第35話

 野営をした次の日の朝、俺は昨日作り置きした料理を食べ、食べ終わったらクリーンをかけながら食器と調理器具、テントを片付ける。


 まとめたら荷物を背負い、槍を持って再び森の深部に出発だ。



 道中の魔物は無視して森の深部まで入ったら軽く身体強化を発動し、昨日とは違う方向から深部の奥に進んでいく。


 戦ったのはオークジェネラル2体にフォレストスネークが1体。


 オークジェネラルはどちらも単体で発見、斧持ちと剣持ちだった。

 今回はあえて身体強化は使わず、数回打ち合ってから槍で武器の攻撃を受け流し、体勢を崩したら防具の隙間を狙い、首や顔を突き刺して終了だ。


 討伐証明の耳を切り落として防具を外し、食料となる肉はクリーンと氷魔法で、武器と防具はクリーンだけかけてから回収して残りは放置だね。



 フォレストスネークはCランク相当の強さで、森の地形を利用した戦いと立ち回りを得意としている。

 毒は持ってないのが救いだが、今回遭遇したのはゴブリンくらいなら丸呑みできる大きさなので、噛み付きや締め付けにも注意が必要だ。


 突進と噛み付きが多かったから、それを躱すのと同時に槍で首辺りを切るのを繰り返し、血を流して動きが鈍ってきたところで首を切り落として終了。


 フォレストスネークは討伐証明の牙、皮、そして肉とほぼ全身が素材や食料になるのでクリーンをかけ、頭も含めて氷魔法で凍らせてから回収。


 …よし、入った。おそらくこれで収納袋もほぼ満杯になっただろうし、少し早いけど帰るかな!




 時間はお昼頃、魔物との戦闘は回避しながら王都の冒険者ギルドまで戻ってきた。身体強化は森を出た時に解除している。


 中に入ると、ちょっと受付側が騒がしいかな?受付にネリネさんがいたのでその列に並ぶと、俺に気付いたネリネさんが俺を見て安心したような顔をした。

 ん?森で何か起きたのかな?俺の順番になったら聞いてみようか。



「おかえりなさい、ライル君。無事だったのね」

「はい、先程戻りました。森の方で何かあったんですか?」

「ええ、昨日の夕方からCランク冒険者から森の深部で通常より大きいワイルドボアの個体が現れたと複数報告が入ってね、襲われて怪我人も出てるから、森へ行くCランク以下の冒険者には注意喚起をしてるのよ」

「…あー、その報告にあった個体と同じかはわかりませんが、確かに木々を折ったあの突進力や大きさだと、Cランクの冒険者は苦戦するかもしれないですね」


 その言葉を聞いたネリネさんと他のギルド職員が目を丸くして俺を見る。


「で、俺が森の深部で遭遇した大きいワイルドボアは仕留めて丸ごと回収したんですけど、報告と同じ個体か確認します?」



 受付での会話でギルドの解体所へ案内され、そこでワイルドボアを出して確認してもらうことになった。


「それじゃあライル君、この場所にワイルドボアを出してもらえる?」

「わかりました。他にもオークジェネラル2体とフォレストスネーク1体を討伐して回収したのがあるんですけど、それはどうします?」

「それならワイルドボアを出した後、続けて隣に出してもらってもいいかしら?」

「わかりました。ワイルドボアは大きいので、念の為身体強化かけてから出しますね」

「ええ、お願い」


 一緒に移動したネリネさんに確認をとり、最初はワイルドボアを収納袋から取り出して言われた場所に置き、続けてその隣にフォレストスネーク丸ごと1体、オークジェネラルの討伐証明になる耳と肉を別々にして入ってる袋に回収した斧と剣と防具を出して置いた。


 あ、肉の一部は自分用に保管してるよ。ジェネラルの肉は通常のオークよりも美味いからね!


 ワイルドボアの報告をした冒険者達と、他のギルド職員も確認をし始めた。

 半分くらいの人は凍ってることに驚いてるみたいだね。


「こ、凍ってる…確かにこいつは昨日オレ達が襲われたのと同じ大きさだった筈だ」

「…鑑定で確認したが、確かにワイルドボアだな。この大きさは群れのリーダー格となって成長したものだろう」

「眉間の辺りから首の辺りまで穴が…でも身体の外側に傷はないし、この一撃で倒したみたいですね」

「どれも素材として意識した討伐と解体がされてますよ。体に傷がなく、状態がかなりいいです」

「オークジェネラルの肉は凍らせて入ってあるから保存が効くし、持ち運びやすい大きさになってます!」


 発見報告をした冒険者達とワイルドボアを鑑定したギルド職員からの確認がとれ、注意喚起の解除が決まったのでその人達は解体所から出ていき、他のギルド職員はそのまま素材の状態を確認し始めたね。

 今のうちに隣にいるネリネさんに確認しておこうか。


「ネリネさん、今回依頼を受けたワイルドボアの素材はあれで大丈夫ですか?必要ならこの後解体して肉と毛皮を分けますけど」

「あ、それなら大丈夫よ。凍ってるならあのままでも問題ないわ。依頼主は飲食店を営んでる所だからあちらで解体すると言ってるし、量は多い程助かるそうよ。だからフォレストスネークだけこの後解体をお願いしていい?」

「わかりました。そういうことならフォレストスネークだけ解体しちゃいますね」



 俺はネリネさんから離れ、フォレストスネークを確認してるギルド職員さんに解体することを伝えて、どんな状態にしてほしいか聞きながら解体していく。


「ほぉー…解体の手際もいいな。このまま順調にいけばフォレストスネークの報酬を増やしてもいいレベルだ」

「あ、それは嬉しいですね。この前武器関連で出費したばかりなので助かります」

「おいおい、まだ解体の途中だぞ。このまま順調にいけばのはなし…」

「…はい、体の皮は首から尻尾の先までほぼまっすぐに切り剥がしましたよ。頭と体の肉はどうしますか?」

「…体の肉は持ち運びがしやすいよう巻いた感じにしたらまた凍らせてくれ。頭は…このままでいい、確かスネーク系の頭の素材を欲しがってるヤツがいたからな」

「わかりました」



 そして解体が終わり、遅めの昼食をとった後、ネリネさんから報酬について話を聞くと、俺が受けた依頼の分と危険個体だったワイルドボアの特別報酬は後日、最短で2日後以降になるとのこと。


 依頼主がギルドで実物を確認するって内容にあったからね、ついでに危険個体討伐の特別報酬も貰えるのはありがたい!


 それと解体してる時にギルド職員さんから聞いた、スネーク系の頭の素材を欲しがってる人の話。

 当人に確認したら是非欲しいと言われたそうで、依頼を受けた形にしてフォレストスネークの頭を渡していいか聞かれたので了承した。欲しい人がいるなら断る理由はないからね。


 その依頼の報酬も後日一緒にで構わないとネリネさんに伝えておいた。


 なので今日はオークジェネラルとフォレストスネークの討伐と素材の買取分だけ受け取り、ギルドを出た。



 寮に着いたら寮長さんに戻ってきたことを伝え、自分の部屋で荷物の整理と、槍と解体ナイフの手入れを済ませたらその後はのんびり過ごした。

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