワイルドボアはCランク相当の強さで、フォレストボアよりも大きく耐久力があり、牙もそれなりに硬く大きい、突進や牙を使った攻撃には注意が必要な魔物だね。
肉もフォレストボアより美味しい食材になるので人気も高く、飲食店とかが依頼を出すことが多い。
受付にはネリネさんがいたので、その列に並んで俺の番になったので、先程の依頼と冒険者カードを渡す。
「あら、こんにちは、ライル君。こっちでは久しぶりね」
「こんにちは、ネリネさん。実際王都側のギルドは久しぶりですからね。今日はこの依頼を受けます」
「Cランクの依頼でワイルドボアの肉と毛皮の納品ね。はい、依頼を受領しました。気を付けていってらっしゃい」
「はい、いってきます」
そして再びやってきました王都近くの森。今はお昼過ぎ、夕方にはまだ早い時間だ。
道中の魔物は無視してそのまま深部まで進み、槍を持ち軽く身体強化を発動して、気配を探りながら前回より深部の奥へと進む。
進んでいくと最初に遭遇したのはフォレストウルフの群れだ。20体はいて、その中でも2回りは大きいのが1体、キングかクイーンだな。とりあえずキングとしておこう。
キング・クイーン単体だとCランク相当に入るが、基本群れで行動し、フォレストウルフを統率させた動きと森の地形を利用した連携を含めると厄介さが上がり、キングとクイーンの2体が一緒にいたらBランク下相当まで上がっていくため注意が必要だ。
俺は身体強化を通常まで上げ、戦闘態勢をとると奥から木々が折れ、倒れる音、なんだ?
…お!奥から出てきたのはお目当てのワイルドボア…なんだけど、フォレストウルフ達を見てかなり興奮してるし、通常よりでかいな、キングよりも少し大きい。
…あー、おそらくこのフォレストウルフの群れに仲間が襲われて喰われでもしたか。
あ、親玉の後ろから通常のワイルドボアも6体出てきたから、親玉的存在かな?通常のワイルドボアの大きさはフォレストウルフとキングの間くらいといったところだね。
ボア側には悪いけど、今回はウルフ側についてあの親玉の毛皮と肉を頂こうか!
俺はあえて音を出しながら、ふたつの群れに姿を見せる。キングが吠えると3体のフォレストウルフが近付いてきたが威圧で怯ませ、1体のワイルドボアの突進にはその勢いを利用して槍で眉間の辺りを深く突き刺し絶命させたら槍を抜く。
キングが再び吠えるとウルフ達はボア達に顔を向け睨み合い、興奮してる親玉は俺に標的を変えた。うん、ここは狙い通り。
とりあえず戦ってる間はウルフ側には襲われないだろう。
親玉が俺に向かって突進してきたら、ウルフ達から離れるように移動しながら引きつけ、遠ざける。
ある程度離れたら槍をいったん収納袋にしまい、氷魔法で地面から大きな氷の槍を斜め上に向けて出しておき、氷の槍より前に出て両手を広げる。
「よし、さぁこい!」
突進してきた親玉の牙を掴み、動きを止め、一気に持ち上げる!
「ブオォッ⁉︎」
「せーの…よいしょー!」
軽く跳び上がり、持ち上げた親玉を先程出した氷の槍に顔面辺りから一気に突き刺す!
親玉が叫び、刺さったまま暴れるが、身動きがとれずに宙に浮いた脚をジタバタと動かすだけ。
今のうちに槍を出しておき、対応できるよう備えておくが、少しすると動きが完全に止まったので、親玉にクリーンをかけ、氷魔法で丸ごと凍らせて収納袋に…入ったね。肉と毛皮は確保したから、冒険者ギルドに戻ったら依頼に必要な部分を確認してもらおう。
ウルフ達の方を見るとボア達も含めて全員俺を見ていた。かなり衝撃的だったみたいだね…俺はキングを睨み、今のうちに倒せと視線で呼びかける。
それに気付いたのかキングが慌てた感じで吠え、ウルフ達が隙だらけのボア達に一斉に噛み付き動きを止め、キングが順に止めを刺していった。
これならウルフ達も大丈夫だろう。
ボア達へ攻撃が集中しているうちに俺はこの場を離れ、そのまま森を出た。
森を出たら夕方で暗くなってきた頃、身体強化を解除して前回野営した場所に行くと誰もいなかったので、またこの場所で野営と夕食の準備だ。
テントを建て、調理器具を出したら持ってきた食材で料理をして、夕食を食べる。
夕食を終えたら食器や調理器具をクリーンをかけながら片付けと槍の手入れをして、アイスウォールでテントを囲ったら火を消し、クリーンをかけてから寝た。
明日はウルフやボア系以外の魔物と戦えるといいなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。