第36話

「ライル君、王都側の冒険者ギルドから報酬の受け渡しは学校側のギルドでいいか確認をしてほしいと連絡がきたんだけど、休みの日に何をしたんだい?」


 次の日の朝、教室で出席確認と連絡事項が終わった後、グレイシア先生が近付いて聞いてきた。


「あ、その件なら学校のギルドでもいいと伝えて下さい。依頼で森の深部に行った時、ワイルドボアのリーダー格だった大きな個体を討伐しまして、昨日王都のギルドで確認してもらったら注意喚起されてる個体だったらしくて、特別報酬が出たんですよ」

「ほぉー、危険個体討伐の特別報酬ね。そのワイルドボアの大きさは?」

「んー…高さだけなら通常のワイルドボアの2倍くらいはありましたね」

「成程ねぇ、ライル君が討伐したのなら納得だ。学校側のギルドにも注意喚起の連絡がきてたけど、1日と経たずに解除されてたからねー、教えてくれてありがとう。報酬の受け渡しは学校側のギルドでもいいと伝えておくよ」

「はい、よろしくお願いします」



 それから2日後、俺は学校ギルドで報酬の受け取りに来ていた。

 対応してくれたのは最初ここを利用した時やオークの巣の件でもお世話になった、気さくで話しやすい受付嬢さんだ。


 受付嬢さんに学校ギルドの個室へ案内されると、一度部屋から出た受付嬢さんが袋を持って入ってきた。


「お待たせしました。こちらが依頼2件と危険個体討伐の報酬になります。依頼2件の報酬分はどちらも本来より上乗せされていて、状態の良さや大きな個体だったこともあり、高い評価をもらい上がってますね」

「ありがとうございます」


 俺が報酬を受け取ると、受付嬢さんは微笑みからちょっと呆れたような顔をした。


「…まさかこうも早くまた特別報酬を渡す事になるとはね…少し前にオークの巣の壊滅で特別報酬を渡したばかりじゃないの」

「いやいや、今回は依頼でワイルドボアを探してたとはいえ、ギルドへ持ってきた前日に危険個体と認定されてたなんて思いませんて。他の冒険者からの報告がなかったら、ただワイルドボアの大きな個体を討伐しただけだったんですよ?」


 危険個体と呼ばれるようになるのは、冒険者や一般人等が通常とは特徴が異なる魔物か、普段その場所にはいない魔物を発見し、冒険者ギルドとかにその情報が報告されてから危険個体と判断・認定され、特別報酬が出るようにる。


 発見場所によっては冒険者だけじゃなく、他の人にも注意喚起されるようになるね。


 だからもし俺が報告される前にあの親玉をギルドへ持ってきていたら、今回の討伐による特別報酬はなく、素材と依頼での報酬が上がっただけだっただろう。


 あ、ちなみに普段その場所では見ない魔物や高ランクの魔物とかの場合は遭遇場所とかを伝えれば、情報料がもらえる時があるね。

 まぁ調査して事実か確認してから、が前提になるけど。


「まぁそうなんだけどね…それにしてもよく倒したわね。通常よりも2倍くらい大きかったんでしょ?」

「確かにそのくらいはありましたね…言い方は悪いですけど、攻撃は通常のワイルドボアと変わらなかったし、対応手段もあったから、苦戦する強さじゃなかったってだけです」

「成程ねぇ、やっぱ同じCランク冒険者より飛び抜けてるわね、ライル君は」


 俺の返答に受付嬢さんは苦笑いしながらそう言った。



「この調子でCランク依頼を受けていったら、早い段階で王都でもBランク依頼を受けられるようになると思うわよ」

「…それは嬉しいですけど、まだ王都周辺には詳しくないので、Bランク依頼は受ける気ないですよ?」

「なら王都内の依頼から選んでもいいのよ?護衛や手合わせの依頼なんかもあるんだから」


 受付嬢さんの言葉に俺は少し嫌な顔をしてしまう。


「その2種類だと依頼主が高い身分の人からの可能性が高いじゃないですか…下手に受けたら目をつけらてまた依頼を、ってなるだけですって」

「あー…ライル君はそういうの却下か、ごめんね。でも正直言えば前回のオークの巣壊滅や今回の件で王都を拠点にしてるクランや、貴族からも注目され始めてるから、ギルドや子供を通して声を掛けられると思った方がいいわ」


 それについては想定済みだし、普通に活動してても同年代よりランクが高い依頼になるから、噂や話題にはなっちゃうよね。



「そこは仕方ないですね。生徒や冒険者として接してくるならいいですけど、いきなり貴族として接してきたり、俺の意志も聞かずしつこく勧誘なんてしてくるなら、俺も相応の対応をするだけです」

「あ、そこは分けて対応してくれるのね」

「そこはもちろん、基本理由もなく敵対する気はないし、俺だって相手は選びますよ」


 そう話すと、受付嬢さんは微笑みながら頷いた。


「成程ね、わかったわ。私から依頼をお勧めする時はそういったのを避けて紹介するわね」

「それは助かります。その時はよろしくお願いします」


 受付嬢さんとそんな話をした後、時間も微妙だったので、学校ギルドの資料室で王都周辺の出現する魔物や、森の深部以外の地域でCランク相当の魔物が出現する場所を調べて終わった。



 さらに2日後、学校が休みの日なので依頼を2つ受けてから森の深部まで行き、依頼対象になるCランク相当の魔物を倒して解体し、毛皮はクリーンを、肉は持ち運べる大きさにしてからクリーンと氷魔法で凍らせてから収納袋に入れるのを繰り返す。


 依頼の1つはフォレストベア、熊系でCランク相当の魔物だ。身体強化を発動して爪撃を槍で弾いてから首を切り落としたり、風魔法で首を切り落とすのもありだね。


 もうひとつの依頼はオークジェネラルの肉の納品だ。これは以前と変わらないね、攻撃を弾いたり避けてから防具の隙間の首や顔を狙って倒す。もちろん風魔法や氷魔法を使ってもいい。


 で、倒したら防具を外すか壊すかして、食料となる肉の部分を解体し、クリーンと氷魔法で凍らせてから収納袋に入れる。


 野営もして、2日かけてワイルドベアの素材は依頼の数量通りに、オークジェネラルの肉は1体多く倒し、また自分用に確保しておく。

 前回の分は料理を何度か作って食べてる時、興味を持ったクラスメイトにも分けたからもうなくなってるんだ。



 昼過ぎには王都に戻り、調味料とかの買い物を済ませてから学校ギルドで依頼達成の報告をして報酬を受け取り、寮に戻ったら寮長さんに戻ってきたことを伝え、自分の部屋で荷物の整理と槍に解体ナイフの手入れをしてからゆっくりしたよ。


 明日はいよいよ遠征で組む先輩達との顔合わせだ!

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